【事件サマリー】総集編 藤井一良中国スパイ事件 - 深田萌絵 本人公式

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【事件サマリー】総集編 藤井一良中国スパイ事件

事件サマリーを読み返すと、第30、31回戦の小林英里が弊社の印鑑と軍事民生両用技術を持ち逃げした部分が何者かによって消されていた。
ので、総集編としてここに載せます。
図や写真等の証拠はカテゴリから「事件サマリー」で探してみてください。

【プロローグ】
米国税IRSからうちの会社に税務調査が始まったのが今年の4月。
うちは日本の会社だから、関係ないでしょとバトルして、うちの会社の領収書原本、会計資料原本、契約書原本、開発資料、銀行通帳原本を提出するように言われて、出せるわけないだろうと回答したら100万ドルの罰金と言われ。
慌てて、IRS担当調査官がマイク・ホンダの秘密のファンドマネージャーであることを突き止め、社民党福島瑞穂経由で官邸前デモテロリスト梶原利之弁護士の差し金であったことを突き止め、ロビイスト活動でマイク・ホンダが裏で糸を引いていると6月4日に議員から大使館まで英文日文で手紙を送りまくった。
返事が無いので、東京地方裁判所でIRSに対して不法行為であると訴訟を提起した。
IRS担当者は、7月20日にうちの会社を破産宣告で潰してやると豪語していたが、その日、IRS担当者の親玉マイク・ホンダは寄付の見返りに利益供与していたかどで倫理委員会の調査が入ってIRSは動きをひそめる。
10月5日、IRS宛てに最高裁判所経由での海外送達で私からの訴状が届いたはずだったが、IRSは「そんな担当官は存在しない」とシラを切って訴状の受け取り拒否。そして、ファックスでうちの会社宛てに「おまえは日本のスパイだろうから、スパイの上司の名前と情報を出せ」と送ってきた。口頭では「さもなければ、10月20日に罰金課してお前の会社を潰してやる」と言っていた。
IRSは明らかに越権行為でCIAの領域に踏み込んだのだ。
因みに私は京橋税務署で申告してるし、私は元アイドルであって、スパイでは無い。
ヤバい、と思って、ジョンマケインに訴状とIRSのファックスを送ったのが先週。CIAはジョンマケインの管轄のはずだ。
10月28日にジョンマケインから「君の手紙はIRSに転送した」とのお礼のメールが届き、その日、IRSの長官ジョン・コスキネンは議会で弾劾に掛けられたとのニュースが出たのだ。
激化する元アイドルと反日中国スパイとIRSの戦い。
深田萌絵の運命やいかに・・・
続く

第一回戦
【合衆国内国歳入庁、IRSが出てくるまでの経緯】
5年前、普通の株式投資に退屈した私はもっと面白い投資を探していたところ、元米軍のJSF計画で開発していたアメリカ人を発見した。
彼は、JSF計画で音速機用の遠隔操作システムと動画伝送システムの開発をしていたのだが、解放軍と組んだ台湾マフィアに台北オフィスを襲撃されてFBIに保護されて米国籍を取得。狙われたことを理由にいったん開発チームからは外されてしまった不運な人だ。
それは面白いと思ったので、一緒に会社を始めたのだ。
が、私は技術に明るくない。
明るくないので早大の同級生、理工学部の日中ハーフ藤井一良君に手伝って欲しいとお願いした。彼はアルファアイティーシステムというIT会社も経営していたのでちょうどいいかと思ったのだ。
彼は一千万円を私に預ける代わりに、設計を勉強したいからソースコードを見せてくれというので、まあ一千万円預けたら持ち逃げしないだろうと安心した。
はしょっていうと、藤井は「この技術を解放軍のミサイル開発に使いたい」と言って、断ったらいなくなったのだ。
焦った。コンシューマ用途とはいえ、スペック自体は軍事利用とそん色のないデュアルユース設計だ。中国への持ち出しは輸出規制下にあるし、倫理上できるわけもない。
藤井はそのソースコードを自分で開発したと言う為に私を訴訟し、保証金は借金だという意味だったと主張した。その弁護士が、泣く子も黙る極左のトップエリート梶原利之弁護士、福島瑞穂の夫である海渡雄一の同志だったのだ。
因みに梶原利之弁護士は官邸前で戦争反対運動をしているのだが、デュアルユース技術詐取幇助は矛盾しているとの突っ込みも一応入れておく。
その日から、ありとあらゆる在日系の企業から脅迫されたり、資料を持ち逃げされたりの日々が始まった。
深田の運命やいかに・・・
続く
※左翼、在日外国人で悪さをしているのは一部の人であり、全ての人ではありません。

第二回戦
【IRS事件、中国スパイ事件サマリー】
FBI被害者保護プログラムで保護された謎のJSF遠隔制御システム設計者、実名もあれなのでマイケル・コー(仮名)としておこうか。
マイケルの設計するものは民間スペックの100倍から1000倍、私のような技術音痴でもお客さんに見せるだけで買ってもらえるという有り難い代物だった。なので、アルファアイティーシステムの藤井一良と決別した後、特に問題なく物は売れ始めた。
ところがだ、売れ始めたとなると、藤井は「全部自分が作った」と主張して、うちの会社を訴訟してきたのだ。
さらに、預けた設計を持ち逃げしているのに、「保証金の意味は借金です」として訴訟してきた。
梶原利之弁護士は、マイケル・コーの銀行口座を差し押さえ申請したのだ。
鈴木清志裁判官は差押えの決定を下した。が、マイケルは銀行口座なんて持っていない。
結論から言うと、藤井が差し押さえたのはマイケルの口座で無く、私の会社の私名義の口座だったのだ。
私が雇った弁護士森川紀代はそのことに気が付きもせず、仮差押え異議申し立て事件で負けまくった。それどころか、元上司の裁判官に負けろと指示されたと泣き言を言ったのだ。
私は彼女との契約を切った。
裁判官と仲良くして勝ちと負けを与えてもらってきたような弁護士に仕事は頼めない。仕方ないので自力で裁判資料を読み解いた。
驚いたことに、マイケルの口座の代わりに差し押さえられた私の口座から引き出された金は、裁判所や藤井に支払われた訳では無く、三菱東京UFJ銀行の新宿中央支店長田中靖士がどこかへ持ち去ったのだ。
さすがに元金融機関勤めの私も度肝を抜かれた。これは金融機関としては大犯罪なのだ。
それを証拠に、彼らは「差し押さえる名義と実際の銀行口座の名義が違うので払えない。同一性が確認できたら支払う」と陳述し、裁判所に金は出さないが私の会社の金だけ持ち去ったのだ。
銀行口座は、口座名義人と本人の同一性が一致しなければならない。この三菱東京UFJ新宿中央支店の田中支店長は金融機関の掟破りの別人口座から金を抜き取ったのだ。
もちろん、田中支店長も馬鹿では無いので、掟破りの見返りがあったのだろう。
いやはや、銀行に金、預けられない時代だ。
さて、深田の運命やいかに・・・

続く

第二回戦追記
【中国スパイ事件サマリー】
三菱東京UFJ新宿中央支店の田中靖士支店長によると彼が引き出したお金は深田萌絵とマイケルの同一性が確認できたら裁判所か藤井一良に支払うらしい。
私の疑問は、外国人と日本人、男と女、くらい違う両者の同一性をいかに裁判所は立証してくれるのかということだ。
第三回戦
【IRS事件、中国スパイ事件サマリー】
三菱東京UFJ銀行による名前不一致のまま、差し押さえられた銀行口座は次の攻撃への布石でしかなかった。
IRSの担当調査官ジョエイ・キャンベルは、東京地方裁判所がマイケル・コーの名前の下で差し押さえた私の銀行口座を指して、「米国人マイケル・コーは、日本に隠し口座を持っている証拠を掴んだ。東京地方裁判所に差し押さえられているだろう!」と無理やり私の会社、無論日本法人に税務調査をすると突きつけてきたのだ。
なんだ、これは?
深田の口座を米国人名で差し押さえたら、米国人が日本で口座持ってることになるのか?
「あ!この手口は!!」
思い出した。2012年、台湾総統選挙で馬英九総統が政敵蔡英文を落とす為にありとあらゆる汚職を探したが見つからなかったので、他人の銀行口座を蔡英文名義で差し押さえて「証拠を見つけた」と、捏造した証拠で蔡英文に無理やり税務調査と検察捜査が入ったのだ。そして、蔡英文は暫く姿を消した。
「マイケル、ジョエイ・キャンベルの国籍は?」
「こないだまで中国人だ」
「なんで、中国人がIRSで働いてるの?」
「オバマの政策で数千人の中国人がIRSで働いている」
「ナント!」
米民主党は言わずと知れた米中蜜月派。しかも、オバマ父と毛沢東は友達だ。東京地裁も中国人だらけだが、IRSまで中国人だらけとは・・・
「ジョエイはなぜ馬英九と同じ手口を使ってるんだ?」
慌ててジョエイ・キャンベルと馬英九のつながりをネットで調べた。
馬英九といえば、中国上海疎開地時代に栄えた暴力団青幇の下部組織、仁社の組員。馬は香港生まれで、中国共産党ラブ、台中合併推進派。何のことは無い中国共産党から派遣されたビキニ姿で公務をこなす変なオジサンで、マイケルのことを目の敵にしている。
ネットで出てきたのは、ジョエイ・キャンベルは馬が管轄するヘッジファンドの元ファンドマネージャー、マイク・ホンダ米下院議員のプライベート・ファンドマネージャーだということだ。
「マイケル、ジョエイとマイク・ホンダの関係は何だ!?」
「ジョエイがこの案件は、議員のお墨付きだと言っていた」
「マイク・ホンダが裏で糸を引いているのか!?」
どうして、アルファアイティーシステムと取引で揉めただけで、マイク・ホンダまで出てくるのだ?
そう思って、アルファアイティーシステムの代理人梶原利之弁護士を調べると、梶原利之は海渡雄一弁護士の官邸前デモ活動仲間で、海渡といえば嫁が社民党の福島瑞穂だ。
「なんだなんだ、福島瑞穂とマイク・ホンダといえば、従軍慰安婦友達か!!」
福島瑞穂とマイク・ホンダの資金源と噂されている団体がカリフォルニアにある。
『世界抗日戦争史実維護連合会』だ。
福島みずほが従軍慰安婦プロモーションを始めた時にモデル慰安婦として派遣された女性はこの団体から出てきている。
この連合会、実態は中国共産党だと噂されている団体だ。
「なんだなんだ、なんでこんなことになっちゃってるんだ?」
ドン引きする深田、マイケルがJSF計画に従事した為に中国スパイから襲撃されたという噂、まんざら嘘でもないのかもしれない。
FBI被害者保護プログラム、未だに有効なのか?
深田萌絵の運命やいかに・・・

続く

第三回戦追記
【中国スパイ事件サマリー】
希望があったので図解を入れました。
梶原利之弁護士から、めちゃめちゃにされてるので、実名で被害について書いてます。

第四回戦 アルファアイティーシステム三重構造
【IRS、中国スパイ事件サマリー】
銀行の支店長を言いなりにさせ、福島瑞穂とマイク・ホンダを操るこの(株)アルファアイティーシステムってなんなのだ!?
深田は元アナリストの血が騒いだ。この会社、分析してやる!!
「バイトさん!法務局いってきて!」
アルファアイティーシステムの登記簿謄本と帝国データバンクの情報を取り寄せ、また衝撃の事実が分かった。
「深田さんのおかげで二億円も売上が上がっちゃって、ありがとう!」
と藤井社長が私にお礼を言ったにもかかわらず、帝国データバンクではアルファアイティーシステムは年商一億円、利益三百万円程度と売上も利益も全く変わらず推移している。
「なんだ?二億円増えていない。売上隠しか・・・」
だったら、どこに隠してる?
と、謄本を捲るとアルファアイティーシステムの謄本が二枚出てきた。バイトさん、また重複して同じ資料とってきたな。ゆとり世代め。
「おい、こけしちゃん。印紙代勿体ないから同じ謄本二つとらなくていいよ」
深田がこけしヘアのアルバイトに声を掛けると、
「萌絵さん、その二つは違うアルファアイティーシステムです!」
とふてくされた。
「はあ?」
手元の謄本をよく見た。そうだ、一部は日本法人、もう一部は米国法人の日本支店となっている。
「米国デラウェア州ニューアーク市バークスデイル・プロフェッショナル・センター113番、アルファアイティーシステム」
しかも、登記日を見ると日本法人設立の一年前、彼が18歳の時の会社だ。
藤井は中国語は堪能だが英語は下手だ。その彼が18歳で米国法人設立?
深田は頭を掻きむしる。
ふと、メールボックスを見るとファンレターボックスに一通のメールが届いていた。
「深田萌絵様 お困りのようですね。アルファアイティーシステム中国法人を発見しました。http://www.alpha-it.cn です。中より」
「中さんって、誰なんだろ?」
という疑問を抱きながら、URLをクリックすると、アルファアイティーシステム中国法人のウェブサイトが出てきた。
そこには、藤井の写真と百名近い社員の写真が掲載されている。成功事例としての売上は日本法人の仕事しか掲載されていない。
「年収一億の会社が100人のエンジニア抱えている?どう考えても人件費だけで5億円はかかるだろう。オフィスの家賃だってバカにならない」
住所は南昌高新開発区。
南昌といえば、解放軍の第二ミサイル部隊、大陸間弾道ミサイルを開発して1000基の核弾頭搭載ミサイルを日本に向けている場所だ。
そこに高新開発区といえば、中国共産党のお墨付きが無いとオフィスを構えられない地域。
藤井一良って、単なる同級生じゃなかったのか?
そうだ、彼は理工学部、私は政経、本当なら出会わなかった二人が出会ったのは、金融工学の授業に彼が潜っていたからだ。
彼は、授業中、私の前夫が翻訳したトレード本を読んでいたから仲良くなった。
もしかして、その偶然の出会いから仕組まれていたということか!?
続く


第五回戦 梶原利之と裁判官癒着の謎
【中国スパイ事件サマリー】
裁判構成↓
保全事件 アルファアイティ → マイケル銀行口座差押 (前回の話。実際は深田名義の口座)
異議申立 深田会社 → アルファアイティ  (今回)
本訴   アルファアイティ → 深田会社  (今回)
逆訴訟  深田会社 → アルファアイティ (詳細は別途)
別訴   マイケル&エリ → 藤井一良(詳細は別途)
国賠   深田会社 → 国&遠田真嗣  (今回)
いわゆる泥沼。
三菱東京UFJ銀行新宿中央支店の支店長田中靖士が引き出した私のお金を取り戻すべく、差押異
議申し立てを行った。
代理人は森川紀代弁護士。
【保全事件敗戦】
異議申し立ては法廷では無くて民事九部にある審尋用の小さな部屋で行われるのだが、この森川弁
護士が裁判官い対して何も言わずに黙って俯きなので、深田が自分で自己弁護する始末に。
「裁判官、この証拠見てください!」
そう言って、棚橋知子裁判官の眼前に証拠を指し出したら、棚橋はおもむろに顔をそむけて「貴女
の証拠は見ません!」と言った。
チラと見ると、書記官戸谷多恵は中国語でメモを取っている。
『ヤバい・・・、この裁判、なんかヤバいぞ・・・」
深田は、嫌な予感がした。
初めての裁判所だが、直感的に異常な雰囲気が流れてるのが分かった。
棚橋は最後まで梶原弁護士にヘイコラして去り、梶原はボサボサに伸びた髪の間から勝ち誇った瞳
を見せ、「おい、深田。ちゃんと書類くらい確認しろ!」と悪態をついて出ていった。
【本訴敗戦濃厚】
民事48部で開かれている本訴も同様だ。
深田が遠田真嗣裁判官に証拠提出を申し出ると、
「深田さん、証拠はこれ以上出さなくていいです!」
と遠田は言うので、
「なぜですか?」
「証拠を出すと不利になるから出さないほうがいい!」
と遠田は深田の証拠提出を頑なに拒んだ。
もしや、と、思い訴訟記録を取り寄せると、やはり、提出したはずの上申書が記録から抹消されて
いる。期日が始まる前に記録閲覧を申し出た時も、鈴木鉄治書記官が記録を破り取ったことを思い
出した。
『ヤバい。どんなにアルファアイティーが悪いという証拠を出しても、裁判官と書記官に握りつぶさ
れている』
その日から、裁判所に提出する書類は二部用意して割り印した上で受領印をもらうようにしてから
上申書の消失事件は収まった。裁判所を信用してはならないのだ。
ある日、某情報筋からアルファアイティーシステムがうちに10億円の請求をしようとしているとい
う連絡が深田に入った。遠田真嗣は中共から派遣された工作員で10億円の損害賠償の判決準備を
しているとの話だ。
「もう、我慢ならん。国家損害賠償請求で、遠田を成敗する!」
深田は、国家賠償法に基づいて「遠田さんが1000万円の訴訟で、10億円の損害賠償請求を認
めようとしている」と国に賠償請求を求める訴状を提出した一時間後にある電話が入った。
「深田さん、10億円ってなんで知ってるの?」
中国で知り合った中国共産党員から突然連絡が入った。
「え、10億円?」
「だから、裁判官が10億円の判決出そうとしてるって国賠起こしたでしょ、誰に聞いたの?」
「なんで知ってるんだよ!」
そう言って深田は国際電話を切った。
『三時間ほど前に提出した訴状の内容を、何故中国にいる中国共産党員が知ってるんだ?』
すぐに深田は東京地裁に電話して「国賠の書記官お願いします!」と頼むと、「あ、すみません。
深田さんの訴状、まだ受付にあってこの部署に届いてないから週明けにしてもらえます?」と担当
書記官は応えた。
ヤバい。
訴訟受付から部署にすら届いていない訴状が、既に中共幹部の手元には届いている。
東京地方裁判所の書類は殆ど紙媒体なので、ネット経由でハッキングしても訴状の内容までは読み
取れない。
ということは、東京地裁の内部にリアル工作員がうじゃうじゃいるってことか!
そういえば、週刊現代ではおかしな裁判官特集が売れてるらしい。http://gendai.ismedia.jp/articles/-/39467?page=7
「マイケル、ヤバい」
「なんだ?」
マイケルは設計中か、面倒臭そうに深田を振り返る。
「東京地裁は中共スパイがかなり紛れ込んでる」
「なんだ、深田。そんなの見分けるの簡単だ」
「え?どうやるの?」
「針で刺して『イタッ』と言ったら日本人、『アイヤッ』と言えば中国人だ」
深田は、マイケルの腕にボールペンをプスっと指すとマイケルは「アイヤ」と言って痛がった。
因みにマイケルは元台湾人だ。
社民党党首と組んだ弁護士に中共スパイ裁判官か。
しかも、うじゃうじゃいる。
ヤバいぞ、深田。
深田の運命やいかに・・・
続く
第6回戦 中国国家安全部の戦略
【スパイ事件サマリー】
「裁判所が工作員だらけなんて、聞いたことある?」
深田はため息吐いた。弁護士が極左、弁護士会は基本左、裁判官書記官が工作員なら、どう考えてもこっちに勝ち目はない。
自衛隊の夜間飛行が差し止めたり、国民の土地を暴力団に差し押さえさせたり、最近の裁判所は迷走しまくっている事態を国は放置している。放置国家と呼ばれる所以だ。
「深田、裁判所だけじゃないぞ。警察、検察もかなりの数の工作員がいる」
マイケルはそう応えた。
「なんで分かるの?」
「米軍の仕事をしていた頃、米政府からの要請で江沢民の息子が管轄する中国科学院の顧問になった。それで、年に数回ほど中国で共産党幹部に講演なんかをしていたんだ」
「その時、中国科学院に国家安全部のトップを紹介された」
国家安全部は中国共産党直属の諜報機関で、海外での工作はここで計画が練られる。
「そのトップが俺に語ったのは、中国国家安全部の計画で、中国人を日本に帰化させて警察、検察、弁護士、裁判所をコントロールするという壮大な計画だ。90年代に始まったその計画で、既に数万人を日本に送り込んだと自慢していた」
「それいつ?」
「ドットコムバブルの頃で、まだ俺が金持ちだった時かな」
2000年の時点で数万人が送り込まれているなら、裁判所に工作員がうじゃうじゃいても不思議ではない。
「でも、警察まで食い込めるかな?一応バックグラウンドチェックがあるから難しいんじゃない」
「朝鮮総連ビル事件で、元公安警察長官が関わってるじゃないか。日本もクリーンではないな」
確かに、言えてる。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/朝鮮総連本部ビル売却問題
「でも、これは朝鮮系の話だし」
「何言ってるんだ。韓国の諜報機関は中国に協力してるだろ。LINEのサーバーは中国にあるんだぞ」
「まさか、中国、韓国、北朝鮮の夢のコラボレーション…」
確かに、日本で電子基板を作ろうとしても散々破壊工作に遭ってきたのだが、不況に喘いだ電子基板産業は殆どパチンコ業界に牛耳られている事態だ。
その電子基板企業が悉く中国共産党に協力してるのも謎だったが、そもそも協力関係にあるなら何の不思議もない。
「深田、中国工作員は面倒臭いぞ。金もあるし、送り込んでくる人員も何万人と用意できるからな」
「ヤダァ!そもそも何でそんなのに狙われてるの?」
マイケルは、「それは、俺がJSF計画に関わった天才だからさ」と応えて笑った。
深田萌絵の運命やいかに…
続く
第6回戦追記
中国科学院で名刺交換した院士40人は、後のFBIの捜査で全員が解放軍だったことが発覚する。
そもそも中国科学院が解放軍の軍事技術開発を行う為に創立されているので不思議でもない。
http://girlschannel.net/topics/192367/
第7回戦 マイケルの技術
あれは5年前だ。
マイケルとの出会い。
福島原発事故、津波被害が遭ったというのに、日本の技術が遅れている為に高解像度動画はリアルタイムに送れないので事故の様子を知ることすらできないと知った。
更に、事故後の原発内部は高放射線下にあるので、放射線が電子にぶつかれば半導体チップがエラーを起こしてしまう。
そこで思い出したのが、マイケルだ。半導体大手Intelの元社長に紹介された天才エンジニア。彼は、耐放射線チップ設計を開発したので米軍に採用された。
原発事故の後、深田はすぐにマイケルに電話して投資の約束をした。それが全ての始まり。
マイケル・コー。この名前は、FBI被害者保護プログラムでFBIから与えられた名前で本当の名前ではない。
マイケルの会社は耐放射線チップ設計技術で台湾で株式公開を果たし、セルコンピューターと略式で呼ばれた技術の名前は一瞬世界に広まった。
直後、彼の台湾オフィスは中国スパイに襲撃され、馬英九によってマイケルは投獄された。獄中で暗殺されそうなところ、現台湾立法院長王金平に助けられて米国へ亡命。FBIの保護下に入ったのだ。
「だいたい、何故オフィスを襲撃されたの?」
「だからJSFさ。統合打撃型戦闘機の開発」
「マイケルのチップ設計が飛行機となんか関係ある?」
「いまや兵器は殆どチップ制御だ。俺は、無人機用のリアルタイム動画伝送システム設計と放射線や電磁パルス攻撃を受けても壊れないコンピューターの設計に携わっていた。中共はそれを台湾経由で盗んだミラージュの設計に足せば、自家製無人戦闘機の出来上がりだと踏んだのさ」
「それ、オーマイガー!な事態なんじゃないの!?」
「馬英九は今でも俺を抹殺したい。中国国民党の実態は上海黄金時代に栄えた暴力団青幇(チンパン)。青幇の資金源は諜報活動による情報と兵器売買だ。国民党は、フランス製のラファイエット級フリゲート艦の技術、戦闘機ミラージュ2000の技術を中国共産党に売って稼いできた。その極みで、馬英九は俺が開発したJSF用のチップ設計を中共に売った金で国民党序列5位から1位になり、総統選に勝ったんだ」
「兵器技術の密売って国際条約違反で捕まらないの?」
「捕まるわけないだろ。証拠も証人も全て隠滅された。ラファイエットとミラージュの兵器技術転売にはフランスの政治家と中国共産党幹部が関わっていて、フランスの諜報員から台湾の軍人まで国際裁判の証人14人は殺された。そのうち一人は東京で暗殺されてる」
「JSFは裁判にならなかったの?」
「陳水扁元総統が台湾国内でも国民党の軍事技術転売汚職事件の捜査を進めようとしていた」
「じゃあ、FBIの捜査にも協力してくれたのね」
「ところがだ、馬英九が検察を使って陳水扁を汚職で投獄させたその日、FBIの捜査は打ち切られて事件を知る者は全員口を封じられたという結末さ」
「オーマイガー!じゃあ、今、うちに厭がらせに来てるのは…」
「台湾青幇グループ、中国解放軍と国安工作員、中国工作員化した朝鮮系と国防動員法で絡め取られた中国に所在する日本の中小企業だな」
ゲゲゲ、もしかしたら、とんでもないのに投資してしまったのか。
JSF技術取得は中国最大のターゲットだ。
http://aviation-space-business.blogspot.jp/2012/…/f-35.html…
続く
第7回戦追記
事件の始まりは、見えている以上に根が深い。暴力団青幇の配下にある台湾国民党がラファイエット事件で巨額の賄賂を受け取った時から、軍事技術転売は国民党のビッグビジネスとなった。
ラファイエット事件の証人14人は殺され、一人は東京で命を落とした。
そう、日本は安全ではないのだ。
青森李登輝友の会ブログ 【論説】ラファイエット事件 アンディ チャン
【論説】ラファイエット事件          アンディ チャン          1.世紀の國際スキャンダル十月初旬にスイス最高裁が、ラファイエット事件のキーマン汪伝浦(Andrew Wang)の所有する銀行帳簿について、台湾の法廷が死刑判決をくださいないという条件で汪伝浦(Andrew Wang)の銀行口座にある、巨額のリベートの流れを書いた資料を台湾に供給する判決を下した。こうして二年以上の訴訟の結果、資料は台湾に渡ったが、台湾政府は国民党側の妨害にあって選挙前に資料を公開しないと発表した。台湾側が即時調査しなければ資料の公開は遅れ、台湾が汪伝浦(Andrew Wang)の銀行口座からリベ…
RINNKENNRYOU.BLOG24.FC2.COM
第8回戦 中国スパイ企業、現れる!
【中国スパイ事件サマリー】
「解放軍、中国国安工作員に朝鮮系工作員か…うちみたいな数人しかいない会社によくもこれだけ出揃ったもんだ」
「いや、まだ登場してないビッグプレイヤーがいる」
マイケルは深田のため息を気にもせずにあっけらかんと答えた。
「スパイのビッグプレイヤー?」
「そう、ファーウェイだ。海外での中国の諜報活動には殆どファーウェイが絡んでる。CIA長官がキレたくらいだ」
そう言ってマイケルはニュースを見せた。
http://www.newsweekjapan.jp/…/busin…/2013/12/post-3138_1.php
「そんな、大企業がうちみたいな弱小企業に付き纏うかな。エリちゃん、共同研究先に全部電話してファーウェイ来てないか問い合わせてくれる?」
「はい。分かりました」
深田はエリに声を掛けた。この会社を始める時から手伝ってくれているスレンダー美女だ。
解放軍出身者が創業したファーウェイ、中国名は華為。企業であって企業ではない。共産党直属企業なので、解放軍や国家よりも上位に属する。
中国は、中国共産党>人民解放軍>政府 という構造になっているので、通常の企業は法律の下位だがファーウェイは中国の法律よりも上位だということだ。
毛沢東は軍事力を強化する為に中国科学院を創立したが、鄧小平は工作活動を強化する道を選んだ。
それらは鄧小平が好んだ言葉、「巨大中華龍唐興為」を組み合わせて、巨龍、大唐、中興、華為の名前を冠した四社を共産党直属の諜報機能を兼ね備えた企業として創立した。
巨龍、大唐は倒産し、通信モジュールを取り扱った中興と華為は時代のトレンドに乗って成長を成し遂げた。
「ファーウェイは共産党配下だが、日本に来るのはファーウェイグローバルから派遣された台湾人。青幇の構成員だ」
マイケルが続ける。
「えぇ?共産党スパイの中身が台湾人なの?」
「本物台湾人ではない。青幇だと言っただろう。青幇は数百年の歴史がある暴力団で清王朝ですら討伐できなかった強力な暴力団だ」
「青幇は日本が上海占領の時に協力したんじゃないの?」
「戦時の青幇は、日本軍を助け、国民党軍を助け、共産党軍を助けた。三つの政府が戦えば、武器と敵軍情報の密売で、商売繁盛だからな」
「青幇は戦後途絶えたんじゃなかった?」
「青幇は戦後、共産党からの逆襲に遭って壊滅寸前まで追い込まれたが、蒋介石と組んで台湾占領に協力したんだ。残党は台湾で蘇り、国民党となった」
「青幇が何故今さら共産党に協力を?」
「儲かるからだ。青幇ビジネスは兵器売買と諜報活動だ。中国共産党は中国人を日本で諜報活動に当たらせる時に、中国人の立ち居振る舞いが悪過ぎて日本社会で警戒されることに気がついた。だから、中国大陸の血が濃くて日本文化の影響が強い台湾青幇を選んだということさ」
確かに中国人に日本人のフリは難しい。
「萌絵さん、大変です」
受話器を置いたエリが蒼ざめる。
「何?」
「共同研究先のN大三次元映像研究室にも、W大通信研究室にも、O大光学研究室にも全て弊社が訪問した一週間後にファーウェイが突然現れたそうです」
「ぬ、ぬ、ぬなっ!?」
「しかも、研究室に多額の寄付を積んだそうで、弊社との共同研究は白紙にしたいと」
「三大学全てか?」
「全て断られました」
既に共同研究先にはファーウェイの手が回っていた。打つ手はあるのか。
https://facta.co.jp/article/201404021.html
深田萌絵の運命やいかに…
続く
第8回 追記
ファーウェイのスパイ疑惑の為に、英国は元MI6のエージェントを内部に派遣した。日本の内閣調査室、外事警察も調査しようとしているが、上層部の汚職で調査は遅々として進まない。
報道によると、ファーウェイのエンジニアが日本に数百人ほど来たがオフィスに行った様子はなかったとのこと。
日本側に捜査情報を渡しても、一万円も調査に使えない現場の人間にはどうしようもない。外事警察は情報屋に払う金はあるけど、それも上司の許可がいる。
残念ながら日本の諜報機関は機能不全のうえ、中国側に逆に取り込まれているという事態が予想される。
何故、そういう結論に至ったかは、事後語ります。
第9回戦 衛星ハッキング計画
「どうしてファーウェイがうちの研究先を全て知ってるんだろ」
「萌絵さん、アルファアイティーシステムの藤井社長はうちの共同研究先の資料紹介したし、W大の研究室にも一緒に行ってましたよ」
エリは資料をチェックしながら深田の独り言に答えた。藤井はファーウェイと関係があるのか、そんな疑問が湧き上がる。
「でも、どうして研究室なんだろう」
「うちが受けた政府研究計画の衛星実験だ」
マイケルがカフェラテを啜りながら深田を見た。
「単なる動画伝送実験にどうしてファーウェイが興味あるの?」
「衛星へのハッキングは解放軍最大のミッションだ。いいか次世代型の戦闘機は全て衛星による中央管制だ。中国が戦争を始める時の課題は衛星通信をいかに阻害するか。衛星を直接攻撃するか、衛星をハッキングするか2つに一つ」
確かに、中国はここ数年ほど衛星攻撃兵器ASATの開発に躍起で、米国政府からの批判を浴びている。
http://www.jiji.com/sp/zc?g&k=201511%2F2015111000122&pa=
「衛星にハッキングなんてできるの?」
「いいか、今回の衛星実験は普通の衛星通信ではない。普通の衛星通信ならデータリンクを利用するが、今回の衛星通信はコントロールリンクへのアクセスだ」
「でも、動画を伝送するだけなら危険はないはず」
「単なる圧縮動画伝送実験ではない。政府研究所のエンジニアが動画処理に必要なアルゴリズムを開発したと言ってただろ?」
「あのイラン人の?そう言えば、プログラム貰って無いよね」
深田はハッとする。イラン人は動画処理のプログラムもチップに埋め込みたいので提供すると言ってたのにいっこうに出して来ないのだ。
「それと、政府研究所の人間が食堂でボヤいてただろ?情報収集衛星研究室に北朝鮮人が採用されたって」
確かに、日本の政府研究所の衛星関連の研究室に悪の枢軸国から来たエンジニアが出入りしている事態はヤバい気もする。
衛星の管理は総務省の管轄だが、日本の衛星利用は米国政府とシェアされている。ということは、アメリカの次世代型戦闘機が日本の領域を通る時には日本の衛星を利用する。
「中国は日本に攻める時に、アメリカの干渉を防ぐ為に衛星を狙ってるってことなのね?」
「確認の為に政府研究所に行こう」
そう言って、マイケルと深田は政府研究所に向かった。
研究所ではいつも通りイラン人が白い歯を見せて出迎えてくれた。
「実は、中国スパイ企業ファーウェイが現れて今回の衛星実験を狙ってるんです。早く理事長に知らせた方がいいのでは無いでしょうか」
深田は単刀直入に聞いた。
「ス、スパイ?ハーッハッハ!深田さん、映画の見過ぎじゃないですか?世界大戦は終わって世界は平和なんですよ。それにファーウェイはいい会社です。開発が間に合わないから言い訳言ってるんでしょ、もっとマシな言い訳考えてよ」
イラン人は腹を抱えて笑った。
深田は何となく恥ずかしくなった。妄想だと言われたら、確かにその通りなのだ。
「ところで、ミスターイラン。チップに組み込みたいと仰ってたアルゴリズムはいつ貰えるんですか。そろそろ出して貰わないと開発が遅れます」
「そんなのいつでも出せますよ」
「それは良かった。開発に間に合いそうで安心しました。実はこのスパイ事件をFBIに報告しようと思っていたんですが、協力は頂けないんですね」
「協力するまでも無い。スパイなんていませんからね」
最後、イラン人は怒り気味に答えた。
帰りの新幹線、深田はマイケルに尋ねた。
「言われてみれば、スパイとか気のせいかもね」
マイケルはカフェラテを一口飲んで、「さぁ、それはどうかな」と答えた。
東京駅では、エリが待っていた。
「ハイ、マイケル。言われた通り大学に訪問したファーウェイ社員の名刺を貰いました」
「よし、これからFBIに行くか」
「ハァ?FBI?ここ、日本だよ」
深田が目を丸くすると、マイケルはニヤニヤ笑ってタクシーに乗りこんだ。
深田萌絵の運命やいかに…
続く
後日談だが、一カ月ほどしてイラン人は研究所から突然姿を消した。謎のプログラムと共に。
第9回戦追記
衛星実験に関わっていた企業に衛星ハッキングの危険性について話すと、その役員が総務省の上層部に相談に行った。
総務省の回答は、実験用に使われる衛星『きずな』は二年で引退予定なので、ハッキングされても大した痛手は無いとのことだったと伝えられた。
総務省に事の重大さが伝わらなかったため私たちは外事警察に危険性を訴えた。後に、事件はどこかから漏れたのか報道され、政府研究所は実験に利用する回線を衛星から専用回線に差し替えた。
あるジャーナリストから、内調に事件を報告し、外事警察は本件を監視していると連絡を受けて胸を撫で下ろした。
そこから暫くして、日本という国は一枚岩でなく、正義は脆くも内部から崩れ去ることを知る。
第10回戦 誰が日本を守る?イザ、警察へ!
「すみません。実は、スパイによる衛星ハッキング事件について相談したいんです」
中央警察で深田は受付に相談すると、『来たな、電波系め』と冷たい視線を感じた。
「相談内容は何ですか?」
「実は、政府研究所の衛星実験で衛星を丸ごとハッキングして、衛星管制型の兵器を乗っ取る準備をしてる人物がいて…」
「実際に被害に遭ったんですか?被害者は誰ですか」
「いや、まだ被害は無いし、事件になれば被害者は国民全員なんですけど、誰に相談したらいいですか?」
「被害無いなら、被害届け出せないから意味無いですよ」
とそっけなく突き返され五分ほどすったもんだ。
「じゃあ、とりあえず刑事課へ」
刑事課へ案内され、深田は衛星がハッキングされそうだと言うことを説明した。
「深田さん、どうして衛星が狙われるんですか?」
「次世代型の兵器は衛星管制だからです」
「それで、どうして衛星が狙われるんですか?」
「衛星をパソコンみたいに乗っ取れば、偽の指令を出せます」
「どうやって乗っ取るんですか?」
「衛星のコントロールリンクに不正アクセスすれば、できるんです」
「それは、こちらの管轄ではありません。衛星って宇宙ですよね」
「じゃあ、どこに相談したらいいんですか」
刑事課での衛星とネットワークの重要性の説明だけで一時間ほど押し問答する羽目に。そもそも警察は情報セキュリティの知識が乏しいのか、この部署がいけないのかと周りを見渡すと『知能犯係』という札がかかっている部屋が見えた。
「すみません、知能犯係に変わって貰えます?」
と深田が聞くと、刑事課の刑事は喜んだ様子で知能犯部へと深田達を回した。ようは電波系だと思われているのだ。
「どうも、知能犯係の者です」
「実は情報セキュリティで最も重要な衛星へ不正アクセスして乗っ取るプログラムを送り込もうとしている中国スパイがいて…」
「待って、僕ね、パソコンのことわからないんですよ。生活安全課に行って貰えませんか?」
意外にも知能犯係に瞬殺断られた。
「え?でも、ハッキングとかは知能犯じゃないんですか?」
「深田さん、知能犯係ってね、頭がいい犯人じゃなくて、暴力を伴わない事件を扱う部署なんです」
「ハッキングがダメなら、何の犯罪が仕事なんですか?」
深田が食い下がると、
「主にオレオレ詐欺です。けっこう忙しいんですよ」
と意外な回答が来て、深田は目を丸くした。
『オレオレ詐欺、知能要りませんよね』
エリは無言でこちらを見て、深田はこくりと頷いた。警察対中国スパイ、明らかに敵の知能が優っている。
「あ、犯人は中国スパイと言いましたね。そうだ外事二課だ。外事呼びます」
と更にたらい回しになった。区役所にいるのかと錯覚するくらいだ。
桜田門から三名の外事警察がやってきた。
桜田門勤めの刑事は、眼光鋭く、身体付きも中央警察の刑事とは格段に違った。
陣内刑事は、「ファーウェイ」という言葉を聞いて顔色を変えた。
深田は話を続けた。
衛星実験に、イラン人が関わっていること、実験前に2ヶ月ほどイランに帰国していたこと、中国を経由していたこと、職員が情報収集衛星に北朝鮮人が混じっているとボヤいていたこと。
エリが大学に訪れたファーウェイ社員の名刺を出すと、刑事が「アイウェイか…」と呟いた。
「深田さん、お話はだいたい分かりました。また、何かあればご連絡ください」
そう言って陣内刑事は深田たちを見送った。
「萌絵さん、刑事さんがアイウェイに反応してましたよね。有名なんでしょうか」
「さあ、私はスパイの話なんか警察でして、精神病だと思われてそうでヒヤヒヤしてそれどころじゃなかった」
と深田はボヤいた。
アイウェイか…
確かに有名なのかもしれない。
続く
第11回戦 その名はアイウェイ
「萌絵さん、大変です!」
白いデスクと棚で統一されたオフィスで、エリが声を上げた。
「なによ、毎日けっこう大変なんだけど」
深田はブツクサ言いながら髪をかき上げる。
三菱東京UFJ銀行の支店長は人の口座から勝手に金引き出すわ、アルファアイティーシステムには設計盗まれるわ、共同研究先は中国スパイ企業が現れるわ散々な目に遭っている。
「これ見てください」
エリはパソコンの画面を指差した。
「あの、大学に現れたファーウェイの人間、アメリカで指名手配だとニュースで出てます」
「し、指名手配!?」
深田は思わず息を呑んだ。ファーウェイのアイウェイが指名手配だという記事がネットで流れていた。
https://facta.co.jp/article/201404021.html
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「アイウェイって、大学に来たアイウェイ!?」
まさかのまさかだが、大学に現れたのは米国政府が目を付けてるスパイ犯、ど真ん中の人間だったのだ。
「萌絵さん。アイウェイって、あのアイウェイですよ!」
二人は目を見合わせた。
「どうして、変な外人マイケル、元株アイドル深田、ミスパイナップルの孫エリの三人しかいない会社に、指名手配中のプロ中のプロのスパイがわざわざ何の用事だって言うんだよ」
トントン!とネイルで飾られた指先で深田はパソコンの画面をつついた。
「ハハハ、指名手配のスパイなんて下っ端中の下っ端だろ。俺は米国最先端戦闘機のソリューション設計チームに選ばれ、江沢民が顧問になってくれと挨拶に来て、青幇首領がワザワザ殺しに来て、極め付けは台湾総統馬英九まで追い回しに来るんだぞ。スパイくらいで驚くなよ」
マイケルはカフェラテをふーふーしながら答えた。
エリは「いきなりラスボスだと、レベルアップする前に即死しそうですね」と深田に耳打ちした。
「マイケル、せっかく名前も国籍も変えたのになんで未だに追われてるのよ。今、うちの会社は軍事と関係なく、100%コンシューマ!リアルタイム動画伝送技術で津波から国民を守り、3D技術で子供達を喜ばせる楽しい会社でしょ!」
「しょうがないだろ。俺は天才なんだから」
マイケルはチラと深田を見た。
マイケルの設計する物は一般レベルの百倍から千倍のスペック。頭が良いのは間違いないが、臆面も無く自分を天才呼ばわりされると無性に腹が立つ。
「だいたい、今、世の中に出回ってる技術はデュアルユースであることが多い。無人ヘリコプターだって、赤外線だって、軍事技術なんだぞ。脳足りんめ。俺は子供の頃から天才だが、お前みたいな凡人と違って天才の人生は大変なんだよ」
マイケルはやれやれとため息を吐いた。
深田は苛立ちを収めようと深呼吸していたところ、オフィスの電話が鳴り響いた。
「萌絵さん、大変です!」
「今度はなんだぁ!」
「うちの取引先に、例のアイウェイがニュースの記事持って怒鳴り込みに来たそうです」
「え、まだ日本にいるの!?」
外事警察に通報したはずが、アイウェイはまだ国内にいるのか。
「中国には政府が発行する公式偽パスポートがあるし、複数国籍を持つ工作員はいくらでもいる」
マイケルはこともなげに言った。
「萌絵さん、公式偽パスポートっていう言葉が存在すること自体が中国すごいですね」
「そうだな、名前自体矛盾している」
「そんな冗談よりも萌絵さん、この記事について取引先の部長が説明求めてやってくるそうですよ」
エリが不安げに深田を見つめる。
「説明と言われても、説明のしようが無いんだけど…マイケルどうしよう?」
振り返ると既にマイケルの姿は見えなかった。
「さすが、馬英九台湾総統の手から逃げ出した男だな」
「そうですね。いつ消えたんでしょうね」
エリが垂れ目の瞳でオフィスのドアを振り返った。
深田萌絵の運命やいかに…
続く
第10回戦 追記
深田の精神状態なんてどうでもいい話だけど、訴訟が始まり、銀行口座を名義違いで差し押さえられ、中国スパイに付きまとわれ始めた頃はワケが分からなくて、かなり精神的に弱っていた。
2013年の年末、半分ウツ状態で大阪の実家に帰り、2014年の初詣に母と出掛けた時に、神社で厄除けが五百円で売ってるのが見えて思わず手を伸ばしたら母にその手を掴まれた。
「萌絵ちゃん、あんた、もしかして、厄が怖いとか言うんと違うやろな?」
母が目を合わせて来た。
どうしよう、さすがに母さんにスパイ事件やら訴訟事件の相談はし辛い。
「あ、いや、別にそういうワケでは無いんですけど…」
「あんた、初詣のお参りって言うのはな、こうやるんや!」
母はお賽銭箱に小銭を投げて、パンパンッと柏手を叩き、
「厄よ!来るなら来い!受けて立つ!」
と叫んだ。
母はドヤ顔で振り返り、この雰囲気では日々押し寄せてくる厄に対して挑戦状を叩きつけるまでは家に帰れない雰囲気になった。
止むを得ず、深田は厄除けを棚に戻して、柏手を打ち、
「厄よ!来るなら来い!受けて立つ!」
と新年神に挑戦してしまった。
後日詳しく書くが、結論から言うと、そこからいっそう酷い目に遭った。
ボロボロになった私を見て、母は、「今日はこの程度で済んで良かったと神様に感謝しなさい。明日はもっと酷い目に遭うかもしれないんだからね。あんたみたいなデタラメな娘、私がご先祖様拝んでるからマグレで生き延びてるだけやから調子に乗るなよ」と慰めてくれた。
2015年の初詣、深田は柏手を打って「参りました。そろそろ勘弁してください」と祈るハメになったのだ。´д` ;


第11回戦 追記
マイケルが一番ナゾ過ぎるというツッコミ。
ごもっともです。
台湾生まれ。知能指数200で5歳の頃にアメリカの研究所に送られそうになったことから彼の奇妙な人生は始まる。
6歳でアメリカ人のエンジニアに設計を教えて欲しいと聞かれ、10歳で論文を書く。
子供の頃から偏屈な理論派で、戒厳令下の台湾で蒋介石は神様では無いと近隣住民に教えを説いて、近隣一体はアンチ蒋介石になった。
やり過ぎて、11歳で一週間投獄されて、一日中蒋介石万歳音頭を唱えさせられた。
普通はそれで、洗脳されるのだが、余計に国民党が嫌いになる。
学生時代に立体音響の特許を取り、日本の企業にライセンスしたお金でアメリカの大学院に入る。
それ以来、彼は日本と日本人が大好きだ。
日本人は、マナーが良い、清潔、ハートが美しい、金払いもいいと彼にとって最高の場所のようだ。
サラリーマン3年で、テキサスインスツルメンツの役員に30万ドルの投資を貰って起業。そこから米軍の開発に招かれるようになり、台湾で株式を公開した。
性格はかなり宇宙人だ。
ある大企業の社長に「どうして、こんなスペックの設計ができるんですか?」と聞かれて、「それは貴方のエンジニアが頭悪くて、俺が天才だからだ」と答えた。
もちろん、商談は白紙。
ある日、大企業の社長の秘書が「マイケルさんはいつも美人の社員を連れてますね」とお世辞を言うとキョロキョロして、「え?美人?俺は美人なんて連れてたことは無い、君の美しさが足りないだけだ」と答えた。
無論、商談は破談だ。
みんなマイケルの才能に惚れ込むが、宇宙人過ぎる性格に辟易している。
因みに、私もマイケルにはホトホト困らされているが、戦いが始まってしまったので勝つまでやるしかない。
始まってしまったものは仕方ないのだ。

第12回戦 ファーウェイの逆襲
「なんだこの記事は!!」
誌面のコピーが机上に叩きつけられた。
ファーウェイのアイウェイが指名手配スパイだと書かれた記事を持って、取引先の部長がオフィスに押し掛けてきたのだ。
「いや…なんだと言われても…」
「うちの役員はファーウェイジャパンの社長と長年の付き合いなんだぞ。どうしてくれるんだ」
「そんなこと言われても…」
警察やらなんやらに相談しているうちに、何故だか記事が出回っていた。こっちだって理由を知りたいくらいだ。
「深田萌絵!株アイドル時代の人脈を駆使して、この記事を記者に書かせたんだろう」
ギロリと取引先の部長に睨まれ、深田は首を横に振る。本当に何も知らないので、答えようがない。
「ふかだぁ!どうしてくれるんだ!?」
「部長、冷静に考えてください。私にメディアを動かす力があったら、他人の為にその人脈使うよりも自分が有名になって稼ぐ為に使いますよね。フツーに考えて」
そう言うと、部長は「確かに」と黙り込んだ。
深田は作家になるのが夢で株アイドルになったが、株の記事以外に執筆依頼が来たことはない。無論、そんな深田にメディアを動かす力はあるわけもない。株アイドルと呼ばれていただけで芸能人ですら無い。
「だいたい、ファーウェイの悪口書かれても、御社は何の痛手も無いのに何で怒ってるんですか?」
「深田!お前は外資の人間だから、日本の商取引文化分かってないんだよ!」
そう言って、取引先の部長は帰っていったのだが、なんで怒られたのかサッパリ分からなかった。
「まーったく、なんで私が怒られるのよ!」
深田はブツブツ文句を言った。
「萌絵さん、大変です」
「エリちゃん、今度は何よ」
「このニュース見てください」
と指差された記事を読んでみると、アイウェイが指名手配だというニュースを読んでファーウェイに問い合わせてみたという記事が流れていた。
「なになに、『米国でスパイ認定された社員がいるのか事実確認をすると、「個別の従業員に関するお問合せはプライバシーもあり、回答は差し控えさせて頂きます」とのこと』って、そこ『スパイという事実はありません』って否定するべきとこじゃないの?」
「なんでしょう。普通は否定する気がします」
「無実だったらね」
深田とエリは、またもやパソコンの前で顔を見合わせた。
http://www.j-cast.com/2014/03/26200190.html?p=all
後日、その取引先は解放軍ロジスティクス保利集団と提携していたことが発覚した。いやはや、日本人は金に弱い。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/保利集団
深田の運命やいかに…
続く
第12回戦 追記
軍事とロジスティクス。
日本の物流企業が解放軍のロジスティクスと手を組んでいたことには驚かされた。
たぶん、戦争になれば、日本国内にいる国防動員法でテロリスト活動をさせられる中国人に物資や武器を運ぶ活動をこの企業が担うことになると思われる。
(私は中国人が悪いと思っていない。共産党が国防動員法で在日中国人の家族を人質にできるので、彼らには選択の余地が無い)
ロジスティクス戦略は戦争の要だ。
物資、武器、お金が途切れれば、戦争では負ける。
アメリカはここの技術開発に莫大な投資をした。
それが情報ロジスティクス、インターネット。
物資調達における要、クレジットカードの開発だ。
銀レイカードを日本で普及させた某日本人は、その事を分かっていて、それを行なったと私に告げた。彼は、その目的までは私に告げずに姿を消した。
第13回戦 ネットワーク網完全制御戦争
オフィスに入ると、台湾語と中国語のアナウンスが流れてる。マイケルが腕組みして目を瞑り、台湾の政治番組を聴いてるのだ。
以前、マイケルに聴いたことがある。どうして、台湾に帰らないのかと。彼は、自分が馬英九の軍事技術密輸事件の証人だから、国民党が政権である限り台湾に入れば殺されてしまうと答えた。
マイケルは毎朝台湾の政治番組を観ている。口には出さないが、国民党政権が野党となり、台湾に帰れる日を待っているのだ。
「分かった」
マイケルが唐突に口を開いた。
「分かったって、何が?」
「中国共産党の狙いだ。日本のネットワークを完全に制御して、データセンターにある日本の情報を全て中国に流出させることだ。早く外事警察に届けてくれ」
「ハァ?また突拍子も無い事言わないでよ。また中央警察で精神病患者扱いされるのイヤよ」
深田は冷たく突き放した。
「このニュースを見ろ」
パソコン画面には、台湾の学生が向日葵を掲げて「ブラックボックス協定反対」と行進する姿が見えた。二国間協定の内容詳細が公開されてないので、反対しているようだ。
「台中サービス貿易協定反対運動がどうかしたの」
台湾と中国の間では、サービス系の仕事を自由に行うことができるという協定を結ぼうとしている。それに台湾学生は反対しているのだ。
「意味が分からないか」
「サービス貿易協定で台湾人の仕事が無くなるから反対してるんでしょ」
「そうじゃない、馬英九が台湾国内のネットワーク構築、ネットでの検索、データセンターの仕事を全て中国に移管する作戦で、ネット上の言論統制から個人情報を全て中国に統制される」
「ちょっと待って、日本の大企業のサーバーって、コスト削減で台湾のデータセンターに移管してるよね」
日本は土地や電気代が高いので、隣国の台湾にデータセンターを置く企業は増えている。特にフリーメールのサービスを行なっている企業は台湾のデータセンターを利用するケースが多い。
「中国の狙いは、台湾のデータセンターにある日本と台湾のデータを全て中国に持って行くことだ」
「そんなの通信回線に負荷が掛かり過ぎて無理でしょう」
「だから、台湾中国間で海底ケーブルを設置した直後の今のタイミングでこの協定を結ぼうとしてるんだ」
そうか、日本と中国の間にも海底ケーブルは敷かれているが、データのやり取りは統制されている。日台間で海底ケーブルを通じた通信は統制されていないので、台中間で自由にデータのやり取りができるようになれば、日本から台湾のデータセンターに向けて流れたデータはそのまま中国に抜けることになる。
「台湾の中華電信の通信事業も全てファーウェイになるし、台湾にあるデータセンターもデータは全て中国のデータセンターに転送される事になる。これがこの協定の目的だ」
「ちょっと待って。日本の携帯基地局の半分はファーウェイ、海底ケーブルもファーウェイ、となると衛星までファーウェイに制御されたら日本は…」
「そうだな。国内でテロが起こったときに政府に伝えようにも携帯は使えないだろうし、衛星電話も使えなくなれば通信手段は無くなる。政府専用回線のセキュリティも怪しいものだな」
中国共産党の対日通信インフラ戦、陸、海、空で陸、海は既に敗戦したも同然だ。
余すところは衛星だが、中国は衛星を撃ち落とす兵器も開発したので、ハッキング出来なければ容赦なく日本の衛星を撃ち落とすだろう。
http://www.nikkeibp.co.jp/sj/2/column/i/41/index2.html
深田の運命やいかに…そろそろ日本の運命が心配だ。
続く
第13回戦 追記 サービス貿易協定と衛星攻撃兵器
馬英九が習近平の為に締結した両岸サービス貿易協定はブラックボックス協定だと、識者から批判を浴びた。
台湾の国民党議員の親戚に、10代の非武装学生に対して武力行使とか酷いねと話すと、「彼らは左翼に洗脳された可哀想な子供たちだ」と答えた。
そう、台湾においては中国共産党は右、保守は左になってしまったのである。それに気が付いた台湾ローカルメディアでは、共産党のことを右翼と揶揄するようになった。
さて、サービス貿易協定だがネットで検索してもサッパリ内容が出て来ない。調べに調べて、何度も検索すると、なんてこったい、サービスのスペルをワザと書き換えているのだ。serviceをserciveと直している。ようは、日本の原発事故の後、某団体が原子力の『力』をカタカナの『カ』に書き換えたのと同じ手口だ。台湾も日本の悪いところでなく、良いところも真似して欲しい。
http://www.ecfa.org.tw/sercivetradeagreement1.aspx
↑サービスがサーシブになってる。
この協定の内容を見ると、サービス貿易協定の中身の18ページに中国に百パーセント差し上げますというサービス業の内容で危険なものが混ざってます。
台湾での第二塁電信事業とはインターネット関連事業です。
1)存伝網路服務 保存及び伝送ネットワークサービス
2)存取網路服務 保存及び検索ネットワークサービス
これを抑えられたら、台湾でのネットの自由は程なくして中国の実効支配下になります。
こんな危険な協定に日本政府の無関心もなかなかすごいものです。
あと、中国の衛星攻撃兵器ですが、米国政府はこれにはキレまくってます。
(英語だけど、読んでみてね❤︎)
http://www.bloomberg.com/…/chinese-military-suspected-in-ha…
衛星攻撃兵器は電磁パルス攻撃で、電子系統を壊して機能不全にさせる攻撃方法も持っているようです。
http://s.ameblo.jp/fukadamoe/entry-11925403029.html
この電磁パルスミサイルですが、北朝鮮も対日用途て開発しているので、電磁パルス攻撃対応型の移動型データセンターを設計している人も少なからずいます。
第14回戦 マイケルを捕まえろ!
アルファアイティーシステム社長、藤井一良からの訴え、第一回期日が始まった。
法人取引だったのに、藤井は私とマイケルを個人で訴えてくるという卑怯な手段を取ってきていた。
「法人取引だろうが」
契約書を読み返しながら深田は裁判所へ向かう準備をしていたが、肝心のマイケルの姿がない。
「エリちゃん、マイケルまだだよね?」
「いま、マイケルさんと電話中です」
エリは受話器を深田に渡した。
「マイケル、遅刻するよ。どこにいるの?」
「弁護士が行くから俺は行かなくていいだろ?」
「だったら私も行かなくていいよね?」
裁判所なんて、できれば行きたくない。
「ダメだ。殆どの弁護士は顧客を敵側に売るから、裏取引されないようにお前は出席しろ。あと、傍聴席に注意しろ」
そう言って、電話はプツリと切れた。
深田はガチャンと受話器を置き、
「いざという時に逃げ出す上司どう思う?」
とエリを振り返ると、
「逃げない上司を見た事ありません」
と彼女は答えた。
タクシーで裁判所に向かうと、あまりの汚なさに驚いた。古ぼけたコンクリートの建物にリノリウムの床、ドラマで見る大理石にステンドグラスの建物とは大違いだ。
傍聴席には3人の男が既に座っていた。
一人は梶原利之、一人は部下の宮西弁護士、もう一人は見覚えの無い男だった。
小綺麗なグレーのスーツにシルバーのピンバッジをしていた。弁護士のピンバッジは金色の菊の御紋なので、見知らぬ紋章だ。
万年筆に虫眼鏡のモチーフは企業のロゴマークデザインにも見えない。日本の家紋の辞典でも見た事が無い形状だ。
『おかしいな…』
深田は美大の頃にロゴデザインの授業に潜ったり、紋章学の授業に潜ったりしていたが、ロゴでも家紋でも無い奇妙な気分に取り憑かれた。
「深田さん、アルファアイティーシステムは法廷へ入ってください」
鈴木書記官の声で深田は我にかえる。森川紀代弁護士は先に被告席に着席していた。
第一回口頭弁論は次回期日を決めるだけの簡便なもので、ドラマのように弁護士同士が激論を交わすこともなく拍子抜けした。(因みに裁判で弁護士が激論を交わすのを、未だかつて見た事は無い。恐らく書類文化の日本人がまともに討論できるなら、外交もうまくいっていたはずだ)
帰り道、タクシーを拾ってエリに電話した。彼女だけが心の支えだ。
「萌絵さん、どうでしたか?」
「いや、次回期日決めただけで、数分で終わった」
「変な人、来てませんでしたか?」
「変な人はいなかったけど、変なバッジの人はいたね」
「どんなバッジですか?」
「あとで絵にして送るよ。とりあえず、気疲れしたから帰って寝るわ。あとよろしく」
「お疲れ様でした」
電話を切った後、深田はサラサラと虫眼鏡と万年筆のバッジの絵を描いてエリとマイケルに送った。
自宅に戻り、ソファに横たわるとマイケルから電話が入った。
「万年筆と虫眼鏡は台湾調査局のバッジだ」
「台湾調査局?」
「そうだ。台湾の諜報機関。青幇の戴笠が設立した。馬英九はまだ俺を探している。藤井がコンタクトしたんだろう」
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/戴笠
「台湾調査局ってこんなバッジ?」
「表向きは違う、裏任務のバッジはそれだ。俺はしばらく東京には入らない」
そう言ってマイケルの電話は切れた。
「超自分勝手なヤツ…」
深田はスマホを置いて目を閉じた。
とにかく、疲れたのだ。
ピンポーン
とインターホンの音で目覚めた。
窓の外は真っ暗だ。時計を見ると既に六時。
ピンポーン
慌ててインターホンの画面を見ると、スーツ姿の男が茶封筒を持って立っている。
「え?誰だろう?」
深田はあまりインターホンに応答しない。変な勧誘だったら嫌だからだ。
ただ、男は宗教の勧誘にも、集金にも見えない。小綺麗なスーツ姿なのだ。
「あれ?」
スーツの胸元に見覚えのあるピンバッジが付いている。万年筆に虫眼鏡。
深田はサッと顔色を変えた。
マイケルを追っている台湾調査局?
なんだ、これ、
藤井一良は早稲田大学時代に偶然知り合っただけの友達じゃなかったのか。
ハーフチャイニーズだとは聞いていた。
その彼が、マイケルの設計を盗み、旧友を訴え、ファーウェイを使い、台湾調査局まで派遣してくるって、いったい何なんだ。
こっちは金も権力もない個人だ。
相手が国家だなんて冗談じゃない。
正気になれ、
猫パンチで戦車と闘ってるようなものだぞ、深田萌絵。
この勝負、絶対に勝ち目はない。
深田の運命やいかに…
続く
第14回戦追記 藤井一良のナゾ
藤井一良と出会ったのは、早稲田大学在学時の金融工学の授業だった。
彼は、ファンドマネージャーだった私の前夫の訳本を持っていたことに感激して、一気に仲良くなって、前夫と今井雅人を紹介してしまった。
彼は前夫のファンドと今井さんから仕事をもらって会社を大きくした。もちろん、見返りを求めたことは無い。
私は彼を応援していた。才能あるクラスメイトに成功して欲しかったからだ。
彼の生い立ちはこうだ。
山口県産まれで、父親が日本人、母親が中国人。3歳で中国赴任の父親の為に中国へ渡航。両親共に仕事が忙しかったので、月曜から金曜までは24時間営業の施設に預けられっぱなし。
10歳で日本に帰ってきた時は日本語を忘れてしまって一から勉強したので、大変苦労したと。
その話に特に疑問は抱かなかった。
ところが、ある日、藤井が中国語で電話をしている時に電話の相手があまりにも南昌訛りが強いのでマイケルが「誰?」と聞くと、「父親です」と彼は答えた。
日本人の父親と中国語で会話?
という疑問が浮上した。
加えて言うと、中国で24時間子供を預ける施設なんかは聞いたことが無い。子供を預けたら売られるかもしれないし、子供は祖父母が育てるのが一般的だ。
私の兄が中国人と結婚したが、彼女の実家に行くと彼女のお父さんが甥の面倒を見ていた。中国はこちらが主流。
ということは、藤井が25年前に居た24時間施設とはなんだったのか。本当に幼稚園なんだろうか。
彼は日本で結婚しているが、中国にも別の妻子がいる。
彼は、いったい何者だったのだろうか。
第15回戦 マイケル逮捕
「深田様、警備の者です」
マンションの警備員が深田の部屋の扉の向こうから声を掛けた。
結局、深田はインターホンに応答せずに、不審者が居ると警備員を呼んだのだ。
「どうでしたか?」
「男性は、深田様に書類を届けに来ただけだと仰って帰られました」
「帰った。その書類は受け取られましたか」
「いえ、そのままお帰りになりました」
「書類を持ってきて、書類を預けずに帰ったの?」
深田が確認すると警備員はこくりと頷いた。
ますますおかしい。通常なら、警備員かレセプションに荷物を預けるはずだ。
「念のため、カメラの映像を保管しておいてもらえます?」
「警察での被害届けが必要なので、一週間以内にご提出頂ければご用意できます」
警備員はそう言って戻っていった。
深田はスマホを手に取り、マイケルに事態を伝えようとするが繋がらない。
「こんな大事な時に!」
深田はもう知らないと、スマホを投げ出してソファにうつぶせた。
ジリリリン、ジリリリン
黒電話の呼び出し音に設定したスマホが鳴り出して目が醒める。知らずにウトウトしていた。
マイケルか…?と思って電話に出ると「ハロー、ニーハオ!マイケルいますか?」と女性の声がした。マイケルの元秘書のジュディだ。彼女はいま、台湾にあるマイケルの家の近くに住んでいる。
「ジュディ、マイケルは昼から連絡が取れないんだけどどうしたの?」
「いま、台北警察が来て、マイケルを逮捕したから通知書にサインしてくださいと言われて…」
ジュディは今にも消え入りそうな声を出した。
「はぁ?罪状は何?」
「罪状は10年前と同じ。白紙の逮捕状」
「ジュディ、それ、証拠に使えるからサインせずに写真に撮ってこっちに送って」
そう言って電話を切った数分後に、またジュディから電話がかかってきた。
「シェンティエン(深田)!」
「写真は撮れた?」
「それが変なの。警察に電話がかかってきて、ちょっと話した後に『マイケル逮捕は間違いでした』って言って帰っていったの」
「写真撮った?」
「警察も見切り発車がヤバいと思ったみたいで逮捕状を慌ててクシャクシャに丸めて逃げてった」
「もう、なんだったの?」
「警察官は近所の人だったんだけど、マイケルが台湾に着く深夜まで待つように台湾調査局に言われたけど、残業するのがイヤで早めに来たんだって」
「マイケルは?」
「捕まってなかったみたい。安心したら眠くなりました。おやすみなさーい」
「あ、ちょっとジュディ。待って…」
そう言ってジュディの電話はプツリと切れた。
突然いなくなる亡命中のマイケル。
突然現れて捜査する日本国内捜査権の無い台湾調査局。
残業がイヤで手抜き仕事でジュディを訪問した台湾警察。
気が済めば、勝手に電話を切る元秘書のジュディ。
「台湾人、マイペース過ぎる…」
いったい何なんだよ、と深田はクッションに顔を埋めた。
亡命してるヤツもなんだが、スパイも警察も適当過ぎる。
台湾国民党 対 深田
深田の運命やいかに…
続く
第15回戦 追記 亡命者の引き渡し
この仕事を始めてから、法律の勉強もしなければならないし、国際協定もある程度のコンセプトを勉強しないといけないし、付け焼き刃の知識で良い対応はできないだろうけど、役に立たない弁護士に一千万円ほど費やしたので自分で頑張る方がいいと思った次第です。間違ってるかもしれないけど、なんでややこいのか解説します(^_^;)
日本にFBIがいることはあるし、中国国安は大活躍だろうし、日本に台湾調査局がいることもあるだろう。FBIは捜査機関で、国安、調査局は諜報機関なので並べること自体ちょっと変なんですが、日本にいないはずの人達がけっこういます。
これらの機関が日本国内において、捜査権も逮捕権も持ち合わせていないというのが現状で、日本が政治で独立した主権を持っているのならば当然である。
日米は同盟国ですが、FBIに日本国内での捜査権はありません。重要犯罪が起こった時は外務省経由でしか、日本とアメリカの捜査機関は相談することができない仕組みです。国際警察も基本そうなってます。
中国国安、台湾調査局は諜報機関で日本での活動が許されてるわけではないけれども、日本にはスパイ防止法がないのでスパイ活動をしても刑法に抵触しなければ何ら罪に問われないというグレーゾーンを突いてきています。
そう、日本においてFBIは捜査できないのに、外国のスパイは諜報活動が禁止されていないという法律のスキマを見事に突かれています。
スパイ防止法が制定されないことも、外国諜報機関の活動成果でもあります。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/国家秘密に係るスパイ行為等の防止に関する法律案
マイケルは政治思想の違いで台湾から亡命しています。
亡命者の引き渡しは、日本と台湾の間における協定での取り決めは無いのですが、台湾調査局が仮に日本国内でマイケルに対して実力行使すれば日本国家に対する著しい主権侵害に該当するのです。
そうなれば、国際問題に発展しかねないので台湾調査局の違法行為には驚かされました。
因みに台湾は日本にとって国家では無いので大使館はなく、台湾代表処というのが目黒の庭園美術館の裏にあります。
この調査局、無論ですが台湾代表処の協力を得て、東京に乗り込んできているわけです。
さて、マイケルの身柄はどこに…?
追記も続く
第16回戦 逃亡犯
「エリちゃん!」
月曜朝9時。
深田はオフィスに駆け込むなり、エリを呼んだ。呼ばなくても、エリとバイトのこけししかいないのだが。
「萌絵さん、どうしたんですか?」
「マイケルが裁判の日から、全く連絡が取れない」
「エエ!!本当ですか?」
「台湾調査局には捕まってないはずなんだけど…」
とは言うものの、深田は不安だった。
「そうだ、マイケルさんの部屋の鍵を預かってますから、一緒に部屋に行ってみましょうよ。何か分かるかもしれません」
エリはそう言って、引き出しから鍵を出した。
二人はガチャガチャとマイケルの部屋に押しかけたが、部屋はもぬけの殻だった。
潔癖なマイケルらしい、シンプルな部屋は整然と整えられて髪の毛一本落ちていない。マイケルが潔癖なのは、侵入者が訪れば一目瞭然にする為だ。
「マイケルさーん!」
「マイケル!」
二人は声をあげる。
寝室にもリビングにもマイケルの姿はなく、深田は書斎に入った。
書棚には幾つものファイルが並んでいた。深田の書棚と違って本は一冊もない。マイケルは本を読まない。本を読まないのに、誰から何を聞かれても殆ど全ての質問に応えることができる。
「なんだよ、このファイル」
本も読まない書類も作らないマイケルがファイルなんて、と思って深田は好奇心でファイルを開いた。
ペラリとカイザーエレクトロニクス社の社長から陳水扁に当てられた手紙が出てきた。
『親愛なる陳水扁総統。ジョイントストライクファイター(統合打撃戦闘機)の開発を米国政府から受けて以来、私達は中国スパイや台湾マフィアからの執拗な攻撃にさらされ、特に王源慈氏の会社は危険な状態にあります。総統におかれましては、台湾国内における王氏の活動をサポートして頂きたく存じ上げます。
カイザーエレクトロニクス社、社長より』
「なんだ…これ…」
カイザーエレクトロニクス社といえば、ロッキードマーティン社の下請けでマイケルと共同で開発を行なっていた会社だ。
その会社の社長がわざわざ台湾総統に手紙を書くってどういうことだ。そして、何故その手紙の写しがここにあるんだ。
http://www.prnewswire.com/…/elbit-systems-and-kaiser-electr…
深田は不安に駆られてファイルのページを捲る。そこにはFBI被害者保護プログラムの証明書とステイトメントと書かれた書類が挟まっていた。
『-ステイトメント- 私、王源慈は、FBI被害者保護プログラムにより、氏名をマイケル・コーに変更し、米国市民になることをここに宣誓します。マイケル・コー』
ミミズがのたうったような汚いサインは紛れもなくマイケルの字だ。
「カイザーエレクトロニクスの社長から、陳水扁総統への手紙、FBI被害者保護プログラム、アイデンティティー変更の宣誓書、マイケルの妄想みたいな話はもしかして本当なの…」
深田は更にページを捲った。
旧漢字だらけの書類に台湾検察と冠されたものが見られた。深田が習った中国語は文化大革命後の簡体字で、香港・台湾で利用されている複雑字を読むことは難しいが、いくつかの漢字は日本と共通だ。
『告発者、焦祐鈞』名前に見覚えがあった。告発者は、刑事告発を行なった人間のことだが台湾語でも同じ意味だろう。
「この名前は…」
間違いなく、青幇元首領焦庭標の息子だ。
マイケルがジョイントストライクファイターの設計を行なっていた時に馬英九と組んでその設計を盗んだ張本人。
「いやいや、同姓同名かもしれないし…」
スマホで焦の名前を検索すると、百度の辞典に彼の名前が出てきた。
『焦祐鈞 台湾電電公会理事長、華邦電子社長』
華邦電子、英名Winbondと言えば、台湾最大のチップメーカーだ。そこの社長が、マイケルを刑事告発している。
http://wapbaike.baidu.com/view/3507741.htm?adapt=1&
告発状の次のページには、台湾検察の書類が挟まっていた。
『王源慈 逃亡犯』
マイケルが台湾から米国へ亡命した直後の日付で、台湾検察から逃亡犯と名指しされた書類が出てきた。
「マイケル、政治思想の違いで亡命しただけじゃないのか…?」
よりによって、告発者がWINBONDの社長だなんて、そんなバカな。
深田は血の気が引くのを感じた。
金融の世界では信用が命だ。
深田萌絵の名前で、株主から出資を受けてこの会社を立ち上げた。この会社の為に三年半で費した資金は、既に億を超えた。
その企業価値の核となる技術を開発している人間が台湾で犯罪者で逃亡犯、その名はFBIの書類でマイケルの過去の名前であることが証明されている。
「萌絵さん、やっぱりマイケルさんの行き先の手掛かり無いですね」
エリがドアの向こうから声を掛ける。
「萌絵さん?」
深田はエリに応えることができなかった。
仮に、マイケルが本当に犯罪者ならば、自分の立場は共謀犯だ。軽い罪なら台湾調査局が日本まで彼を追ってくるはずか無いし、台湾最大のチップメーカーの社長が告発するはずもない。
まずい。マイケルの技術が日本を救える技術だと信じ、その開発の為に自分の資産だけでなく、他人資本まで入れてしまったので深田の責任は重い。それだけでなく、数少ない女友達のエリまで巻き込んでいる。
「萌絵さん?」
彼女の声が響く。
「エリちゃん…」
「どうかしたんですか」
キョトンと大きな瞳でこちらを見つめるエリに深田は応えることができなかった。
もしかしたら、自分は取り返しの付かないことをしてしまったかもしれない。エリに話せば彼女にまで責任が発生する。
「エリちゃん、とりあえずオフィスに戻ろう」
深田は、眩暈がする思いで几帳面に整理された部屋を後にした。
続く
第16回戦追記 犯罪人引渡し条約と台湾
死刑制度のある日本と逃亡犯引渡し条約を結んでいる外国は少なく、意外だが米国と韓国しかない。
無論、表上は国家とは認められない台湾とそんな条約を日本は結ぶはずもないのだ。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/犯罪人引渡し条約
今回、台湾調査局はマイケルを探して実力行使に出てきた。
ここでポイントになるのは、何故台湾当局は外務省経由で国際警察を通じて日本の警察に協力を要請せずに台湾調査局を送り込んできたのかという部分である。
彼らがそうできない理由、それはなんだったのだろうか。
深田は共謀犯になるのだろうか。
台湾最大の半導体メーカーWinnond とマイケルの関係はナゾだ。
深田の運命、本当にどうなっちゃうの?という感じです。
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第17回戦 大嘘吐きか妄想か
「マイケルさん、いったいどこに行っちゃったんでしょうね」
エリはタクシーでポツリと呟いた。マイケルと連絡が付かないなんて今までなかったことだ。
エリの言葉で深田は二十歳の頃のことを思い出した。
父親の会社が倒産した時、彼は何も言わずに失踪した。
何カ月も父のことを思ったり、なじったり、恨んだり、会いたいと思ったある日、深田は母にこう言ったのだ。
「お父さん、いったいどこに行っちゃったんだろうね」と。
母はすかさず、「どっかで生きてるん違う?ゴキブリ並みの生命力だから」と答えて「確かに」と思ったことを覚えている。
母と違って、深田は気が小さい打たれ弱い女だ。いつもクヨクヨしている幼少期だった。
そんな自分には とてもではないが、エリを励ます言葉なんて思いつかない。
「マイケル、ゴキブリ並みの生命力だから大丈夫だよ。ハハ」
深田はカラ笑いをしながら、オフィスのドアを開けた。
「ハロー!グッドモーニング!」
マイケルがスタバのラテを飲みながら、笑顔で二人を迎えた。
「おまえ!!このボケ!連絡も無しに何やってたんだよ!電話くらい出ろ!」
深田はすかさずマイケルにキレた。エリが「萌絵さん、大阪弁になってますよ。英語でお願いします」と深田をつついた。
「電話? 部屋に置きっぱなしだ。スマホはハッキングされ放題だからな。地球人は愚かだ。便利と引き換えに魂を売る」
「どこに行ってたのよ。台湾調査局だけじゃなくて、台北警察がジュディのところにマイケルの逮捕通知持って来たのよ」
「ジュディから聞いたよ。台湾調査局が俺を探して金曜日に来たということは、週明けには台湾国内の仕事があるから帰るだろう。だから、週末は隠れてたよ。軽井沢は素敵なところだった」
「か、軽井沢!?」
眠るに眠れず悪夢のような三日間を過ごした深田は、頭に血が上ってきた。
「だったら、ちゃんと説明しておいて!それよりも、今日こそ、過去に何があったのか系統立てて全部説明してよ」
「ノータイム。説明する時間なんかないぞ、これから外事警察に行く」
マイケルはラテを持ったまま、表でタクシーを拾った。
東京メトロ桜田門の出入り口すぐ横に警視庁がある。
バリケードの横に立っている警備員とエリが少し話をすると中まで案内された。
外事二課の陣内刑事と部下の久保田刑事が迎えてくれた。
「深田さん、どうしたんですか?」
「あの台湾調査局が藤井との裁判に現れて、その後、うちまで付けてきていたんです」
窓の無い部屋で刑事と話すのは少し緊張する。
「藤井の裁判に・・・」
これまでの経緯を知る陣内と久保田は顔を見合わせた。
「深田さん、どうして台湾はそこまでするんですか。私たちは、ちょっと理解できないんです」
久保田さんは正直にそう答えた。当然と言えば、当然だ。
フッとマイケルを見ると、いつもニコニコしている彼は沈痛な面持ちで語り始めた。
「私は、米国でJSF計画(統合打撃戦闘機)で無人戦闘機向けに遠隔操作技術の開発を行なっていました。そこで、私の技術に目を付けたのが中国の国家安全部と人民解放軍です。全てはそこから始まりました」
二人の刑事は信じられないという顔で目を見合わせた。
「その事件まで米国政府は台湾を親米国家だとみなしていました。その為、チップの製造を台湾大手半導体メーカーに委託したのです。私はそこの社長と何度も会いました。そして、これは殆ど知られていないのですが、台湾の法律ではチップ設計の要ともいえるマスク(チップ製造の金型のようなもの)権利の帰属は工場となっていたのです。無論、米国政府もそこまで知らなかったのです」
「ということは・・・?」
「台湾は合法的に次世代型戦闘機の要ともいえるチップ設計を手に入れたのです」
そうか、台湾調査局が日本で諜報活動しても合法なように、台湾では他人が設計したチップを基にマスク(チップの型みたいなの)を起こした工場に権利を帰属させ、技術流出を合法化しているのか。
しかし、この米国最新戦闘機技術流出事件。台湾総統の馬英九が指揮を執り、Winbond社の社長と大手半導体会社創業者が絡んでいるとは、あまりにも大き過ぎる事件だ。
「コーさん、すみません。その事件の犯人はTSMCだったということですか?」
「いいえ、犯人は一人では無い国際犯罪集団青幇という台湾に居る暴力団で、中国共産党に協力しているのです。台湾国民党は殆どが青幇に属しています。馬英九、Winbond社長焦祐鈞台湾大手半導体会社創業者も青幇の構成員なのです。台湾国民党が国策で半導体メーカーを立ち上げた時、運営は青幇に任されたからです。JSF事件は、ラファイエット事件と同じように、何百人と言う人間と政治家が絡んだ一大事件だったんです」
軍事技術流出事件には、各国の犯罪組織、企業、政治家と莫大な金が付きものだ。
「どうして、台湾調査局は日本にまで来たんですか?」
「それは、私が台湾で指名手配犯だからです」
深田はマイケルを見た。
やっぱり、指名手配は本当だったのか。
「何の罪状で?」
マイケルは首を振った。
「私が逮捕された時、逮捕状には罪状が書かれていませんでした。名前だけが書かれた白紙の逮捕状で私は逮捕されたのです」
全員が黙り込んだ。
信じられない。
台湾は一応民主主義国家では無いのか。白紙逮捕なんて、バカなことがあるのか。
それとも、マイケルが大嘘吐きなのか、妄想に取り付かれているのか。作り話にしてはストーリーは複雑過ぎるし、信じるには登場人物の名前が大物過ぎる。
「取調室で、何人もの警察官に『何故逮捕されたのか?』と何度も聞かれました。無理もない。白紙の逮捕状なんて、誰も見たことがないから警官達は、裏でよほど危険なことが起こっていると感づいて取調べを嫌がりました。即日刑事裁判が開かれ、白紙の逮捕状と中身のない書類を見た裁判官が『こんな裁判を開くことはできない』と言って、裁判を放棄して逃げ出しました。二人もです。三人目の裁判官が現れた時に彼は、『お前の罪状なんかどうでもいい。私の仕事はお前を牢屋にぶち込むことだ』と言って、有罪判決を下しました。罪は、登記された資本金と銀行残高が一致しない罪です」
「そんなの当たり前じゃない」
資本金は会社登記の時に銀行に振り込んだお金を登記するが、当然の如くつかえば残高は減る。それが罪ならば、この世の全ての企業がお縄になる。
「台湾の法律ではそうなっているんだ。気に入らない会社の社長をいつでも逮捕できるように、その法律は作られている」
「どうやって、亡命したのですか」
「牢屋に入れられる瞬間、警官が『貴方は今夜殺される。消灯時間七時までに、誰かに助けてもらってください』と言って携帯電話を渡された。集団房のなかで、たった一人自分だけが携帯を持っていた。生粋の台湾人である政治家、王金平に電話をした」
「王金平!?」
刑事たちは目を見開いた。
驚くのも無理はない。王金平は、今の台湾法務院の委員長、本法務部長だった馬英九のライバルだ。
https://ja.wikipedia.org/wiki/%E7%8E%8B%E9%87%91%E5%B9%B3
「王金平は馬の悪業に前から目を付けていたんです。だから、彼は私を助けた。王金平に牢屋から出してもらった直後、私は鞄一つの荷物で空港に向かい、アメリカに亡命したのです。その後、馬は台湾警察に命令して私に指名手配を掛けました。それが、FBIの保護下で名前を変えるきっかけになったのです。そして、先週金曜日、台湾調査局は私を探して東京まで来た。藤井一良の手を借りてです」
マイケルは刑事達を見つめた。
刑事は黙り込んだ。
あまりにも壮大過ぎる事件、日米中台と四つの国を跨り、各国の法律と条約、それらの隙間を縫った犯罪はもはや警察の手におえる範囲ではないのは明白だった。
「コーさん、こういっては何ですが、米国に帰った方が安全だと思います。日本には被害者を守るシステムはありませんので、貴方を守ることはできません。FBIに連絡したらどうですか?」
陣内刑事は口火を切った。
深田は『また、たらい回しか…』と落胆した。
「もちろん連絡はしますが、FBIは日本では台湾調査局の違法行為について捜査する権利は無いので日本の警察に相談しろと言われるでしょう」
「でも、警察は貴方が殺されてからしか動けないんです。申し訳ありませんが」
刑事は申し訳無さそうにそう言った。
警視庁の建物を出ると久保田刑事が追いかけてきて、携帯番号を書いた紙を深田に渡した。
「藤井の法廷に立つ時は、連絡ください」
日本の警察は犯罪を予防できない。そんな都市伝説はそろそろ変わるのかもしれない。
深田の運命はいかに…
続く
第17回戦追記 台湾国民党と青幇の歴史
中国には無数の暴力団、幇が存在する。幇は日本で言うところのなんとか組みたいなもので、違うとすれば複数の幇に同時に所属する事ができるところだ。
中国共産党、江沢民時代までは上海幇と呼ばれる幇の構成員が強かったが今は習近平によって一掃されてしまっている。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/上海幇
有名どころで四海幇や竹連幇などもある。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/四海幇
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/竹聯幇
四海幇、竹連幇は台湾青幇の配下の暴力団組織で、台湾裏社会を牛耳る暴力団『青幇』(チンパン)は数百年の歴史を持つ強固な幇だ。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/青幇
語られている伝説では、青幇が最も栄えたのは上海疎開地時代、杜月生と黄金栄の時代だ。暴力団が一番儲かるのは戦争だ。麻薬、売春、武器の密売、そして諜報活動。
日本の上海侵攻が成功したのは、青幇が国民党の情報を日本軍に売ったからである。今でこそ、青幇は抗日英雄と語られているが実は彼らこそが売国奴なのだ。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/第二次上海事変
青幇は決して日本軍のみを助けたのではない。彼らは日本軍を救い、共産党を救い、国民党にも協力した。
青幇が戦後絶滅したと語られているのは、国民党の情報を共産党に売ったことにより最終的に『同朋を売るのは許せない』と共産党にマシンガンで銃撃された事件があった為だ。
第二次世界大戦後、青幇は拠点を上海から香港に移動してそのまま消滅したと言われているが、実は違った。戦力の大半を失った国民党蒋介石に協力して、台湾を収めたのだ。
蒋介石は毛福梅との間に出来た息子蒋経国を嫌っていた。理由は自分が家に帰らず上海で女遊びしている間に出来たからだ。
蒋介石は蒋経国を暗殺しようと試みたが、蒋経国は暗殺を恐れてモスクワへ留学し共産主義を学んだ。元々、蒋経国は共産党だったのだが、国民党が力をつける程に共産党の監視下に置かれたので、敗戦した国民党に合流する。
しかし、蒋経国は青幇を嫌っていた。また、青幇による暗殺を恐れて距離を置いていたが、ある頃から台湾政治の実務に関わるようになる。蒋介石の孫によると、晩年の蒋介石は酷い認知症で政治どころでなかったため、長男の蒋経国が実務に携わる。モスクワで政治経済の教育を受けた蒋経国が台湾を成長に導いた。蒋経国は反蒋介石ではない事を証明するため、自分の身を守る為に蒋介石を英雄にし立てあげた。蒋介石万歳音頭はそこから始まって、万歳しなかったマイケルは11歳で政治思想犯として投獄されたという皮肉な運命だ。
蒋経国は青幇による台湾支配を嫌って、台湾人李登輝に政治を託すことを約束した直後に暗殺され、台湾政治は青幇下部組織で政治と経済を司る仁社に移行した。李登輝をしても、青幇には勝てなかった。
仁社
http://wapbaike.baidu.com/view/4617381.htm?adapt=1&
陳水扁は事実上抹殺されて、この物語は青幇下部組織仁社トップ馬英九に引き継がれていく。
続く
第17回戦追記の追記
日本ではスパイを取り締まるのは難しい。
不正競争防止法と特定秘密保護法でなんとか枠組みは見え始めたものの、企業機密を不正競争防止法で守るには立証コストが高過ぎて中小企業は利用できない。大企業が利用できたとしても、実は損害のリカバリーはほぼ不可能だ。
東芝のフラッシュメモリ技術を盗んだ実行犯は不正競争防止法違反で捕まったが、懲役五年罰金三百万円と東芝が毎年1000億稼げる企業秘密を失った刑罰としては軽いし、実行犯は盗んだ報奨金数億円の返還義務は無い。泥棒はやり得だ。
http://www.asahi.com/sp/articles/ASH395FGNH39UTIL04W.html
最終的に東芝はSKハイニックスとも和解するが和解金300億円では、収支が合わないだろう。
http://mw.nikkei.com/sp/…
事実上、日本は産業スパイも国家スパイもやり放題で、例え捕まっても刑罰も軽いというスパイ天国だ。
外事警察の話、「スパイを取り締まれない」というのは事実で、日本にはスパイを取り締まる法律は悉く野党に駆逐されてきた。そこで苦し紛れに編み出した技が、被疑者の前でわざと転んで「公務執行妨害だ!」と言って別件逮捕する必殺『転び行妨』という技だ。
褒められた手段ではないが外事がこんなしょうもない手段を取らざるをえないのは、そもそも日本の法律に不備があるからなのだ。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/転び公妨
こういう苦肉の策を警察に使わせて、冤罪問題で批判される可能性を含有するより、はっきりと情報を盗むことは泥棒だと定義すれば良い。
知的財産を不正競争防止法や特定秘密保護法では簡単に守れない原因は、警察教育にもある。
紙に書かれた大発明を盗まれても、被害届けを出す時には紙一枚の代金『1円』ベースでしか換算しない現場の警察官の価値換算基準だ。
物質主義の警察教育、もしくは、日本の教育が知的財産を守りにくい土壌を産み出し、日本企業の知的財産を蝕んで企業価値の低下を引き起こしている。
国が変わらなければ、警察が変わらなければ、気が付いた頃には日本の知的財産は丸裸にされてしまう。
1日も早い法の整備を。
第18回戦 マイケルの決意
ズズズ。
深田はオレンジジュースをすする。
普段ならカフェでは熱いカフェラテを頂くのだが、外事警察で事件について喋りっぱなしだったので喉がカラカラだ。
特定秘密保護法が施行されなければ、日本の衛星情報なんてとてもじゃないけど守られない。(2014年春当時は施行前)
マイケルが台湾調査局に誘拐されそうと被害を相談しても、アメリカみたいに被害者を守るシステムは無いからFBIに守ってくれとか、得意のたらい回しの術で煙に巻かれた。
「日本って意外と安全じゃないんだな」
考えてみれば治安は良いけど、国民を守るとか、スパイが国民を危機に貶めているという観点は無い国だ。自衛隊が戦地に赴いても銃に弾を詰めて構わないかどうか国会で議論する始末だ。
総務省の予算17兆円に対して、防衛省は4兆円と四分の一なうえに支出はほぼ人件費で貧乏省だ。防衛省は野党によってとことん冷や飯食いをさせられてるのだ。
「ラファイエット事件で殺されたフランス人は東京で殺された。犯人は捕まっていない」
マイケルはサンドイッチを頬張りながら応える。ラファイエット事件では台仏の捜査員証人含めて総勢14人が殺され、事件はうやむやになった。
「殺されても犯人すら捕まらないの?」
「警察に被害届け出したら捜査してくれるのか?」
言われてみればそうだ。
昔、友達が強姦されて警察に被害届けを出したが、その後警察からは音沙汰なし。逗子でストーカーに殺されたのは、エリの友達だ。
シンガポールでストーカー被害に逢った時、電話番号で加害者を割り出して2時間以内に逮捕してもらったと金融機関の女友達が言っていたのとは雲泥の差だ。
「FBIに相談しようよ」
「2008年の夏。馬英九が陳水扁を逮捕させた日、俺は台湾系FBI捜査官に捜査が打ち切られたと伝えられた。青幇は政治に強い。そして、警察捜査は常に政治だ」
台仏中で巨額の賄賂と引き換えにラファイエット級フリゲート艦技術を中国解放軍へと売ったラファイエット事件の犯人を追った政治家は民進党の陳水扁元総統だけだ。
「FBIも…。もうなす術が無いね」
深田はため息を吐いた。
陳水扁は病床の身でありながら投獄されて、治療も受けられない苦しみから自殺未遂までした。馬英九が総統である限り、事件の捜査は再開されないどころかマイケルが台湾へ帰る日もこないだろう。
「深田、どうしてまた会社を始めたか分かるか?」
深田は首を傾げた。
「昔、台湾で公開企業の社長だった俺は充分な金があった。中国スパイに付きまとわれて、オフィスは襲撃され、400以上あった特許は米国最大の弁護士事務所に俺のサインを偽造されて失い、結果的に20億円近い借金を背負うことになった。五つあった家を売り、借金を全額返した頃にはホームレス寸前だった。FBIに相談した頃といえば、俺の技術を証明しようにも特許もなく、製品も破壊された後だった。台湾系捜査官が俺に放った言葉は、『マイケルさんの技術が本物だと証明するべきです』だった。偽物呼ばわりだ。ところが、自分が本物であることを証明する為に、またチップを開発しようにも金が無かった。チップの開発は金がかかり過ぎる。開発どころか、生活するだけで精一杯だった」
凄惨なシチュエーションだ。
自分だったら、たぶん絶望して自殺してるだろう。
「捜査が中断になってしばらくして、自宅に手紙が届いた。米国特許庁が、偽造サインで取り消された俺の米国特許数十を返還してくれのだ。特許史上、取消した特許が返還されたのは初めての事件だ。この特許をすぐさま売りに出した。すぐにパテント・トロールから連絡が来て、10特許で115万ドルの値段が付いた。おとなしく生きれば死ぬまで特許で生きていけることは確実だった」
「でも、そうはしなかったのね」
「俺はその金で元の会社のトップエンジニア2人を呼び戻して研究所を作った。金だけあって朽ち果てていくなら、俺は自分が本物であることを自分で証明する。それだけのことだ」
深田はハッとした。マイケルの技術が市場に出回ると困る人物がいる。
「マイケル、それだよ。マイケルの技術が市場で出回ると馬英九は困るんだよ。だから、藤井を使って製品化の妨害をしたんだ」
アルファアイティの藤井はマイケルから依頼された製品化用ソフトウェアをいつまで経っても作らなかった。その意図は、市場にマイケルの製品を出さない為だ。
瞬間、深田の携帯が鳴った。
「萌絵さん、大変です!」
エリの声が震えている。
「大変、大変って、なんなのよ」
既に大変過ぎることが連日起こっている。
「依頼していた基板設計の納品がなされませんでした」
「な、納品されなかった?」
「やられた、基板が無いと製品ができない。オフィスへ戻るぞ」
2人はカフェを飛び出し、オフィスへと急いだ。
深田の運命やいかに…
続く
第18回戦 追記 特許攻防とパテント・トロール
マイケルはパテント・トロールに特許を売った金でまた戦いに挑んだ。
パテント・トロール
パテント・トロールは、特許だけを保有している会社で多くの知財系弁護士を抱えている。売上は主に特許収入、トロールと言われる所以は大企業に対して特許侵害訴訟を起こして収入をえているからだ。
一方、マイケルのような個人発明家は自分で訴訟する費用が無い。だから、使わないならパテント・トロールに売った方が役立つのだ。面白いのは、侵害されている特許ほど高値が付くシステムだ。
パテント・トロールに特許売却で得た資金115万ドル。1億円以上の金だが、チップビジネスを始めるには充分とは言えない資金だ。
それでも、彼は挑んだ。
プライドなんだろうか。
トレーダーも同じだな。
知人のオプショントレーダーは全財産失ったあと、アメックスカードのキャッシングで三百万円引き出してまた億にした。
人間は何をして、どこで生きるのか。
生まれた時から、もしかしたら、決まっているのかもしれない。
第19話 四面楚歌
「サーキット社(仮名)から納品されなかったってどういうこと!?前金は払ったんでしょ?」
オフィスに戻るなり深田は大声をあげた。
「はい。払ってます。さっき設計が届いたんですけど、全部PDFで納められてデータでは無いんです」
「やられたな。紙ベースで納品されてもシミュレーションも掛けられないし、設計データ流し込みもできないな」
マイケルはソファにもたれかかった。
「元請け会社S社の部長とサーキットを呼んで話し合ってくる」
「無駄だ、深田。これも共産党だ」
マイケルはため息を吐く。
「マイケル、共産党スパイの仕業だって決め付けられないし、やってみないと分からない。私は諦めない」
証拠が無いので、そうだとは言い切れない。
「時間の無駄だから俺は行かない」
「じゃあ、エリちゃんと留守番でもしてて!」
深田はS社にサーキット社を呼び出し、車のエンジンを掛けた。
大田区にあるS社ビルに入り、部長に会議室へと通されると既にサーキット社取締役が座っていた。
「おまえが深田か。うちの設計が紙切れだとか文句言いやがって、名誉毀損で訴えてやる!」
取締役が大声を張り上げて、バシンと机を叩いた。
「いったい設計がPDFで何が悪いんだ?言ってみろよ」
「PDFだとデータがシミュレータに流し込めないじゃないですか」
深田はオドオドしながら答えた。開発会社を始めたが、自分は金融が本業で技術は専門外だ。
「それはお前に技術が無いから、紙切れで理解できないんだろうが」
相手は凄んで来た。まるで、まともな企業人だとは思えない。
「いまから技術の者を電話で参加させます」
そう言って、深田はマイケルを電話で呼び出した。
「PDFで基板焼くメーカーがこの世のどこにあるんだ?チップのグレードも相談せずにコピーチップ乗せてどういうつもりなんだ?」
マイケルも興奮してか声が荒くなる。
「ハァ?何言ってんだよ?英語で喋るな。バーカ!それに、うるせーんだよ、この外人!バカなんじゃねーか?訴えたかったら、訴えてみろ!契約書も何もサインしてないんだからな!ハーッハッハ」
そう言ってサーキット社は去っていった。
「あの態度、俺がいなかったらどうなったんだ?」
さすがに元請け会社の部長も呆れ果てた。そりゃそうだ。女だけなら、もっと苛められてたかもしれない。
「ところで、深田社長どうするの?基板開発」
「心当たりが数社あるので、すぐに相談してきます」
そう言って、深田は部長に会釈してビルを出た。駐車場に向かう足が思わず早くなる。
「もしもし。今から私、大手基板メーカーに行くから、エリちゃんもすぐに基板設計会社片っぱしから電話して!!」
深田は、電話しながら車のアクセルを踏み、赤坂へと向かった。
一社だけ心当たりがあった。
金融機関時代に上場企業を何社か訪問したが、その中の一社が基板メーカーなのだ。最初からそこに発注すれば良かったのだが、ちょっと変わった会社なので避けていた。
「しょうがない。会長に頼んでみよう」
思わずネイルを噛んだ。
車を停めて、ネオンの雑踏を通り抜けて、基板メーカーのビルに入る。男が数人入り口で座って酒を飲んでいるが、このビルの一階はバーになっているのだ。
「すみません、会長いますか?」
バーで深田はバーテンに声を掛けた。
「どちら様でしょうか」
すぐさま、礼儀正しい男性が出てきた。
「あの、株女が来たとお伝えください」
当時、証券会社に勤めていたので、株女と呼ばれてたのだ。
スーツ姿の男はインカムで誰かと話すと、「こちらへどうぞ」と二階へ通してくれた。
二階の事務所は7時も過ぎているので、既に真っ暗だった。ただ、男性がリモコンスイッチを入れると、壁が開いて奥からカウンターバーが現れた。
「おお、株女。どーした?」
会長が隠し部屋でバーボンを嗜みながら葉巻を燻らせてる。気のいいおじさんだ。仕事じゃなかったら会わないが、何回会っても怖い。
「会長、サーキットにやられまして。基板作って欲しいんです」
「なんだよ。サーキットは俺の子飼いだよ」
「苛められてるんです!!お願い基板作って!」
「いくら払う?」
「1800!」
「安い!3000くらい出せよ!」
「お願いお願い会長!」
「おまえ!一回もやらしてくれなかったのに、なんで俺がお前に割引しなきゃいけないんだよ!」
男って、すぐこれだ。何かあったら、すぐにヤらせろだ。
「あ、会長。この女ですか?『金持ちか知らないけど、女に使わなかったら貧乏と一緒よ』って言って会長をフった失礼な女は」
オールバックのスーツの男が会長に口を挟んだ。因みに、その都市伝説の女は私ではない。
「もう、会長。お仕事ですよ!」
深田が不貞腐れた。
「深田、EイコールMCの二乗知ってるか?」
会長はチラリと深田を見た。
「なんですか。相対性理論でしょ?」
数学なんて飽き飽きだと深田は答えると、
「おい、おまえら。このバカ女が相対性理論知ってて、なんでお前ら知らないんだよ」
と周囲の幹部を一蹴した。
「おい、株女。その仕事、やってやるよ。その前にサーキットと話付けないとな」
会長は機嫌良く葉巻の煙を吐いた。
オフィスに戻るとエリがニコニコして深田を待っていた。
「萌絵さん、三社に電話しましたが、三社ともやりたいって仰ってくれました」
「ホント?こっちも上場企業に頼んできた」
「これで一安心ですね」
エリは大きな瞳を細めて笑った。
「なんか、酷い目に遭ったけど、軽く飲んで気分転換でもするか」
夜も既に8時半を過ぎている。そういえば、お腹ぺこぺこだ。
乾杯とワイングラスを鳴らして、二人は一口飲んで同時にため息を吐いた。とにかく疲れることが多過ぎる日々だ。
深田は今日起こったことを順にエリに説明した。エリは仕事上の相棒だが、殆どの時間を一緒に過ごすので親友みたいなものだ。
「なんですか、その壁の後ろの隠し部屋が会長室って!ヤ◯じゃないですか?」
エリが声を上げる。
会社の一階にボディガード、インカムで連絡を取るスーツの男、葉巻を燻らせてる会長、突っ込みどころ満載だ。
「一応上場企業で、ヤは上場できないのが証券業界のルールなの」
ルールではそうなっているが、実際適切に運用されているかはナゾだし、そこは深田の責任範囲外だ。
「こっちも三社が明日見積もりくれるって言ってるので、安心です」
そう言いながら、エリはスマホでメールチェックをする。彼女は女性にしては珍しく、プライベートより仕事が大事なタイプなのだ。
「萌絵さん、大変です」
「なに、今日の大変はお終い!」
深田はソーセージをかじる。
「今日、見積もりを依頼した三社が全て取引断ってきました」
「な、なに?」
慌て深田は自分の携帯を見ると会長からメッセージが入っていた。
『サーキットと話した。基板は作らない。裏切られるお前が悪い』
「なんですか、これ…」
エリが深田の携帯をのぞき込む。
「エリちゃん、今日問い合わせた会社に理由を聞いて」
エリはすぐに営業マンの携帯へとかけた。
「あの、今日のお見積もりの件なんですけど…」
「あ、あ!う、うちはね、オタクの仕事なんか受けられない!この業界、会長に逆らったらお終いなんだよ!二度と連絡してくれるなぁ!!ガチャン」
裏返った営業マンの声がスマホから響くのがこちらまで聞こえた。
「萌絵さん…」
「なんなんだ、うちと取引するなと脅されたのか?」
今日、サーキット社から納品がされなかった。他の会社に頼んだ。それだけのことだ。
営業マンが何をそんなに恐れていたのか、こちらには分からない。
「この『裏切られるお前が悪い』って、これこそどういう意味なんでしょう」
不気味がるエリ。
何もかもが既に理解の範疇を超えていた。
会長からのメッセージが、何を意味するのかも。
深田の運命やいかに…
続く
第19話追記 基板メーカーとパチンコ業界の闇
私たちが使うほぼ全ての電子製品には電子基板が入っている。そう、パソコン開けたら入ってるあの緑の板だ。
あの緑の板には黒い石が乗っている。
それが、チップだ。
チップは単体では使えない。電気を流す必要ががあるからだ。そして、電気は緑の板に付いてる電源から回路に沿って流れていく。
かつて、日本では基板メーカーも栄えていたが、長年の不況で主なお客様はパチンコ屋さんになってしまった。
そう、大企業の子会社になるか、パチンコと繋がりが無ければ、基板屋は食っていけなくなってしまったのだ。そして、パチンコと言えば、朝鮮半島の資金源。中小の基板屋は、パチンコ関連の大手基板メーカーに睨まれると、仕事も無いしブラックに脅されてすくみあがってしまう構図が出来上がっている。
サーキットはちょいと違う。
ある雑誌の記事を読んだら、サーキット社が名指しで記事になっていたのだ。
サーキットに仕事を頼むと、何故か突然中国から先に類似商品が出るという事件が発生しているようだ。
何故か、ここに来て、これまで中国共産党と戦っていると思いきや、中国朝鮮連合軍からの攻撃に遭っていたのだ。
冷静に考えると、アルファアイティ藤井の梶原弁護士は社民党福島みずほの夫の同志なので、最初から解放軍と朝鮮半島は結託していたと考えてもおかしくなかったが、森川紀代弁護士から「梶原弁護士は共産党員だ」と不確かな情報を与えられていたのでそこまで思いつかなかったのだ。
しかし、あまりにも日本国内に敵が多過ぎる。
第19話追記② 日本の株式市場
私がアナリスト時代に行なった調査では日本の株式市場に上場している企業のうち、軽く数百社は実態不明の会社が存在している。
あと、上場審査が緩い時代に反社会勢力チェックを殆ど受けずに上場した企業も、まあまああるようだ。ライブドアショックの後は、厳しくなったので怪しい企業が上場できなくなってきた。
発見方法はシンプル。
企業から発表されるIR資料を読んでいると不審点が出てくる。取引先の電話番号が繋がらなかったり、変な会社と提携してたり、知的財産の出処が不明瞭だったりと色々出てくるのだ。
この手の怪しい会社は裏に仕手屋が付いているので、たまに株価が爆上げするので好きな人は好きだけど、すぐに化けの皮が剥がれて実態価格に近づくのは見えてるのでタッチしないことにしている。
株式投資から始めて、世の中に出ると色んな企業の人が「うちの会社、知りませんよね?」と控えめに挨拶してくれるのだけど、私の回答は「IRに会ったことがある」か「株を買ったことありますよ」と答えることが多い。
今は自分の会社に全力なので上場株に手が回っていないが、余力があれば防衛関連の株を迷わず買ってただろう。
第20回戦 ファーウェイ再び!
「被害届けは受理できません」
警察官に冷たく言い放たれて、深田はがっくりきた。お馴染みの中央警察で、サーキットから納品されるべきものが納品されなかったことを相談していた。
「でも、納品日に納品されるべきデータが、データではなくて紙切れだったんですよ。詐欺じゃないですか」
「紙切れでも納品物がある限り、詐欺には当たりません」
「何百万円も払って、紙切れ納品で詐欺じゃないんですか?」
深田が食い下がる。
「対価が存在する限り、詐欺ではありません」
「じゃあ、ダイヤ買う為に何百万円払って、ガラス玉だったら詐欺じゃないんですか?」
「関係無い話をしないでください。被害が無いので被害届け受理できません」
深田はため息を吐いて、警察署を出た。相談すればするほど、虚しくなってしまった。どう考えても損害が出てるのに、警察に損してないと言い張られてしまってはどうしようもない。
「萌絵さん、お帰りなさい。どうでしたか」
エリが明るく迎えてくれたが、深田は黙って首を横に振った。
「エリちゃんは基板メーカー見つかった?」
エリも首を振る。基板メーカーが見つからなければ、納品が危うい。
基板屋が一番儲かるパチンコ業界との繋がりの深い大手が既に裏から手を回しているようだ。しかし、藪蛇どころか自ら地雷を踏みに行ったようなものだ。
「サーキット社が中国と繋がってるなんて、外から全く分からないよな」
次から気を付けようにも、資本主義社会なのに資本関係は外から全く分からない仕組みになっているから気の付けようがない。
「深田、これを見ろ」
マイケルがある企業の会社概要を見せてきた。
「なにこれ」
「サーキットが取引しているシリコンバレーの会社だが、取引先を見ろ。中国で軍事衛星を作っている会社だ」
「軍事衛星…」
深田は、脅してきた大手基板メーカーのウェブサイトを開けると、そこにも衛星関連開発事業と表記されてる。
「解放軍の軍事衛星開発企業と提携している会社が、日本の大手基板メーカーの衛星関連部門の下請けだとすると悲惨だな」
「どういうこと?」
「最先端技術の試作機は必ず基板開発が入る。ところが日本の基板メーカーが解放軍と組んでるとはな。日本も脇が甘い」
深田はため息を吐いた。最近、ため息をつきっぱなしだ。
「萌絵さん、大変です」
受話器の口元を押さえながらエリが深田を呼ぶ。
「毎日大変大変言うなぁ!」
深田がキレ気味に答える。
「元請け会社から、基板が作れないなら納期が危ういので、ベンダーを差し替えたいとのことです」
「た、大変だ!」
「とにかく、S社の部長が今から来るそうです」
時計を見ると既に8時だ。
「じゃあ、俺は時差で眠いから帰る」
「あ、マイケル。帰っちゃうの?」
「俺の仕事は開発。ビジネスはお前。そう決めたのはお前だろ」
確かにそうだ。マイケルが営業に出ると、お客様の欲しいスペックの千倍くらいの提案をするので、お客様から「弊社は宇宙船を作りたいわけではございません」と断られてしまう事件が続発した。
財務を見る予定だった深田が営業に出ないと売上が立たない所以だ。「じゃあな」と言ってマイケルは去っていった。
「相変わらず、宇宙人な奴だ」
「日本語分からないですから、いいじゃないですか」
エリは深田をなだめる。創業当時から、ほぼ毎日一緒にいるエリはいまや深田の大親友だ。そうだね、と言って深田も笑みを見せた。エリが居れば、なんでも乗り越えられる。
S社の部長がやってきた。国家研究所の3次元動画伝送装置の元請け会社だ。特殊な装置で、1ラックのサーバーで100チャンネル以上の動画を同期させて伝送するという技術的に難しいシステムだ。国内大手メーカーがこの装置開発を悉く断ったのだが、マイケルはアッサリと「簡単にできる」と答えたところからこの仕事ははじまった。
「深田社長、新しい基板メーカーは見つかりましたか?」
部長は高卒の暴走族上がり、一見優しそうだがたまに目の奥がキラリとするどく光る。
「いや、それがまだ少し…」
深田は口籠った。国内大手基板メーカーが敵側に回り、ありとあらゆる取引先を脅して回っているなんてとてもでないけど言い出せない。
「深田社長ね、御社の開発が納期に間に合わないなら代替案があるんですけど、うちの取締役が長年ある企業の日本支社長と友達で偶然御社と似たような製品があるって言うんですよ」
「そんなはずない!」
100チャンネルフルHD動画から三次元映像を作るシステムなんて、研究所以外需要はない。
「ここに、その製品概要があります」
パサリと捲られた資料に、大容量動画伝送装置の概要が描かれていた。
「オタクのにソックリなのがあって良かったと、うちの取締役も喜んでましたよ」
そんなバカな。
こんな特殊なシステム、動画技術最先端のNHKのベンダーですらソリューションを持ち合わせていない。
深田はページを捲り、このソリューションのベンダーを探した。
開いた花びらのロゴマーク。
これは、紛れもなく。
「フ、ファーウェイ!?」
深田とエリは声を一つにして叫んだ。
深田の運命やいかに!?
続く
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/華為技術
第20回戦追記 ファーウェイパワー全開な件
うちが共同研究しようとしてた先の三機関全てに現れ、
サーキットに働きかけてかうちの設計仕様を持ち逃げして製品作らず、
取引先の基板メーカーへの絶大なる影響力を持ち、
うちが国家研究所(仮名)に納品しようとしていた製品ソックリなのを作り、
うちの元請け会社ち持って現れたファーウェイ。
因みにファーウェイは通信の会社であって画像の会社じゃないのに、光学研究のうちの共同研究先に現れたり、国家研究所の動画伝送衛星実験で突然現れたのかは説明がつかない。技術的に全く異なる分野だ。
ファーウェイに関するネガティヴな報道を行なった出版社には、すぐに内容証明などで抗議したり、訪問して圧力をかけ、逆に良いことをかけば莫大な広告費を払うと持ちかける飴と鞭戦略に日本のメディアはとことん翻弄されてる。
仕方ないのだ、ファーウェイの創始者任正非は解放軍時代、国家中央軍事委員会主席の鄧小平の発案で華為を始めた。鄧小平は、その他に解放軍に三社創立させたが2社倒産し、残ったのは華為と中興のみとなった。
アメリカでは元CIA長官マイケルヘイデンがファーウェイはスパイだと議会で名指しで激ギレし、政府調達でファーウェイ製品を使うのは自粛することになった。
日本でのファーウェイ浸透力は圧巻で、既に携帯基地局の過半をファーウェイが占めたところだ。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/任正非
第20回戦追記② 日本の警察とFBI
日本の警察には散々相談しているのに、私の物語を読んでる人はその対応に驚かれるかもしれない。
⑴中国スパイを取り締まらないのは、別に警察が悪いとかでもなくて取り締まる法律が無いのが一番の理由です。これを何とかするには、反スパイ法に反対した議員に票を入れず、賛成派に入れることしか国民にはできない。
⑵知的財産や無形資産を盗まれても被害が受理されない件。警察は民事不介入を盾に取りますが、それはやり方によっては間違い。知的財産を盗むと不正競争防止法違反に該当し、刑事罰も発生します。いま、うちがアルファアイティーシステムを不正競争防止法違反で訴えているのがそれです。これは民事裁判ですが、刑事告訴して受理されたら刑事罰が伴います。しかし、不正競争防止法違反は立証が難しく、東芝もSKハイニックスがコピーして利用していることを立証するのにハイニックス製品を解析するのに数十億円くらいの莫大な費用が嵩んだと言われてます。
アメリカでは民事裁判でディスカバリーというシステムがありますが、このシステムを使うと原告被告どちらも裁判所の求めに応じて情報開示する義務があります。日本の裁判のように悪意を持つ人間が自分に不利な証拠を隠し難いようにできてます。
⑶警察官になるのに勉強する法律の範囲がFBI捜査官より狭い
知的財産を盗まれても設計図面紙1枚1円の被害ですねと言われた時は倒れそうになりました。
アメリカでは知的財産の価格は参照価格として、類似特許や技術などの市場価格を参照します。それをやらないから、日本では産業スパイが日米技術を盗む格好の場所としてターゲットにされてます。
また日本の警官は、憲法、刑法、刑事訴訟法、警察官職務執行法などを学んでいるようですが、FBI特別捜査官の過半数は弁護士の資格を持っていて犯罪をカバレッジできる視野が広いです。
日本の警察、所轄の両さんとかと取り扱う犯罪がFBIとはレベルが違うのでしょうが、それでは私の事件は誰に相談したらいいのでしょうか。
そして、この物語、色々と助けを求めてみましたが、中国スパイや中国から利益供与受けてる人間の人数が多いのと、中国スパイなんて冗談やめてみたいな人も多いので、被害は拡大する一方でヘルプレスな状態です。
誰か助けて´д` ;

第21回戦 エリ、副社長へ
ファーウェイ事件、アルファアイティ事件等が相次いだ為、マイケルが社長を降りてエリが副社長になることになった。
中国スパイからの執拗な攻撃からマイケルを守る為、シンガポール人の株主がそう勧めてくれたのだ。
「これで、いつでもエリちゃんと一緒だ!」
深田はエリが役員になったことが嬉しかった。これで、大手取引先の役員との会食で肩書きを理由にエリを外されなくても済むようになった。
「萌絵ちゃん、私、ちょっとS社さんと打ち合わせしてきますね」
そう言って、エリは夕方出掛けた。
しかし、このプロジェクトのリーダーであるS社の役員がファーウェイ社長と友達だったとは、国内におけるファーウェイの浸透力は普通ではない。
S社なんて、どう見ても国内ドメスティックな会社なのにどうやってファーウェイなんかと繋がったんだろう。
S社ウェブサイトを見ると、保利集団と中国で提携したとの発表が出てきた。
「マイケル、S社が中国の会社と提携してる」
「保利集団? 中国最大、人民解放軍の物流会社だぞ」
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/保利集団
保利集団は鄧小平が始めた軍事ロジスティクスの会社だ。
物流は軍事の要。中国のように広大な土地では物流を絶たれると軍隊はあっという間に弱体化する。
「それがどうして日本の物流と…」
「どうやら、中国共産党は水面下で日本国内でテロ活動を行う時の為に、日本国内の物流を抑えたようだな。これで、中国共産党は武器でも物資でも何でも日本中のテロリストに届けることができるぞ」
マイケルはやれやれといった調子で、もう遅いからと言って帰っていった。
午後八時。そのS社に行ったエリが戻ってこない。もう四時間だ。
エリの携帯にかける。
「もしもし、萌絵ちゃん?いま、S社の人とご飯食べてるんです」
携帯の向こうからは役員の声も聞こえる。
「エリちゃん、役員の人も一緒じゃないの?」
「あ、そうなんですよ。お祝いしようって突然誘ってくださって」
「あのさ、取引先の役員に会うのに、一言もないの?」
「あ、もう戻りますから」
彼女はそう言って電話を切った。
カツカツ、白く縁取られたフレンチネイルでキーボードを叩く。そろそろ10時前だ。いくら何でも遅すぎるだろう。
「萌絵ちゃん、ただいま」
エリが戻ってきた。いつも通り、白い歯を見せて笑っていた。
「なんで、私がいない時にS社の役員と会ってるの?普通、事前に言うでしょう?」
思わず口調がキツくなる。、
「知らなかったんです。いきなりいらっしゃったから」
いきなり来たにしても、長過ぎるだろう、と深田は言い掛けたがエリの言葉に遮られた。
「疑うなんて、酷くないですか?萌絵さんらしくない」
そう言われて、深田はハッとした。
何年も仕事を支えてくれてるエリを疑うなんて、どうかしている。
深田は一瞬目を落とした。
「エリちゃん、ごめん」
深田はエリの痩せぎすの肩に手を置いた。エリはバシッと深田の背中を叩いて、もえちゃん疲れてるんだから休んで、と答えた。
その日の夜、深田はベッドで天井を見つめた。
ファーウェイに付きまとわれ、早稲田の同級生に訴訟され、企業を装ったインテリヤクザに脅されて精神的に参ってるのはある。
だからと言って、三年支えてくれてる仲間を疑うなんて、自分はどうかしている。
深田は眉間に皺を寄せて瞼を閉じた。
そうだ、きっと疲れてるだけだ。
続く

第21回戦 追記 エリちゃんと私
エリちゃんが大好きだ。
ミスコンクィーンの孫で、従姉妹はグラビアアイドルと美女家系だ。
それだけでは普通の美女なのだが、エリちゃんは根性があった。
20歳でピースボートで世界一周し、22歳で学生起業し、五年間自分で会社経営しながら元カレを事実上養い、会社が傾いてきた頃にはシャンソンバーでバイトしながら経営をしてきたど根性ガエル系の美女だ。人生の底を見ている感じが、一緒に何かを乗り越えられる人だと感じさせられた。
採用面接の後、私は彼女に断りの電話を入れた。
端的に英語力が足りなかったのだ。
ところが彼女は食い下がった。
給料安くていいから、萌絵ちゃんと一緒に仕事したい、彼女はそう言ったのだ。
感動したのだ。
創業以来、彼女はほぼ休み無しで私を支えてくれ、毎日食事をし、本当の親友ができたと私は感じた。
それが、私から見たエリちゃんだ。
第21回戦追記 飴と鞭に飼い慣らされる日本人
ここまでで、成りすまし日本人(中国人)だけでなく、パチンコ利権系の在日朝鮮人系、ついには日本のトラディショナルな暴力団のフロント企業S社、純日本メーカーのプリント工業までもが中国共産党側に媚びている。
S社の部長は、噂通りもれなく暴走族上がり。S社は中国での運送業務拡大と引き換えに解放軍ロジスティクスと組んだだけでなく、日本での諜報活動にも加担している。
プリント工業は何故加担したか。
実はプリント工業は関連会社が中国にある。
中国に会社を置く外資企業は中国共産党の要請に応じなければ刑罰が待っている。その代わり、協力すれば経済的メリットが得られる仕組みだ。
しかし、協力者が多過ぎる。中国得意の人海戦術に翻弄されているのだ。
https://ja.m.wikipedia.org/wiki/国防動員法
第23回戦 ベンチャーキャピタリスト
「そろそろファンドレイズ(資金調達)するか」
マイケルがそう切り出した。
この会社を立ち上げる時、深田がシードマネーを準備し、エンジェルからファーストステージの資金調達を行なった。
「この次はベンチャーキャピタルだな…」
深田がベンチャーキャピタルを避けてきたのは、ベンチャーキャピタルは企業を潰すケースがかなり多いからだ。
銀行系は融資並みに資産を要求するし、企業系VCからの出資は独立性が保てなくなる。保険系は不要になった株を暴力団に転売したりするという結末になることもある。
深田にとっては、投資詐欺よりも投資する詐欺師の方が怖いのだ。投資詐欺は金を取るだけだけど、投資する詐欺師は会社を乗っ取り金も事業も技術も社員も盗んでいく。しかも、弁護士も付けたうえで法律スレスレに騙してくるので訴訟も大変だ。
「それに、技術が理解できるキャピタリストが殆どいないんだよね」
以前に政策投資銀行のビジネスコンテストに出てファイナリストまで残ったが落選した。理由はディスプレー製品が無いからという勘違い甚だしいものだった。うちはチップ設計だと何度も説明したのにと、コンテスト会場で揉めて、最後に舞台裏で政策投資銀行の社長が「審査員が技術音痴ですみませんでした」とお詫びまでしてくれたのだ。
http://www.dbj.jp/…/dbj_news/2012/files/0000010265_file1.pdf
別に政策投資銀行だけが技術音痴な訳ではない。
今の投資トレンドは技術よりもサービスが主流なので、難しいハードウェア設計に投資なんかはしないのだ。
ベンチャーキャピタル選びは難しいのだ。
「もえちゃん、Googleに会社を売ったロボット技術のKさんがファンドを立ち上げ他みたいです」
「え、あのKさんが!?」
Kさんといえば、ロボット技術で有名なベンチャーで会社をGoogleに売却して、一躍時の人になった。
「うちの技術、ロボットアイに組み込めるから会いたいな」
そう思い深田は246キャピタルにメールをしたが返信は無かった。
ま、仕方ない。
そう思いながら、金融機関時代の先輩が六本木ヒルズで開くランチ会に参加してシャンパンで乾杯をした。
「カンパーイ!!」
久々にシャンパングラスを握った時に気が付いた。華やかな外資金融から、地味なモノづくりへと自分は変わったのだ。いや、意外と性にあってるかもしれない、なんてことを考えていた。
「深田ちゃん、何を深刻な顔してるの?オトコに困ってるんでしょう?」
金融機関史上最も美しいと呼ばれた先輩がニコニコ笑っている。
「あ、イヤイヤ。オトコに困ってるのも事実ですが、ベンチャーキャピタル探しにも困ってるんですよ」
深田は弁明した。
「あら、その2つの課題を同時に解決できるゲストが来るわよ」
先輩はプププと含み笑いをする。
「あ、お待たせしました」
小洒落たスーツにサングラスを掛けた30代の男が現れる。端正な顔立ちからは、ストリートスマートな雰囲気が漂ってる。
「こちら、深田ちゃんよ。自己紹介宜しく」
先輩がそう言うと男は口を開いた。
「246キャピタルのコ・ファウンダー(共同創始者)の伊東大地です」
「ええ!?」
深田は驚きで声を上げた。Kさんでは無かったが、その共同創始者が現れた。
昔、母さんに言われた事がある。
『お前の人生って良くできてるわね。必要な人が自動的にタイミング良く現れて』
深田の運命やいかに…
続く
第23回戦追記 ベンチャーキャピタルの罠
起業した時に最も起業家が嵌る罠はベンチャーキャピタルだ。
まともなベンチャーキャピタルは、かなり少ないのだ。
大企業系から投資を受けると、その系列でしか仕事ができないなどの制約を受けるので企業系の投資を受けるとサラリーマン状態に逆戻りだ。
系列がたくさんある大企業はまあまだマシで。
学生起業家に投資するベンチャー企業があるけど、数百万円の投資で株の過半数を取られて数年ほどただ働きした果てに根を上げてそこのサラリーマンになるという仕組みになっている。
最悪なのは、ベンチャーキャピタル自身がブラックで出資を受けると上場時の反社会組織審査でVCからの出資を受けたことを理由に弾かれるというケースだ。
あとはベンチャーキャピタル風のハイエナファンド。
「投資するから資金繰り表を出せ」
と言って資金繰りを見て倒産するまで出資せずに、倒産後「助けてあげるよ」と二束三文で会社を全部買って海外ファンドに高額で売り付けるというスキームだ。
金融業界におけるストリートスマート、頭の良さは少ない投資でどれだけ稼ぐかということに尽きるのだ。
さて、本物投資家と偽物投資家の見分け方だ。
本物投資家は株価を交渉しない。
本物投資家はパーセンテージに拘らない。
本物投資家は大量の資料を要求しない。
本物投資家は一回のミーティングで投資を決める。
何度も会わないと、もっと資料をくれないとわからないとかいうのは、投資家ではなくて何かを企んでいる人間なのだ。
第23回戦 ベンチャーキャピタリスト②
流暢なLAアクセントが利いた英語。
光沢感のあるイタリア製のスーツに程よく焼けた肌が輝いている。それが246のキャピタリスト。どこからどう見てもかっこいいのだ。
「御社への投資には、条件があります」
「なんですか?」
深田だけでなく、マイケルとエリにも緊張が走った。
「深田さんとエリさんを取締役から降ろすこと。もう少し見栄えのする経営陣をハーバードから僕が引っ張ってきますから」
キャピタリストは眼光鋭く応えた。
エリは普段のニコニコ顔がサッと曇った。それはそうだ。資料もたくさん作ってきたし、自分は副社長になったんだと周囲にも伝えて頑張ってきた。キャリアは彼女の誇りなのだ。
逆に、深田は、降りろと言われて、ショックよりも何処と無く肩の荷が下りたような気がした。原発事故や津波被害の為にと思って、この技術を日本で展開しようとしたけど何年もスパイやらインテリヤクザやらから厭がらせをされて正直参っていた。若くしてまぁまぁ稼いだ。それでいい気になって、自分は何でもできると勘違いしてこの会社を始めたのは身の程知らずだったのではと感じていた。
二人はお互い異なる気持ちでマイケルを振り返った。
「取締役?エリは降ろしてもいいよ。深田はダメだ」
その場にいる全員がマイケルの言葉に凍り付いた。キャピタリストも想定外のマイケルの反応に言葉を失った。
深田はチラリとエリを見た。エリが副社長になってから、前に出過ぎないように気を使ってきた。なのに、マイケルは、深田が一番言って欲しくない台詞を言ってしまったのだ。
翌る日、エリは会社に来なかった。
数人しかいない会社は、一人いないだけでガランとする。
「マイケル…なんであんな事言ったの?」
深田は、イヤホンで音楽を聴いていたマイケルを突いて問いただした。
「そう思い付いたからだ」
マイケルはイヤホンを少しズラして、こともなげに応えた。『三年間一度も休んだ事のないエリがいないのに何とも感じないのか?』深田はカッと来る。
「エリは、この会社を愛してるのよ!会社の為にあんなに頑張ってるのよ!どうしてそれが分からないの?マイケルは人間の気持ち、分からないの?」
「会社の為?ハハ、それはどうかな。お前は人間の気持ちも考えも分かっていない」
マイケルはそれだけ応えるとイヤホンをまた付けて、設計の世界に没頭した。
数日後、深田は書類を持って246キャピタルに向かった。
「おはようございます」
見慣れない妙に若い女性が深田を迎えた。
「あれ?」
「あ、すみません。インターンなんです」
「そうなんですか。お若いですね」
「20歳です」
色白の肌に大きな瞳、一瞬タレント事務所に所属してるのかと思うくらいの美人だった。
「どちらの大学ですか?」
「ふふ。しょうもない大学なので言えません」
ん、と深田は思った。インターンなのに大学名を隠すだろうか。
「へー、どこに住んでるの?」
「歩いて40分くらいのとこです」
彼女は愛想よく笑った。
深田は奇妙な感覚を感じながら、ミーティングルームの席に座った。
「深田さん、どうも」
イケメンキャピタリストが現れた。
「投資の条件に、売上の1割をうちに払うという契約書にサインして欲しいんです」
「ええ?」
株式投資にリターンを保証するのは、明らかな金融商品取引法違反だ。
「すみません、金商法…」
「あ、もちろんです。金商法には引っかかりたくないので、契約書は投資契約と顧問契約の二枚に分けます」
それがストリートスマートだと言わんばかりにキャピタリストは笑った。
キャピタリストの隣に例のインターンがチョコンと座っていた。
ふと見ると、彼女が服の上からキャピタリストの股間を触っていた。
「あ、深田さん。この子?いいでしょ。清純で。すごく癒されるんです」
彼女は深田を上目遣いで見つめる。いかにも「深田さんもどう?」と言わんばかりの挑発的な瞳に口元には笑みを浮かべている。
「あ、すみません。今日は忙しいので、こんなもんで」
深田は慌てて荷物を片付けて、トンズラこいた。
『ヤバい。かなり斜め上からの攻撃だ』
あの20歳の美人は、中国からのハニートラップだ。間違いない。
大学名も応えない、歩いて40分くらいのとこに住んでるとかいう謎の女がまともな女の訳が無い。
「マイケル!!キャピタリストのとこに、ハニートラップがいて!股間触ってた!!どうもそれは清純らしい!」
深田はオフィスに戻るなり、英語でそう叫んだ。
「ハニートラップか。俺の行くとこ行くとこに、ハニートラップやらジゴロトラップやら現れて、世の中忙しいな」
マイケルはパソコンモニターを見つめたまま、深田を振り返りもせずに応えた。
深田はエリに電話をした。
「エリちゃん、投資断った。エリちゃんがいないと会社が回らない。良かったら、また来てくれないかな?」
電話の向こうでエリがクスクスと笑う声が聞こえてきた。
「いいですよ」
エリの言葉に深田は飛び上がった。
やっぱり親友だ。
エリちゃんが、親友で、自分には必要なのだ。
ニコニコして電話を切った深田を見て、マイケルはやれやれと言った風に溜め息を吐いた。
続く
第23回戦追記 246キャピタルってなんだった
246キャピタルと揉めている頃、見知らぬ電話番号から電話が何度か鳴った。
ところが折り返すと電車の音がして、間違い電話だと悟る。これを何度か繰り返して、ある時相手と電話が繋がったのだ。
「あの〜何度もお電話頂いて〜」
「ごめんなさい、深田さん。間違い!」
「え?私の事知ってるの?」
と聞いてみたら、私が勤めていた金融機関の法務部の人間だった。
「いやー、久しぶりー!」
とお互いの近況を報告しあってみるととんでもないことが分かったのだ。
彼はあのGoogleに会社を売ったKさんと仕事していたのだ。
「じゃあ、246キャピタルの人知ってるの?」
「知ってるも何も、あいつらがKさんダシにしてお金集めようとしてただけだよ。それにKさんが気が付いて、辞めるって言ったらKさんの弁護士まであいつらに一晩監禁されて大変だったんだから!」
「か、か、監禁!?」
「そ!ということで、246キャピタルとKさん、今はなーんにも関係無いよ!だから、深田さんも気を付けてね!この業界、ヤバいからね〜」
と彼は教えてくれた。
そう、私が246キャピタルに出会った頃には、もうKさんというカリスマはいなかったのだ。
246キャピタルとの出会いも偶然だが、その246キャピタルの本性を知る電話も偶然。
人生は不思議、不思議過ぎる。
第23回戦追記② 噂のハニトラ
噂のハニトラを目撃したのは人生で初めてのことだった。
マイケルと会社をやらなければ、遭遇する訳も無い事態に必ずなるのだが、何を何度経験しても毎回驚く。
公衆の面前で20歳の女の子が男の股間を触るなんて、しかもそれを「清純」と表現するとは、何だか家に帰って辞書で清純の意味をもう一度確認したくなってしまう事態だった。
それまでの私の凡庸な人生では、公衆の面前で見知らぬ男の人が私をオカズに股間を触ることは何度かあったが、女性が私をオカズに自分の男の股間を触るなんて破廉恥なことは一度たりとてなかった。
私は意外と常識人なのだ。
あの事件から数週間ほど、「股間触って清純かよ…」が、私の定番の独り言になったのだ。
あのトラウマはキツすぎた。
第24回戦 奪われた情報通信
「どこから情報が洩れている」
深田はため息を吐いた。
アルファアイティーシステムの藤井一良にうちの副社長になってもらうという話で、当初の取引先の殆どは藤井と一緒に訪問していたのでそこまでは分かる。
問題はその後だ。
パチンコ系の息がかかったプリント基板メーカーとも取引を辞め、純日本企業のプリント工業に頼んだはずの基板からは電源が外されて製造されていた。しかも、そのことを中国共産党は事前に知っていたのだ。
損害額は既に一千万円を超えた。
それは深田の経営する零細企業にはかなりのダメージだ。
資金はタイトになっていた。
ファンドを回ろうとしても、コンタクト先の情報が洩れているのかハニートラップ要員が派遣されて来るので商談になりようがない。
そのうえ、ハニートラップにかかった人物がアバクロモデルばりのイケメンを連れてきて、深田に逆ハニートラップならぬジゴロトラップまで仕掛けてくるのだから世の中怖い。
「フカダ、大変だぁ!!」
マイケルがオフィスに駆け込んできた。
そろそろ『大変』以外の日本語を教えないと展開がワンパターンだ。
「何よ!大変大変言わないで!」
「アメリカから電話が入った!中国共産党がうちがプリント工業に預けたチップを明後日台湾経由で中国に横流ししようとしている手はずを取っていると連絡があった」
「ええ!?」
時価7000万円分のチップを奪われたら、今のうちの資金繰りでは再度の調達は難しい。
「中国共産党は最後は力づくに出てきたぞ。チップはどこだ?」
「プリント工業です」
エリが応えた。
「エリちゃん、すぐにプリント工業に連絡して!」
「分かりました」
「なんて伝えましょう?」
「今からチップを取りに行くと」
「畏まりました」
エリはいつも通りにハキハキと答えた。
プリント工業に電話を掛けながら、エリはこちらを振り返った。
「もえちゃん、チップは今日は出してもらえないそうです」
「なんで?」
「出せない場所にあるそうです」
エリは垂れ目の瞳で深田を見つめた。
「うちの会社の資産が出せない場所にある時点でおかしいでしょ。どこにあるのか聞いて」
「それも言えないそうです」
「エリちゃん、誰と喋ってるの?」
「三ツ石課長です」
深田は頭に血が上った。ただでさえ、青筋立てながら生まれてきたと親に揶揄されているのに、コンシーラーで隠している額の青筋が浮かびあがった。
「もしもし?御社の親会社に預けたうちのチップがそちらに無いみたいなんですけど、どうなってるんですか」
深田はすぐさまプリント工業の子会社役員に連絡をした。現場の課長レベルで在庫の横流しなんてよくある話だ。そんな時は上役と話を付けないとどうにもならない。
「えっ、無い?そんなはずはありません。すぐに調べます」
さすがの子会社役員も驚いた様子だ。この役員は外資系コンサルティング会社に勤めていたので、コンプライアンス意識はまだあるほうだ。
数分後にプリント工業の部長から電話が入った。
「もしもし、深田さんですか?チップの場所が分かりました。検査の為に設計会社のフューチャープログレスに置いてあるそうです。明日のお昼ごろにはお渡しできると思います」
「そうですか。それではお願いします」
ホッとして深田は電話を切った。
「マイケル、チップは設計会社で検査しているだけだって」
「ウソに決まってるだろ」
「やっぱり?」
性善説で生きてきた深田だったが、ようやくこの業界の嘘が見えてきた。
設計会社にチップの検査装置なんて置いてあるはずもない。そもそも必要ないのだ。
「もえちゃん、マイケルさん、どうしてチップが無いと思ったんでしょうか」
「さあな、なんかアメリカから連絡があったとか言ってたよ」
「アメリカの誰なんですか?」
「ん?知らん。聞いてもしょうがないし」
「ふーん」
エリはいぶかし気だった。
確かに、マイケルは突然何かを予告する。深田にすれば事故は予防すればそれでいいわけで、どこからの情報かはどうでもいいのだ。
翌日、チップを回収すると設計が入っているプロムチップが漁られた形跡があった。プロムチップからプログラムを盗めば、いくらでも複製は可能でコピーするだけで儲けられる。だから、工場は協力するのだ。
「そんなことだろうと思ったよ」
マイケルはチップを調べながら、そう答えた。
「JSF事件から10年が過ぎた。俺の技術を含む兵器技術の密売で奴らは2000億ドルを手に入れた。兵器技術の密売の味を、青幇は忘れられない」
マイケルはチップを綺麗にまとめて箱に詰めて、呟いた。
「人間は愚かだな。この世に軍事技術なんて無く、あるのは優れた技術か遅れた技術だけ。使い方は人間の心次第だ」
兵器技術の密売に巻き込まれ、婚約者を失い、公開会社を失い、そして国籍を失った。
「いい技術を開発したい。そんな技術者たちのささやかな望みで開発した核技術が原発となり、日本に落とされて、何人のエンジニアが嘆いて自殺したかお前は知らないだろう」
「そうだったの?」
「俺は同じ苦しみを味わいたくない。そのことに気が付いてコンシューマ市場に入ったつもりがこのザマだ」
深田は黙り込んだ。掛ける言葉が見つからなかった。
特に話すこともないまま、深田は成田空港までマイケルを車で送った。
この会社を始めてから色んな人に「どうして、そんなに凄い技術なら大企業とで無く深田なんかとマイケルは組んだんですか?」と聞かれた。
確かに、マイケルはIBMの開発や米軍の最先端開発をしてきた人間だ。
空港の車寄せで、マイケルが荷物をカートに積み替え終わったところで深田は口を開いた。
「マイケル、なんで私と会社始めたの?」
「ん?お前はバカで単純で曲げても曲がらない女だからな。スパイになる心配が無い」
マイケルは愉快そうに笑いながら、空港のなかへと向かって歩いた。
「マイケル、全ての女は曲がったことが嫌いだ!覚えとけ!」
マイケルの背中に向かって深田は叫んだ。
「ハハ、お前の尺度で女を計るな。女は複雑な生き物だ。特にお前の身近に居る女はな」
マイケルはそう言い残して空港の自動ドアへと吸い込まれていった。
「なんなんだよ・・・」
深田はため息を吐いて、車のエンジンを入れた。
続く
第24回戦追記 FPGA横流し寸前事件
プリント工業三ツ石課長が持ち出したうちのFPGA(7000万円相当)は、八王子にあるフューチャープログレスという会社にあった。
フューチャープログレスも基板設計会社で、鏡さんと言う人が一人でやっている会社だった。
いま、彼の会社をウェブで探そうとしたが、ウェブは見つからず、電話番号サイトも見つからなくなった。
一体何だったのか。
プリント工業の社長にいつチップを持ち出したのか伝票を出してほしいと聞いたら、「そんなものは無い!お前達みたいに常に人を疑ってるんじゃなくて、商道徳というもので俺は取引先信じてるんだ!伝票なんかあるわけねーだろ!」とキレられた。
伝票無しに仕事してるのか。

第25回戦 口論
「やれやれ」
マイケルがシリコンバレーに戻り、深田は両手を天井へ伸ばした。普通の仕事は苦にならないが、訳の分からないことが多すぎて最近は肩が凝るのだ。
デスクの上にある電源が抜かれた電子基板を見る。
「電気が通らない基板作ってプリント工業は何がやりたかったんだろうね」
「もえちゃん、でも、私はプリント工業さんに基板に電源入れてってお願いしなかった気がするんです」
誰に話しかけるわけでもなかったが、エリが応えた。
「は?何言ってるの?電気屋でパソコン買って、電源付いてなかったらおかしいでしょ。店員に文句言ったら『パソコン欲しいとは聞いたけど、パソコンに電気通せなんて言って無いでしょ』って言われてるようなもんでしょ」
「でも、全部プリント工業さんの責任にするんですか?」
「エリちゃん、うちはお金払ってるんだよ。基板メーカーにいくら払ってきたと思うの?それなのに納品してきた会社一社も無いんだよ」
エリは基板メーカーとの担当窓口だったので、相手の担当とはかなり仲が良かった。庇いたくなる気持ちは分かるが、損害は大き過ぎる。株主に対する責任があるのだ。
「深田さん、深田さんはメーカーさんにとっては良いお客さんじゃないんです。だから、お金払っても納品して貰えないのは仕方ないんです」
「は?」
一瞬、彼女の言っている言葉の意味が分からなかった。
白いデスクの向こうにいるエリはいつも通りのポーカーフェイスで、黙ってこちらを見ている。
「エリちゃんは取締役で経営側なのに、いつまで経っても製品の一つもできないままでそれをどうやって株主に説明するの?経営陣として説明責任果たせるの?」
エリは応えなかった。
「経営者として恥ずかしくないの?私は恥ずかしいわ!」
垂れ目の大きな瞳が瞬きもせずにこちらを見ている。
「そうですか。深田さんの気持ちが分かって良かったです」
エリはそう言い残して、「今日はもう遅いので」と言ってオフィスを出た。時計は夜の九時。確かに遅い。
「なんだよ。私の気持ちが分かって良かったとか」
そこじゃないだろ、と思いながら夜道をトボトボ歩き、気分転換に一人で近くのワインバーに入った。
「シャンパンください」
「あれ、今日はお一人なんですね」
白シャツに黒ベストのマスターがカウンター越しにシャンパンを指し出した。お気に入りのマッシュルームサラダをつつく。
三年間、仕事帰りにエリと一杯飲むのが日課だった。合言葉は「お腹空いた」だ。
「うん、そうだね」
思わず涙が零れたが、マスターはそっと背中を向けてグラスを拭いた。
続く
第26回戦 新聞一面に
ジリリリ、ジリリリ
黒電話音に設定したスマホが鳴る。
「うーん・・・」
目がなかなか開かない。たぶん、昨日なかなか寝付けなかったせいだ。
うっすらと目を開けてスマホを見ると、『エリ』と表示されていた。
良かった。これで仲直りだ。
「エリちゃん、おはよう」
「もえちゃん、大変です!」
電話口でエリが声を上げる。
「だから、何が大変なんだよ!」
ほぼ、毎日のようにエリかマイケルが大変大変と言い出すので、そろそろ苛ついてくる。
「FPGAが盗まれそうになった事件、産経の一面になりました!!」
「ハァ!?産経新聞!?」
「はい!一面です!」
「ていうか、エリちゃん新聞読んでたの?」
思わず深田は突っ込んだ。
「いえ、知人から連絡があって、産経新聞一面のR社ってうちのことじゃ
ないかって聞かれて見てみたんです」
「どうだったの?」
「うちです。間違いなく・・・」
その言葉を聞いて、深田は髪も梳かさずコンビニへと走った。
新聞には、盗まれそうになったFPGA7000万円相当を中国に渡る前に水際で回収したと書かれていた。R社のK氏。マイケルのことだ。
『狙われた情報通信』と冠された記事には、『上』と書かれていた。明日は『下』となるのか。
翌朝はより衝撃的な記事だった。
うちの3D技術で中国人民解放軍と直結している中国科学院が衛星搭載型のレーザー兵器の開発を行なおうとしていることが明らかになった。
「解放軍のルアンハオ・・・」
聞いたことのある名前、そう、私とエリが訳した英語の意味が分からないと問い合わせてきた人物だ。ただし、問い合わせてきたときは中国科学院だと名乗っていたはずだ。
10年前、マイケルがJSF(統合打撃戦闘機)の開発計画に加わってから、解放軍によってJSFの設計は盗まれた。
当時、マイケルは中国科学院の顧問として、年に数回中国へと渡っていた。無論、米国政府の許可は得ていた。
JSF事件が発覚した後、米国政府の調査で中国科学院でマイケルが出会った40人の院士は全部二つ星以上の解放軍軍人だったことが発覚した。
そして、今、また中国科学院が裏で動き始めている。
「もえちゃん、こんなのニュースになっちゃっていいんですかね」
「そうだな、どうなんだろう」
また、S社の部長が怒鳴り込みに来るかもしれない。
オフィスの電話は問い合わせの電話が鳴り続けた。
R社とは、うちのことなのかと。
深田はエリを車に乗せて産経新聞へと向かった。
「エリちゃん、待ってて」
産経新聞社へと入り、深田は記者を探した。
この記事のこと、もっと知りたい。
担当記者のうちの一人が現れて、記事の情報源については答えられないと告げられた。
「この事件、どうなるんですか?」
「県警が動き始めた」
記者はそれだけ応えた。
「県警!?」
遂に警察が動いた?
この一年間、苦しみぬいた。何度警察に通っても、被害届は一度たりとて受理されなかったのだ。
それが、記事になった瞬間から警察は動き始めたのだ。
深田は走って車まで戻り、エリに声を掛けた。
「エリちゃん!県警が動き始めたって。この一年間の苦しみからようやく解放される!」
深田は少し興奮気味だった。
この不気味な事件の連続、相談しても気のせいだとバカにされてきたけど、もう気のせいだとは言われない。
「よかったですね」
エリは瞬きもせずに答えた。
言葉とは裏腹に顔はこわばり、声は冷たかった。
「もえちゃん、なんだか風邪で熱があるみたい。今日は早退してもいいで
すか?」
エリが力なく答えた。
「そうだね、エリちゃん働き過ぎだよ。休んだほうがいい」
深田はエリを自宅まで車で送り届けた。
すみません、それじゃ、と言ってエリはマンションへと消えていった。
その後ろ姿が、彼女を見た最後の瞬間になるとは夢にも思わなかった。
TO BE CONTINUED
第27回戦 何もかも消えて
「深田社長!ここにハンコ!お願いします」
取引銀行から頼まれて、深田は金庫を開けた。
「あれ?」
入っているはずの印鑑と通帳が無い。そうだ、エリが契約書作るとかで印鑑通帳を持って帰ってしまっているのだ。
「すみません、副社長に預けてて風邪で休んでるんですよ」
「そうですか、それじゃあ次回」
そう言って銀行員は帰って行った。
エリが休んで3日。
電話は通じず、LINEで朝一通メッセージが来るだけだ。深田はLINEで「病気は分かりますが、印鑑と通帳をエリの家に取りに行ってもいいですか?仕事になりません」と連絡すると、「ご迷惑かけてすみません。親友に持って行かせます」と返信が来た。
「おい、友達に持って行かせるってなんだよ。同好会じゃないんだぞ…」
深田は苛立ちを覚えたが、自分の感情より実務を遂行する方が大事だと思って了承した。
しばらくして、エリの親友が会社のパソコンと印鑑通帳を持って来た。
「深田さん、すみません。受領書頂いていいですか?」
と言われて違和感を覚えた。
エリはこれまで取引先とのやり取りで受領書を作ったことが無い。それで散々揉めてきたのだ。そんな人間が会社の備品返すのにここで受領書を要求するのかと思うと、正直気分は良くなかったが、実務優先なのでとりあえずサインをした。
「なんか、おかしな話だよな…」
深田が首を傾げてると、電話がかかってきた。エリの携帯だ。
「エリちゃん!どうなってるの?」
「エリの母です」
「え、お母さん?」
深田は目が点になった。
「エリが深田さんに書類を渡したいので至急お会いしたいのですけど、いつ頃ご都合宜しいですか?」
「え?書類?今日は一日中オフィスにいますけど…」
「それではこれから伺います」
と言って電話は切れた。
いったい何の書類だよと思いながら深田は椅子にもたれかかった。
5時頃、エリの母親がやってきた。
「エリの辞表です」
「え、辞表?」
「エリは鬱病で衰弱しきっていて、歩くこともできません。お医者様にもそう言われてます。受け取って受領印を押してください」
「今日は無理ですよ」
「じゃあ、辞めたという証明書を発行してください!!」
会社辞めた証明書ってなんだ?と深田は首を傾げた。
「お母さん、ちょっと待ってください。私だけで決められません。株主もいるんですから」
「じゃあ、今すぐ株主全員に電話してください」
さすかに面食らった。
会社の副社長やってる人間がお母さんに辞表持って来させて、株主全員に電話しろというのである。
「お母さん、できるだけ早めに株主に連絡しますから、今日はお引き取り願えませんか?」
「分かりました。早めに連絡ください」
そう言って、母親が帰ろうとした時にそうだと思った。
「お母さん、エリちゃんの病気、長引きそうでしたら、良かったら彼女の私物を持って帰ってあげたらどうですか?」
そう言って、深田はエリのデスクを開けた。
すると、あるはずの化粧ポーチやハンドクリームが無い。
ロッカーを開けても空っぽだ。
「おかしいな、何にも無いみたいですね」
「そうですか、それでは失礼します」
そう言って、母親は帰っていった。
帰宅後、ワインを飲みながら、深田は思いふけった。
「なんで私物ないんだ?」
ハッとした。
飲みかけのグラスを置いて部屋から駆け出し、夜道でタクシーを見つけて飛び乗った。
ガチャガチャとオフィスのドアを開けて、開発中のシステムのケースのネジを外した。
「ない…」
硬く閉められたケースのネジを外して、二つ目、三つ目と開けていく。
ハードウェアケースの中身にあるはずの開発中チップとハードディスクドライブまでも残っていなかった。
わざわざネジで締めてるケースから取り出していくなんて…
何千万と開発費をかけたものがアッサリと副社長に持ち逃げされた。盗んだ本人が消えたとなれば、株主から訴えられるのは自分だ。
その場に座り込んで、深田は電話を掛けた。
「マイケル…開発中のチップが盗まれた」
「警察に届けろ」
「警察…」
深田は戸惑った。少し前まで毎日一緒居た親友を警察に届けるのかと。
「そして、緊急株主総会を召集しろ!お前の処分をその時に決める」
そう言って電話は切れた。
重い足取りで深田は中央警察に赴き被害届けを出した。これまでのように、被害届けの受理を断られたらとも思ったが、今回はあっさりと被害届けが受理された。
一年間、何度被害届けを出そうとしても警察には断られ続けた。巧妙な犯罪者達は殆ど証拠を残さなかったからだ。
「エリちゃん…」
もし、この事件が表沙汰になれば、青幇、中共国安がスケープゴートに使うのは証拠を残した彼女だ。
涙が止まらなかった。
ベッドに横たわって、ただ天井を見ていた。
神様、人間は、なんて残酷なゲームをするんですか。
TO BE CONTINUED
第28回戦 嗚咽
エリと連絡が付かなくなって何日もが無為に過ぎた。
食事をしようとすると嗚咽で呑み込めず、ダイエットでは落ちない体重があっという間に3キロ落ちた。
「エリちゃんが裏切る?」
裏切ったかもしれないし、そうじゃないかもしれない。
彼女の意思かもしれないし、そうじゃなかもしれない。
自分が頼りない人間だから、愛想尽かされただけかもしれない。
それは、自分には分からないことだ。
でも、この一年間これだけ脅迫されたり、なんだかんだあったんだから、もしかしたらエリも脅迫されて拉致されたのかもしれない。
そんな考えが浮かんでマイケルに電話をすると、
「脳みそ足りないな。裏切られただけだ」
「毎日エリとご飯食べてたのよ」
「それがどうした。金を積まれたら、お前とするより豪華な食事が一笑できる」
「信頼関係は?」
「金より安いってことだ」
そう言われて、深田はカッとなって電話を切った。
「なんで、マイケルは人の気持ちわからないの」
深田はスマホの電話帳を端から端までチェックした。こう見えても顔は広い。相談に乗ってくれる人が一人くらいはいるかもしれない。そこに、一人のジャーナリストの名前が見えた。
彼は内閣に情報を提供しているジャーナリストなので、もしかしたら政府に繋がっているかもしれない。
「もしもし?」
「あれ、深田さん」
深田はエリが失踪した件で、どこかに相談できないかを尋ねてみた。
「内閣情報調査室ですね」
彼は応えた。
「なんですか、それ」
「日本に諜報機関はありませんが、いわゆる、CIAのカウンターパーティー的な位置づけです。そこに聞いてあげますよ」
「会えますか?」
彼はさぁ、と言った様子で一度電話を切った。数分後にコールバックがあった。
「深田さん、内調はR社の件を把握しています」
「ええ?うちみたいなベンチャーのこと何で知ってるの?」
「雑誌『外交』と産経新聞でしょ。派手でしたからね」
「じゃあ、会えるんですか?」
「内調は、貴女には会わないと回答しました」
「そりゃそうですよね・・・」
深田はただの民間人だ。政府関係の人間が会うわけもない。
オフィスチェアに座り、大きくのけ反って天井を見た。
「議員に相談すればいいのかも」
そうだ、拉致関係に強い保守系の国会議員に相談すべきだ。
居ても立っても居られなくなって、知り合いの社長に拉致に強い議員を紹介してもらった。
議員秘書が会ってくれて、すぐに警察関係や政府系の調査機関に問い合わせるので少し時間が欲しいという回答があった。
数日ほど連絡なしに過ぎ、ある土曜日の朝、Facebookを見るとエリのアカウントが消えていた。エリのブログも、SNSも彼女への手掛かりがどんどん消えてきている。
深田はすぐに議員秘書に電話をした。
早くしないと、手掛かりが消える。
土曜日、日曜日と電話をしても繋がらず、月曜日に秘書から折り返しがあった。
「土日に電話してくるなんて、お前は常識が無いのか!そんな緊急の事態があるのか!」
第一声は怒鳴り声だった。
「あ、すみません。エリの手掛かりがなくなってきているので・・・」
「知るか!警察でも行け!」
そう言って、電話は切れた。
深田はツーツーとなるスマホを見つめた。
「これが拉致問題の議員秘書だなんて・・・」
確かに拉致されたとは限らない。エリは私を嫌って連絡してこないだけかもしれないし、本当に失踪したのかもしれない。自称エリの母親が本物かどうかも分からない。
また、嗚咽がこみ上げた。
TO BE CONTINUED
第29回戦 内閣情報調査室
「深田社長、これ、御社の社印じゃないですよ」
信用金庫の営業が深田に印鑑を突き返した。
「ええ?」
エリの親友が「エリに頼まれました」と言って持って来たうちの社印のはずだった。
「そんなはずは・・・」
「社印の陰影が違うでしょ」
言われてみると確かに陰影が違う。
エリに電話をしても繋がらない。LINEもFacebookも無いので連絡しようも無い。
エリの母親を名乗る女性に電話すると、
「それは貴女の気のせいです」
と言っただけで電話は切れた。
「しょうがない・・・」
深田はエリを数年前に紹介してきた会社の社長に電話をした。
トゥルルル、トゥルルル、
コールは鳴るが繋がらない。
共通の知人にメールで『エリを紹介してくれた社長と最近連絡取ってる?」と聞くと、『萌絵ちゃん、知らないの?彼、失踪したってニュースで出てたわよ』とURLが送られてきた。
クリックすると、確かにエリを紹介した社長が失踪したというニュースが出ていた。
「そんなバカな・・・」
失踪したのがエリだけじゃなくて、紹介してきた人間まで失踪しているなんて、そんなことあり得るだろうか。
胸騒ぎがして、ネット上で『小林英里』と検索してみた。エリは学生起業家として有名だったので、色んなサイトで紹介されてきた。
「ない、ない・・・」
エリの情報が全て綺麗にネット上から消えていた。あんなにたくさんあったエリの写真も消えて、彼女と全く関係の無い写真しか検索で上がらなくなってきた。
スパイシーにエリの昔の会社『有限会社壱歩社長、小林英里』が掲載されているが、それすら全くの別人の写真だ。
http://spysee.jp/%E5%B0%8F%E6%9E%97%E8%8B%B1%E9%87%…/1267096

「なんでそんなことができる?」
このネット社会で、ネット上から自分の写真を消したいと思っても消せないのに、全てが消えるなんてあり得るんだろうか。
「マイケル!」
深田はマイケルを振り返った。
「エリの写真が全てネット上から消えた」
「ほう、なるほどな。そういうことか」
「どういうことよ」
「内閣情報調査室だ」
「内調って、日本のCIAみたいなとこでしょ?」
「そうだ。ネット上から全ての情報を消すなんて、日本では内調しかできない」
「なに?それってどういうこと?」
「内調の中にダブルスパイがいて、エリを匿っているってことさ。一般人にネット上の全ての自分の情報を消すことは出来ない」
そうだ。マイケルがFBIに保護された時、ネット上のマイケルの写真も情報もほぼ全てが消された。そんなことは国家にしかできない。
「内調って、政府の情報調査局が私たちの敵になったってこと!?」
言われてみれば、内調とつながっている人たち数人から「R社のことを内調は把握してますよ」と言われた。でも、全員が「内調は深田とは会いません」と断ってきた。
「福島瑞穂と内調が繋がってるんだろう」
確かに福島瑞穂は内調に何度となく情報提供するように指示している。
「内調のなかにダブルスパイがいるってこと?」
「もちろん。日本の情報は韓国中国に駄々漏れだからな。そのうち、内調内部の人間は消されるだろう」
なんで?と聞こうとした瞬間に株主たちがぞろぞろとオフィスに入ってきた。そうだ、今日は株主総会だ。
「それではこれより、R社の臨時株主総会を開きます」
株主たちを前に深田は総会を開始した。
「株主の皆様、本日はお忙しいなか急な召集にも関わらずありがとうございまし・・・」
深田は謝辞を述べた。
「議長」
マイケルが深田の言葉を冴えぎる。
「R社は、本日をもって全ての営業活動を停止し、解散することをここに求める」
その場の空気が凍りついた。
解散なんて、聞いてない。
説明しろと求める株主、深田はマイケルの顔をみつめる。
「開発は破壊され、全てが盗まれた。ゲームオーバーだ」
マイケルは冷酷に答えた。
TO BE CONTINUED
第29回戦追記 内調
昨日、内調の受託をしているというジャーナリストに一年振りに電話をして、偽装裁判について相談しようとした。
そしたら、ぷちキレられました。
仕方ないので電話を切ったけど、なんでキレられたのかよく分からないです。
やっぱり内調は福島瑞穂の工作で中国よりなのか。
内調の内部にエリとアルファアイティのミサイル開発計画を幇助する人物がやはりいるのか。
ここ数年、内調の人間が不審死しまくってますが、ダブルスパイが殺されてるのか、ダブルスパイに気が付いて報告しようとした真面目な人が殺されてるのかはよく分かりません。
まあ、こんだけ死んでるなら、タッチしないに限りますね。
第29回戦追記② 内調を超えるテロ情報収集組織
安倍総理は国際テロ情報収集組織を発足する。
ただし、人材が内調や公安から来るのが心配だ。
情報収集組織に人を採用する際にはその人物の情報を収集しなければならない。まずは預金口座、家族や親戚の預金口座、4代前まで家系が遡れるか、幼い頃に入れ替わった成り済まし日本人ではないか、等の基本情報が必要な気がする。
内調と公安の内部では日本の為に働いている人と中国・朝鮮の為に働いている人がいる。
国際的な情報収集する前にまずはその辺から情報収集したほうがいいような気がする。
ミステリー小説ではないが。
「犯人は、このなかにいる」
が正解ではないだろうか。
第30回戦 バカで愚かな女
目が覚めると白い天井が見えた。
顔に違和感を感じる。
ぺリぺリと剥がすと、白い紙が顔に貼りついていた。
枕元はティッシュだらけだ。
そうだ、全て失ったのだ。
4年間、自分の全ての時間と全財産を掛けて打ち込んだ会社が昨日終わった。会社を立ち上げてから、エリの給料を優先して払ってきたので自分の給料は後回しにしてきた。
前の会社を辞めてから6年間、自分は殆ど給料を取らずに貯金で生活してきた。証券口座の資金も注ぎ込んだので、すっからかんだ。
「はは、やるね。エリちゃん。ぐうの音も出ないよ」
都内の高級タワーマンションの一室。
無収入の今では家賃が高過ぎるだろう。
あぜ道の多い田舎で育った自分には、不似合いだなと思わず笑った。
「なんで、こんなことになったんだろ」
低学歴の私が、そもそもなんでこんなところに住んでるのだ。
そもそも私は、毎日意地悪されては泣いている気が弱い女の子だった。
母さんは、子供の頃から「萌絵ちゃんがやりたいことは何でもできるのよ」って言ってたのに、夢は何一つ叶わないまま、家族と離れた療養所で二ヵ月過ごし、誰一人訪れないままに成人した。
ここを出たら、全ての時間を自分のやりたい事の為、夢を叶える為に使うんだ。そう誓った。
家に戻ると父は失踪していた。
倒産して全財産を失ったのだ。
無我夢中で就職して、田舎の小さな町工場で事務員になった。
普通のOLだ。
仕事はつまらなかった。
お金も無かった。
それが不満だった。
母さんに夢が叶わないと文句を言った。
「努力すれば夢なんていくらでも叶うのよ」
それが彼女の答えだ。
お金の為に投資を始めた。
転職したくても、スキルが無かったので英語とパソコンの勉強を始めた。
皆に「おまえみたいなバカには無理」と嘲笑われた。
馬鹿にされたくなくて頑張った。
頑張ったら、商社に転職できた。
ところが転職をしても、転職をしても待遇は良くならない現実に絶望した。学歴が無いと笑われて、バカにされて、非正規雇用を転々としたのだ。
だから、努力して大学に入り直した。
学費は無かった。
単位を取りながら五つの仕事を掛け持ちした。
リサーチの仕事で株の知識を深めた。
夫が勉強を教えてくれていたので、少し賢くなった。
最初は褒めてくれてた夫も、いつかは褒めてくれなくなった。
夫が外資金融に勤めていたので憧れて、外資金融に自分も入ることにしたのに夫は反対だった。
結果的に離婚になった。
彼と暮らしていたタワーマンションを出る時、「いつかは自分のお金で高級タワーに住む」と誓った。
そのタワーマンションに引っ越す時が来た。
同じタイミングで金融機関も辞めた。
就職はしなかった。
職を転々とした自分を戒めるためだった。
また、トレーダーに戻った。
生活は出来た。
ただ、虚しかった。
その時、コンサルやってくれと3社くらいから声が掛かった。
成功報酬でのコンサルでお金をまあまあ貰った。
ある日、女友達が遊びに来た時に私の部屋を見て、
「男に毎月いくら貰ってるの?私にも金持ちの男紹介して」
と聞かれた。
驚いた。実は恋人にお金を貰ったことは無い。(プレゼントはある)
目を見張って彼女を見た。
友達面して、「もえちゃん、仕事頑張ってて凄いね」と言いながら、心の底では私のことを愛人業で稼いでいる女だと見下していたのだ。
彼女とは喋らなくなった。いや、喋れなくなった。彼女の嘘と建前の会話についていけなくなった。
もっと、難しい仕事がしたいと思った。
誰にもバカにされない仕事。
社会の役に立つ仕事。
世界で通用する仕事。
そう思っていたら、マイケルと知り合って、原発事故が起こったのだ。
それで、この会社を立ち上げた。
何でも努力で乗り越えてきた。
だから、何でもできると思っていた。
いや、驕っていたんだ。
運が良かっただけなのに、甘かったんだ。
「なんだろう」
また、泣けてきた。
バカにされたくないと思って、意地張って生きてきて、気が付いたら訳の分かんないところに辿りついた。
そう言えば離婚の時、彼は「女は愚かだ」と言った。
彼の言う通りだ。私はいつまでも夢を見るバカで愚かな女だ。
結婚生活を続けていれば、どれだけ幸せだっただろう。
孤独に苦しむことも無く、楽しく生きていけたはずだ。
努力すれば、何でもできるなんて幻想だったのだ。
午前10時。
泣いている場合じゃない。
これから裁判だ。
着替えようとクローゼットを開ける。
ブランド物の山。
無駄遣いせずに現実的に生きるべきだった。
自分の愚かさを悔いながら、家を出た。
東京地方裁判所にはその日も梶原弁護士の部下宮西弁護士がいた。
こちらは畑中事務所の先生だ。
裁判は先生に任せて、深田は力なく傍聴席に座った。
『自分みたいなバカ女に出る幕は無い』と、そう思って、裁判を傍観していた。
遠田真嗣裁判官がアルファアイティーシステムの弁護士宮西に向かって、
「さて議論も出尽くしたので、次回は証人尋問をやって、その次判決を出しましょう」
と言った後に私の代理人を振り返り、
「被告代理人もそれでいいですね?」
と聞くと、こちらの代理人がおどおどしながら、「え、ええ」と答えかけた。
「ちょっと待てぇ!」
法廷に女の声が響いた。
傍聴席に座る弁護士たちが何事かとこちらを振り返った。
私だった。
立ち上がっていた。
自分でも気が付かなかった。
「被告は異議があるのですか」
遠田裁判官が冷たく言い放った。
法廷で傍聴席から声を上げることは禁じられている。
心証を悪くすれば裁判で負ける。
弁護士から100回言われた言葉だ。
心証悪いも何も、負けが見えてる。
それどころじゃない。
「被告」
また、裁判官から呼ばれる。
緊張で喉が張り付く。
「うちの副社長が失踪して、裁判記録の原本もこちらに有利な証拠も何もかもなくなっているのにそれで公正な裁判ができるのか!」
「では、証人尋問は?」
「まだ議論は出尽くしていない!」
叫んだ。
既に会社を失った。裁判まで負けたら、人生まで失う。
「それでは一カ月後にもう一度口頭弁論を開きます」
「一カ月では無理だ。証拠も記録も全て失って、一カ月で準備しろと言うのですか」
粘った。自分で裁判の書類を用意するにも時間が必要だった。
「それでは、二カ月後にしましょう」
そう告げられて、裁判官は法廷を後にした。
エレベーターで自分の代理人が「先ほどはありがとうございました」とお礼を言ったが、何も答えられなかった。
弁護士が、法廷で私の代弁をしてくれたことがない。
異議を唱えるのはいつも自分だ。
深田はタクシーで自宅に戻り、部屋にあるブランド物バッグやアクセサリーを集めて紙袋に入れた。元彼からもらったティファニーのダイヤも一瞬手に取ったが、躊躇して棚に戻した。
紙袋を掴んで、車で銀座へ向かった。
まだ、戦える。これからは自分で戦うんだ。
「え、これ、全部ですか?」
ブランドショップ買取専門店の店員が驚いた。
「はい、全部です」
深田は応えた。
今の自分には、必要ないものだから。
TO BE CONTINUED
第31回戦 キーパーソン
「クレイジーだな」
深田の新会社を立ち上げようという提案をマイケルはSkype越しに笑った。全部持ち逃げされて、何も残ってないのに、また会社やろうなんて、確かにちょっとバカげてる。
「資金はどれだけあるんだ?」
「会社の登記して、一ヶ月分の資金繰りと私の一ヶ月分の生活費よ」
一ヶ月しかもたないのに会社始めるなんて本当にどうかしている。どこまでお前は博打打ちなんだと、自分でも言いたくもなる。
実家へ帰ることも考えたけど、今、諦めたらきっと後悔する。諦めるなら、コテンパンにやられて二度と立ち上がれなくなるまでやられてからだ。ま、けっこうやられたけど。
「一ヶ月か。日本のチャイナリスクが高過ぎるから俺は出資できない。それでもやるのか」
「出資はいらない。すぐに営業に出るから、技術だけ出して」
金は無くても技術があれば、営業で取ってこれる。
「慌てるな、2日待て。そして、株主に相談して全員の了承を得ておくんだ」
そう言って、マイケルはSkypeを切った。
2日後、マイケルは新しい開発中の基板を持って日本ヘ帰ってきた。マイケルのアパートの共有スペースで、マイケルは基板を広げた。もう、我々にはオフィスすら無いのだ。
「なにそれ?」
「音速機の遠隔運転で使おうと思ってた、高速動画伝送システムだ。コンシューマ規格に直した」
「今どき動画配信なんて誰でもやってるし、YouTubeでもできるよ」
「そうじゃない。動画配信サーバーを経由せずに高速で動画を伝送するシステムはまだコンシューマの世界には無い」
ネットでマイケルの開発した動画伝送システムのスペックとコンシューマのスペックを比べた。有線伝送でも世界最速を謳う米国製品より15倍速い。
無線動画伝送システムで比較すれば100倍速いのだ。
「どの分野に営業かけるべき?」
「医療、防災、遠隔操作系だ」
「じゃあ、今すぐ営業行ってくる」
「ちょっと待て、脳タリンのフカダ。設定にあと数週間かかるぞ」
とマイケルが言い終わる頃には、もう深田は営業に出ていた。
「え、世界最速動画伝送システム?発注します。デモ見せてね」
医療系システムを開発してる会社の社長がそう答えた。
「ごめんなさい!設定が終わってないから、デモまで数週間かかります」
「いいよ、先に発注します」
技術が好きな社長なので、新しい技術は早く買って研究したいようだった。やったー!と、深田は思ったが冷静に考えると仕入れの代金が無い。
「前金お願いします!」
「え、前金?」
一瞬社長は戸惑ったが、「仕方ないなぁ」と同意してくれた。
「よおし、これで一ヶ月延命!」
全財産失って、最後にブランド物売ったお金で立ち上げた会社の寿命が一ヶ月延びた。
このことを株主に報告しなくては。
前の会社解散させちゃって、新しい会社始めるなんて言ったら絞られるかもしれない。
「こちらへどうぞ」
社長室へ通されると、イタリア製のスーツにポケットチーフを入れた品の良い男性が革張りのチェアに座っていた。
深田は恐る恐る経緯を報告した。
「あーはっはっは、さすが深田さんですね。面白い!」
株主はお腹を抱えて笑ってた。
深田はキョトンとする。
「いや、大親友のエリさんに裏切られて意気消沈してるなら、励ましてあげようと思ったけど、やっぱり深田さんなんですね」
「いや、泣いちゃいましたけど、それで終われないです」
そうこなくっちゃと彼は笑った。
「最近ちょっとヨーロッパの宮殿でパーティを開いたので僕もちょっと余裕無いけど、資金出しますよ」
「あの、ありがとうございます!!」
深田は会社を出てから、思わず顔が綻んだ。
会社を解散させたのに、怒られるどころか更に応援してもらってしまった。エンジェル投資家達の対応は、天使どころか神の領域に達した。
辛い事があった。
泣いた。
もうダメだと思った。
でも、まだ応援してくれる人がいる。
神様ありがとう。
深田は傲慢でイヤな女でした。
自分の甘さや傲慢さを反省しながら地下鉄に乗ってマイケルの下へ向かった。
「マイケル、資金繰りの目処がついた。これで半年はいける」
深田はアパートの共有スペースに戻った。マイケルは共有スペースを自分のオフィスかのように堂々と使っている。
「GOOD。でもな、フカダ」
マイケルはパソコンを指差した。
「なに?」
マイケルのメールボックスに中国上場企業の役員からメールが来ていた。ファーウェイのコンペティターだ。
「こう書いてある。『御社のキーパーソンを関係会社に引き抜いたとファーウェイ幹部が自慢しに来たぞ。どうなってるんだ?』ってな」
深田は眼を見張った。
確かに、そう書いてある。
キーパーソンも何も、こんな数人しかいない会社、そんな居なくなったのは一人しかいない。
彼女は脅迫されていたわけじゃ無かった。
彼女は喜んで産業スパイとなったのた。
しかも盗んだのは、輸出規制の民軍両用技術か。
TO BE CONTINUED


第32回戦 ダイヤモンドの大きさは愛の大きさ
持っているブランド物の多くを売り、会社を建て直した。
自宅の棚には、残されたティファニーの水色の箱が見える。
元彼から貰った1カラットのダイヤモンドはなんとなく売りそびれたのだ。
「ま、もう二度と会うこと無いんだけどね」
ずずず、と、熱い紅茶をすすった。
元彼は自分に本気ではないと思っていたあるクリスマスの日に、「なんか、欲しいものある?」と聞かれて「別に」と答えた。本当に欲しい物は特に無かった。
彼は、「別にって何だよ」と言った後、黙ってティファニーに入って、このダイヤモンドを買ったのだ。
あまりの値段に驚いた。
「俺がお前に本気だったってこと、分かった?」
驚きのあまり声も出なかった。
彼の愛の深さに自分は気が付いて無かったと反省した。
そして、ラブラブ彼の部屋に入るとハリーウィンストンで100万円のダイヤモンドを買った前日付のカード明細が机の上に無造作に置いてあった。
「あんたさ、毎日違う女にダイヤモンド買って、何が面白いワケ?」
深田は彼を白い眼で見た。
「ちょっと待て!お前のダイヤモンドの方がずーっと高かったの、値段見ただろ!?そのダイヤモンドの大きさを見ろ、俺の愛の大きさだ!」
彼はそう言って、深田の肩をポンと叩き、それから程なくして、どうしようも無い二人は破局した。
「別に未練は無いんだけどね」
自分を一瞬でも好きだと言ってくれた人が無理して買ってくれた物を粗末にするのは気が引ける。
ルルルと音がなって携帯を見ると、その彼からメールが入っていた。
『よお、元気?仕事頼みたいんだけど、飯でもどお?』
なんだ?何年も連絡してないのに調子のいいヤツめ。ただ、仕事は欲しいので、何の仕事かは気になる。
『何の仕事?』
『メールでは説明しにくいから、今夜焼き鳥屋にでも来いよ』
相変わらずの上から目線。
ちょっと待て、深田。別れた男に安く見られてはならない。
『別れた男と焼き鳥行く女無いでしょ』
断った。
『ミクニでどう?』
彼は深田のお気に入りのレストランを提案した。
『飽きました』
これは断り文句のつもりだった。
『お前、イヤなヤツだね〜。それでは、ミシュラン二つ星フレンチ取りました。7時でお願いします』
その店は前から行きたいと思っていた予約の取れない有名店だ。
『分かった。じゃあ、現地で』
仕方ない。偵察に行くしかない。
電話を切った後、深田は古びた下着に着替えた。
恋愛作家森瑶子の格言に『別れた男とヨリを戻したくない時は一番汚い下着を着ること』とあったからだ。その本は小学生の時に読んだ。
タクシーに乗り、『別れた男の前ではイヤな女を演じるのだ』と深田はブツブツ唱えた。
「で、なに?仕事の話って?」
本日のアミューズ、フォアグラペーストのシュー仕立てを頬張りながら、深田は質問した。
「俺の会社、上場させる事にしたんだよね」
「あんたみたいなアナログの会社、人件費ばっかり嵩んでレバレッジ聞かないから、バリュエーション(高い株価)付かないから無駄よ」
深田は栗のポタージュを啜りながら答える。
株価の評価は、自分の本業だ。
「その通りなんだよ。だからさ、お前の会社を買収したいんだ。人からお前の副社長が失踪して、お前が困ってるって聞いたし、資本が入ればお互いウィンウィンだろ?」
彼はワイングラスを掲げてウインクした。
確かに深田の会社は最先端技術開発会社なので、小規模でもバリュエーションは異常に高い。
「会社、解散しちゃったんだよね」
深田はわざと新会社を立ち上げた話は避けた。
上場前の会社は子会社の買収をしたら上場時期が遅れるというマイナーなルールがある。彼の話、何か裏がありそうだ。
「ええ!!!マジで!!?もったいない〜〜」
彼はガクーとなった。
「うん、ちょっと前よ。ざーんねん」
深田は好物のトリュフがかかった鴨肉にポテトペーストをかき集めて頬張る。流石に最高の味わいだ。
「じゃあ、俺が子会社作るから、お前が社長になれよ」
「イヤよ」
「なんで、イヤなんだよ」
「朝五時に起きて七時には会社に来る親会社の社長がいる会社でこき使われたくないもん」
深田は同僚からワーカホリックと呼ばれて敬遠されていた。よりワーカホリックなマイケルも異常に勤勉勤労だが、こいつも異常に仕事が好きだ。そんなのに付き合わされたら身体が持たない。
「お前って、本当に性格悪いよね〜」
「不誠実な男にはね」
「俺はね、誠実さには欠けるけど、すごくいいオトコなんだよ」
「その実力はよく知ってる」
深田はデザートを食べ終えて、ハーブティーを飲んだ。彼狙いの女に掴み掛かられたり、イチャモン付けらたり、本当に散々だった。
「よし、じゃあこうしよう。お前の給料月100万円、勤務時間はお前に任せるがホールディングスの役員会議には必ず出席してくれ!」
「考えるよ」
本当は考える気も無かった。
人の下で働くのはしょうに合わない。
「絶対考えろよ」
彼はそう言うと気分が良くなったのか、キッチンに向かって歩き始めシェフとお喋りを始めた。自分もフレンチレストランを始めるから俺のところに来いよと英語で話している。
その時、白いクロスがかかったテーブルの上に置かれた彼のスマホが振動した。『電話鳴ってるよ』と知らせようと思うと、彼の携帯にエリの友達の名前が表示された。
「なるほど、そういう事か」
自分では直接手出しできないから、野心家の元彼にアプローチしたんだな。彼なら金で動くタイプだ。さすがエリちゃん、天晴れな策略家だが、そういう事をやると女性には確実に嫌われるぞ。
というか、乗る方も乗る方だ。
「さ、行くか」
深田の肩に、彼がポンと乗せた手を深田は振り払った。
「ご馳走さま!じゃあね」
そう言って深田はタクシーに飛び乗った。
私の心を傷付けるのは構わないが、私の会社に傷を付けるのは許さない。会社は株主の物だからだ。
次の日、深田はダイヤを持ってブランド買取店に行った。
「これ、すごいですね。本当に良いんですか?」
鑑定士がルーペでダイヤを値踏みしなかまら深田に聞いた。
「いいのよ。真実の愛はプライスレスだから」
愛は形がない。
愛は無から産まれて無に帰る。
何も残らなくて正解。
黒いスーツの男はチラリと深田を見て、深田は思わずまつ毛を伏せた。
残念なだけ。
マイケルが言ってた。
数々のハニートラップを仕掛けられても婚約者だけを大事にした果てに、中国スパイに協力した青幇に婚約者をナイフで傷付けられた。
「俺は誰とも関係を持ちたくない」
マイケルの孤独。
それって、このことか。
TO BE CONTINUED

第32回戦追記 マイケルに夢中

「ハッピークリスマス」
シリコンバレーにいるマイケルから電話があった。

「私はアンハッピーだけどね。マイケルは誰かと過ごすの?」
と深田は応える。

「俺に家族はいない」

「女はいないの?」

「お前な、髪も薄い、太った50代の俺に金が無ければ女が付いてくるはずないだろう」
マイケルは冷静に答えた。

「かしこっ。マイケル、さすがIQ200だね」
深田は心の底から感心した。

「冷静になれば、全てのイケてない男が理解できることだ。知能指数が低くても分かるはずだ」
マイケルは淡々と答えた。自己中心的な男だが、客観性は保っているらしい。

マイケルと会社を始めてから色んな男が寄ってくる。
ところが、最初は私を好き好き言っても、気が付けば男たちはマイケルに夢中だ。
もちろん、男たちはマイケルが好きなんじゃない。
マイケルの技術さえ盗めば金持ちになれるから無我夢中になるのだ。

彼の技術の前には愛もかすむ。

いや、金の前か。

それでは、男が女を愛せるようになるためには、いくら掴めば気が済むのだろうか。

第33回戦 年賀状

エリが消えて数カ月。
ゼロから再出発した会社は支持者たちに支えられて幸運にも持ち直し、展示会にも出店できるようになった。

念願の展示会出展は四年目にして叶った。

パシフィコ横浜にある展示会で小さなブースを構え、深田は新製品宣伝のビラ配りをしていた。
「え、これ、本当に無線なの?」

「はい!良かったらシステムをご覧ください」
最新の低遅延型動画伝送システムに対する引き合いは多かった。
高画質、高速伝送、安定出力、どれをとっても世界最高だ。
それを自分のようなお姉ちゃんが売っているとあって、業界でも話題になっていた。

『もっと早く展示会に出展できていたら・・・』
マイケルの技術に惚れ込んでいたのは、むしろエリだ。
エリはこの技術を広めたいと言って、展示会に出ては『自分達もいつかは』と言っていた。
今、ここに二人で一緒に立っていたら、エリは喜んで集客しただろう。

マイケルはエリの話をしなくなった。
自称メンタリストの深田の母が東京のオフィスに来たとき、
「未練がましい女、発揮やな。エリちゃんなんかに対して」
と言ったのをマイケルは覚えているのだ。

マイケルは深田に気遣って『エリ』と名の付くものを全てに違う名前に与えた。

弁護士のエリザベスを『おばさん』、キノコのエリンギを『長マッシュ』、取引先の別のエリを『モモちゃん』と勝手に名前を付けて呼ぶ始末になった。

『おばさん』と呼ばれたエリは怒り、『モモちゃん』と名付けられたエリは喜んでいる。

頭が良い奴は気遣いもひねくれているので、こちらの対応も面倒臭い。

「これ、すごいですね」

声を掛けられて現実に戻る。
スーツの男性が興味深そうに新製品を見ている。
「これ、全てチップ処理なので早いんです」
動画の処理は通常重たい。それを完全チップ処理にしているので高速化が図れるのだ。

「実は自動車メーカーがうちのお客さんなんですけど、受託の仕事とかやっていますか?できたらお願いしたいことがあって」
そう言って、彼はソフトウェア会社ソフト社(仮名)の吉田氏(仮名)が名刺を出した。

「是非、お願いします!」
ようし、顧客ゲットだ!

後日、ソフト会社の吉田氏がオフィスにやって来た。
カメラもディスプレイも基板も、デモ機は万全の態勢だ。スイッチオンするだけで、いつでもオッケー。

「人工知能の開発できますか」

「え?」
人工知能?そんなの製品リストにもなければ展示もしていない。
「車の自動制御に人工知能が欲しいんです」
深田はマイケルを振り返った。
人工知能開発なんて、うちの業務外だ。

「人工知能なら既にコアはあります」
深田は目が点になった。四年間一緒にやってて、人工知能が開発できるなんて初耳だったからだ。

「うちのエンジニアはミシガン大学で人工知能の研究をやっていました。Googleの検索エンジンを開発したCTOより、彼女のほうが成績は良かったんですよ。それに、元々巡航ミサイルの為に人工知能を開発したこともあるので、車なら相性がいいかもしれない」
マイケルは淡々と続けた。
しかし、どこまで行っても引き出しの多い奴だ。

「すみません、ただ、今期は開発費が少なくて1000万円くらいしかないんです」
通常、人工知能の開発は十億単位なので、桁が2つ足りない。
深田は、「ハァ?」と言いそうになったがマイケルは「いいよ」とアッサリ答えた。

「1000万円で?」

「1000万円でもいい。ただし、簡易版だけだ」
マイケルは応えた。

「そうですか!是非お願いします!」
ソフト社は喜び勇んでスキップして帰っていった。

「マイケル、どうするの?」

「なんだ?」

「人工知能」

「作れるぞ」

「作れるのは分かる!でも、エンジニアも足りないし、コーディングの人員どうするのよ!1000万円なんて安値で引き受けたら、外注費であっという間に赤字よ」
深田はキレた。ありものを売れば、コストを抑えられるけど一から開発となると金ばっかりかかって仕方がない。
今は、確実に黒字のプロジェクトしか取りたくないのだ。

「大丈夫だ。権利は渡さないし、ライセンス料も毎年貰う。プログラマーだけ確保すれば、何とかなる」

「そのプログラマーの調達で世界中が人材難なのよ!」
SNSの台頭で、殆どのプログラマーはFacebookやオシャレなシリコンバレーの会社に年収20万ドル以上で流れてしまっている。

「俺には案がある」
そう言ってマイケルは笑った。

次にソフト社に打ち合わせた時も感触は良かった。
「もう発注準備はしています。ただ、車メーカーさんの要望で納品は来年の2月20日でお願いしたいんです」

「2月20日!?」
いま既に、クリスマス前だ。2ヵ月で仕様固めからコーディングなんて無理過ぎる。

絶対に無理と深田が言いそうになったところ、「大丈夫」とマイケルは事もなげに答えた。
これまでのパターンで行くと、常人が不可能だと考える開発もマイケルが「大丈夫」と言った時は実現してきた。実績はあるけど、プログラマーが足りていないので不安で仕方がない。

「すみません、それより発注間に合うんですか?」
深田は事務処理の心配をした。
マイケルのことなので、やると言ったら裏の手を使うのだろうけど、問題は日本企業の体質だ。契約書やら信用チェックまで何カ月かかるか分からない。

「そこなんですよ、発注書が出るのが今だと早くて年末とか、下手したら1月過ぎるんですよね。それでも、やってもらえませんか?」

「ダメで・・」
「いいよ」
マイケルがアッサリ答えた。
「ギリギリでも発注書が来れば納品するよ」
そう続けた。
それを聞いてソフト社はまたルンルンになって帰っていった。

深田は頭を抱えた。発注書が来る前に仕事始めたらトラブルの元だ。
「マイケル、おかしいよ。これまで詐欺を働こうとしてきた会社と同じで発注書なしで仕事させようとしているんじゃない?」

「俺、人工知能の方が好きなんだよね」
マイケルの答えに、深田はお茶を吹き出した。
作り上げた世界最高の新製品にはもはや興味が無いようだ。

マイケルは天才過ぎてマイブームの移り変わりが激しい。
好きなものを作るだけで、あらゆる人が金を積んできたので自分が作りたい物以外に興味が無いのだ。

「ところでマイケル。人工知能なんて、いつの間に作ったの?」

「米軍の仕事している時だ。うちの製品には全て人工知能が入っている」

「ハア?」
知らなかった。

「お前、バカか?ソフトウェアをチップにしただけで処理が速くなるなんて伝説だ。俺はチップに人工知能を埋め込んで無駄な処理はさせていない。だから早いんだ」

「そういう事だったの?何それ、企業秘密?」

「当たり前すぎてお前に説明するのを忘れていた」

「言ってくれてたら、会社のホームページで大々的に宣伝したのに!このバカ!!」
マイケルは頭が良すぎて、たまに抜けているのだ。
人工知能なんて受託開発だけで数十億は取れるのだ。
そんなことを知らなかったなんて、と、深田は地団太を踏んだ。

「おい、待て。会社のウェブサイトに人工知能の事を載せてなかったのか?」

「載せるわけないでしょ。社長の私が知らないんだから」

「じゃあ、なんで彼らは来たんだ?」
マイケルの言葉でハッとなった。

言われてみればそうだ。
人工知能開発は、ウェブサイト開発とはエンジニアの知能レベルが1万倍違う。
人工知能開発に人間知能が必要だと言われている分野だ。
通常は実績のある会社にしか発注しない。

振り返るとマイケルは頷いていた。
「発注書が来るまでまとう。これも中国共産党の罠かもしれないからな」

「エリかも」

「エリは、俺が人工知能開発していたことを知らない。中共だけだ」
マイケルは応えた。

その日から、深田はソフト社からの発注を待った。
メールで催促し、電話で催促もした。
返事はいつも「お願いする為に発注準備をしていますので、先にプログラミングを始めておいてください」だった。

年の暮れになっても発注書は来ず、聞けば「今用意しているから、開発だけ始めておいてくれ」とだけ言われて、仕方なく12月31日に深田は実家へと帰った。

実家のダックスフントの太郎を抱っこして、年始は布団の上でゴロゴロしていた。
太郎は大人しいM男だ。
どんなに意地悪しても怒らない。

太郎の耳を引っ張って遊んでいると、
「また、エリちゃんか」
と母さんがポストを開けながら呟いた。

「え、何、母さん」
エリがどうしたのかと思って起き上がった。

「いや、あんたの旧会社の郵便物をこっちに転送してるけど、エリちゃん宛ての郵便がけっこう来るねんな」
年賀状をチェックすると数枚ほどエリの年賀状が混ざっている。

「あれ?」
ソフト社の吉田さんがエリ宛に年賀状を書いている。『今年も宜しくお願い申し上げます』ってどういうこと?

吉田さん、エリが失踪した数カ月後に知り合った人だぞ。

「なんだ、そういうことか」
深田は笑いがこみ上げてきた。
私を潰すためには、そこまでやるのか。

マイケルにそのことをメールで報告すると返信が来た。

「プレイヤーはエリだが糸を引いているのは間違いなく共産党だ。エリは人工知能の事を知らない。それに、上場しているソフト社がエリ個人の為には動かない。裏で巨額の金が動いている」

彼女は、消えたかのように見えて影のように付きまとうようになった。
私の周囲に現れる全ての人間を利用するのだろうか。

「母さん、私、また友達できるかな?」

「あんた、その前に結婚しーや!」
(´・ω`・)エッ?

TO BE CONTINUED

第33回戦追記 人工知能

うちの製品にはたいがい人工知能が組み込まれている。
主力製品のVatroni動画伝送システムにも必然的に入っている。
Vatroni動画伝送システムはエンコーダ+ネットワークエンジン+フォルトトレラント(自律回復機能)でできている。

エンコーダに組み込まれている人工知能は数百あるエンコードモードから最も圧縮率と画質のトレードオフのバランスが良いものを選択し、処理時間にバラつきが出ないように管理しながら並行処理に掛ける。

マイケルは世界で100人以下と言われているチップからスパコンを設計するエンジニアだし、その片腕のキャシーはミシガン大学で人工知能の研究をした。(彼女のクラスメイトは、Googleの検索エンジン設計を行なった)

そんな二人が率いるチームで設計するので一般的なソリューションとは全く違うものができるのだ。

でも、エンコーダに組み込まれているのはスマートプログラムレベルの人工知能だ。

本当の人工知能は入力されるデータのタイプがバラバラでも処理ができる。
かつ、データベースではなくデータベースが人工知能のフィードバックを受けて随時変化していくデータバンクと呼ばれるスタイルを取っている。

マイケルの人工知能はツリー構造の選択肢を最速で最適解にたどり着く設計になっている。(詳細は秘密らしい。聞いても分からんけど)。その最速で最適解にたどり着く計算方法は院の卒論で発表した時に米大手電話会社A社に「公開しないでくれ」と頼まれた。その後、AT&Tはマイケルの大学院のラボの教授に「この論文の内容を教えて欲しい」と聞かれたが、マイケルが面倒臭いと答えて担当教授は左遷。担当教授の嫁さんからマイケルに電話がかかってきて「このデビル!」と呼ばれたらしい。

マイケルは大人しいけど、嫌だと思ったら絶対に嫌なのだ。

マイケルが「良いよ」と思う時と、「やっぱり嫌だ」と言う時のメカニズムが今一つ不明だが、「仕事は気分が大事」と言っているだけあって臍が曲がるとテコでも動かない。

テコと言えば、そんな感じの名前の会社が、マイケルが台湾で上場させた会社の株主だが、その会社が倒産して10年経った今でもマイケルの開発は自分のものだと主張してマイケルの会社の元役員を台湾で訴訟した。

彼らの話は矛盾している。

もし、マイケルに技術が無くて、マイケルが詐欺師なら、何故、マイケルの発明を横取りしたいのだ?

もし、マイケルが彼らの物を盗んだなら、何故、マイケルが世界一で、貴方たちは世界一じゃないのか?

真実はそこにあると思うのだ。

第34回戦 孤独

色んな人と距離を置くようになった。
知り合いもどこで繋がっているか分からないと疑心暗鬼になった。
引きこもるようになって、何だか退屈だ。

たまには誰かと喋りたい。
日本語で喋りたい。
軽い会話を楽しみたくても、自分の英語力では冗談一つ言えないから楽しめないのだ。

昔は皆でパーティとかよくやったけど、とてもじゃないけどそんな気持ちになれない。

そうやって、部屋でゴロゴロしていると知人の佐藤(仮名)からLINEが入った。
佐藤君は、前に今井雅人さんのところで働いていたエンジニアだ。

「深田さん、最近、どうしているんですか?」

「暇で今から一人で飲みに行こうと思ってたところです」

「ご一緒していいですか?」

暫く考えた。
今井雅人さんと言えば、アルファアイティーシステムにサーバー管理を任せている。
私が学生時代に紹介してしまったからだ。

危険かもしれない。
でも、今井さんは今や国会議員だ。国会議員の部下になのにアルファアイティーシステムに加担するだろうか。
アルファアイティーシステムの話をこちらからしなければ済むだけの話か。

「いいよ」

そう言って、深田は行きつけの店で佐藤君と待ち合わせた。
たまには、日本語でお喋りするくらいいいだろう。

「深田さん、僕、最近儲かってしょうがなくて、虚しいんですよ」
佐藤君は唐突にそんなことを言い出した。

「何やってそんなに儲かっているの?」

「今井さんのところから独立して、アルファアイティーシステムのサーバー管理の仕事をしているんです。スマホで管理しているので、いつも充電しながらこうやって様子を見ているんですよ」
そう言いながら、彼はスマホをカウンターの上に置いた。

「え、アルファアイティーシステムと仕事してるの?」

「深田さん、アルファアイティーシステムと裁判やってるんですよね?大丈夫ですか?何があったんですか?」

「いや、真実はそれぞれだから、別にいいじゃん」
深田ははぐらかした。
なんとなく、嫌な展開だ。

「ところで、深田さん。いくら稼いでいるんですか?」

「え?何それ」

「僕はお金稼ぎ過ぎて虚しいんですよ。深田さん、いくら稼いでいるのかと思って」
なんだかよく分からない話だ。

深田は旧会社を閉鎖したところで、殆ど給料は取っていない。
それどころか、何年も会社にお金を貸す方なので、給料を貰っても仕方がないのだ。
「私、いくらも稼いでないよ。給料もらってないもん」

「え?」
彼の目は点になった。

「今、貧乏ですよ」

「じゃあ、何のために仕事してるんですか?」

「若い時にお金お金って思って生きてきたけど、なんか今はお金じゃない気がして」
女の気持ちはコロコロ変わる。
昔は、お金が無いと意味が無いと思っていたが、今はそうでもないのだ。

佐藤君は残念そうな顔をして、「ちょっと、すみません」とトイレに立った。

深田は、佐藤君側に置かれたおつまみに手を伸ばすとオリーブが滑って飛んで佐藤君のスマホに直撃した。

「やべ」
オリーブは油まみれなので、彼のスマホに油が付いてしまった。

ポータブル充電器に繋がれた彼のスマホを取り上げて、おしぼりで拭いた。
そして、よく見ると彼のスマホが赤く点滅して『録音中』となっていた。

「やっぱ、そういうことか」
アルファアイティーシステムはエリを使って裁判で勝てる証拠を捏造しようとしたけど、神奈川県警が動いてエリが逃げたのでエリを使えなくなった。だから、今度は今井雅人の部下をよこしたってことか。

佐藤君がトイレから戻ってくる姿が見えて、深田はスマホを元の位置に戻した。

「帰ろっか」

「え?もうですか?」

「うん、なんか疲れちゃったから」

会計を済ませて二人で外に出て、「それじゃあ」と言って、タクシーに乗った。

退屈しのぎに人に会うのは危険か。
いや、退屈になるのが危険だ。
退屈だから、誰かと喋りたいと思うのだ。

そろそろ習い事でも始めよう。
C言語なんて、どうだろう。
ソフトウェア・エンジニアを雇う金の無い今の自分にはちょうどいいんじゃないだろうか。

TO BE CONTINUED

【第35回戦】 公安警察

「一個、二個、三個・・・」
深田は倉庫から在庫の部品を取り出して、数を数えていた。決算の棚卸で数を確認しないといけない。在庫と言っても、清算中の旧会社の在庫だ。

「これが売れたら、まだ資金繰りが楽なんだけど・・・」

新会社にも資金を出しているだけじゃなく、旧会社の分も立替支払いをしているので、この部品がお金になったら一番いいんだけどなと深田は考えた。

「ん、ちょっと待てよ・・・」
そうだ、なんで売らなかったのだ。
忙し過ぎて余った部品を処分するのを忘れていた。

「え?在庫ですか?」
仕入れ元の商社の営業マンが声を上げる。
「そう、これ、処分したいから売って欲しいんです」

「わあ、その高価な部品、確かに売れそうですね!いいですけど、どうしましょう?」

「取りに来てもらってもいいですか?」

「もちろん、いいですよ」

という返事から間もなく商社の営業マンがやってきた。

「そういえば、社長。S社から電話があって、エリさんと一緒に飲もうって誘われているんですよ」

「え、そうなの?」
深田は目が丸くなった。S社と言えば、国の研究所で入札をした会社で、R社はその下請けだった。エリがいなくなって、S社は一度深田のオフィスを無断で荒らしていったが、警察に届けたのに丸ノ内警察は被害届の受理を拒んだことがあったのだ。

「社長、大丈夫ですか?」
営業マンの声で深田は我に返る。

「あ、いや。エリちゃん、親が来て衰弱しきっていて歩くことすらできないって言われたまま連絡が取れないんですけど・・・」
深田の言葉に営業マンは『しまった』という顔をして、「今度、我々も飲みに行きましょうよ!僕、銀座の店で行きたいとこあるんです!」と言って帰って行った。

もやもやした気持ちでその日は終わった。
「でも、まあ、これで問題が一つ片付いて良かった」
そう呟いて深田はソファにもたれかかった。彼女の事は忘れよう。今は、仕事の事だけ考えるのだ。

一般的に、在庫部品はマーケットに出すと一週間くらいで売れてしまうらしいから、さっと換金できれば資金繰りだって助かる。

ところが、それから一週間経っても一カ月経っても商社から連絡は無かった。

「まったく、いつになったら売れるのやら・・・」

そう思っている矢先にオフィスの電話が鳴る。
「はい、R社です」
深田が電話に出ると、部品メーカーだった。

「ふ、深田社長。大変です」
『大変』か、久しぶりに聞いた言葉だ。エリがいる時、毎日のように『大変です』の一言で一日が始まった。

「なんですか、大変って」

「S社がうちに来ました!!」

「ええ、S社が?」

エリと会っているS社がどうして部品メーカーに行くのだ。

「何があったの?」

「実は、伝票を付け替えて欲しいと・・・」

「どういう意味?」

「うちが御社に売った部品をS社のものだと伝票を切り直してほしいと言われました」

「ハァ?そんなこと、できるわけないでしょ?」

「うちもそう言いましたが、S社からは『R社社長の深田萌絵にR社の部品を盗まれた。製品番号はあるから、それを元に伝票を切り直してほしい。公安警察にも相談して許可を得ている』って言われたんです」

「S社には納品終わってて、部品盗むも何も無いんですけど・・・」
うちの会社の部品を、私が盗んで私の会社の倉庫に保管した罪で訴える奴も頭が悪いが、それを真に受ける警察も警察だ。
S社は暴力団と関係があると言われている会社で、社員は頭が悪いと評判の会社だがあまりにも酷い論理構成だし、それを聞く警察もどうかしている。

「というか、うちの部品、私が会社の倉庫に入れててなんかおかしいですかね?」

「そうですよね。うちもそう思って、経理と法務と相談したんですけど、伝票の付け替えは出来ないと回答しました。ところが、おかしなことに製品番号をすべて持っているんです」

「え?」
製品番号を持っているとすれば、こないだ部品を預けた商社だ。商社の営業マン、そういえばS社と飲みに行くと言っていた。

「公安警察も被害届を受理したって・・・」

「本当!?」

「そうなんです。S社はそう言ってました。僕はありえないと思ったんですよ。だって、御社がうちから買った部品を、どうやって御社が盗むんですか?僕は何かおかしいと思うんです」

「そんなことって、あり得る?事件番号分かります?」

「そこまでは聞いてませんが、『嘘だと思うなら公安警察のJ氏に聞いてみろ』と言われました」
深田は絶句した。

公安警察のJ氏。
ファーウェイ事件が始まって以来、一年間深田は公安警察に通い、情報を提供してきた。その担当警部が、なんと私を容疑者としてファーウェイと組んだS社の被害届を受理したのだ。

「この国って・・・」
犯人は被害者になり、被害者が犯人に仕立て上げられる国になったのか。
そういえば、朝鮮総連の弁護士は元公安警察のトップだ。

相談する相手を間違えて、いつの間にか自分が犯人に仕立て上げられている。
いや、エリだ。公安警察にはエリと一緒に通っていた。

エリが失踪して、それまで何もしなかった公安警察がS社に事情聴取に行った。
エリが裏で情報操作していなければ、さすがに公安警察もS社の馬鹿馬鹿しい嘘を真に受けるはずがない。

あの商社のウェブサイトをクリックしてみた。
そこには、人民解放軍の衛星用半導体チップメーカーと提携したとのリンクが貼られていた。

TO BE CONTINUED

http://www.casilsemi.com/index.asp

【第36回戦】第36回戦 新法人への訴訟、旧法人への訴訟
2016-01-16 20:32:59NEW !
テーマ:事件サマリー

(2015年一月、二月頃の話)

新会社は立ち上げから、世界最速の無線動画伝送装置Vatroniが売れ始めた。

それまでのVATRONIは、高速動画圧縮機能しかなかったのだが、それにフルHDを高速で伝送する機能が加わったのだ。

本人が自覚してないのが厄介なのだが、マイケルが作るものはいちいち世界初とか世界一だ。

「え、VATRONIって世界一だったのか?俺は知らなかった。普通に作ったらこうなっただけだ」
と、マイケル自身はこんな調子だ。
本人は自分の知能がどれだけ世の中とかけ離れているのが自覚に乏しいので、マイケルの技術を横取りしたがる輩からマイケルを守るのに周囲は大変なのだ。

「フカダァ!大変!!」
台湾のマイケル元秘書のジュディから電話が入った。

「ジュディ、今度はどうしたの?」

「マイケルの台湾の会社が訴訟されたの!」

「え?清算中でしょ?」

「株主の東元電機の黄茂雄の差し金みたいです。新しい無線動画伝送装置VATRONIの権利を主張してます」

「ブー!!」

深田は飲みかけのお茶を吹いた。
マイケルの台湾の公開会社なんて、10年近く前に解散したのに当時の株主がまだ権利を主張するなんてあり得ない。

しかも、主張する権利は深田の会社の製品だなんて、エレクトロニクス業界王道の「スートゥオウン(訴訟で潰して手に入れろ)」の王道を来ている。どれだけ貪欲なのだ。

ピンポーン

オフィスのチャイムが鳴る。
郵便局員だ。

なんだろうと茶色の封筒を受け取る。
訴状だ。

「また、裁判か!?」

アルファアイティーシステムからの新法人に対する訴状だった。訴状の内容は、前回と殆ど同じでその上添付の証拠は殆ど無かった。

「マイケル、アルファアイティーシステムから新会社への訴訟が始まった!」

「なんだと?内容はなんだ?」

「詐欺だと」

「バカ言え。新会社はアルファアイティーシステムと何の契約も無いし、架空請求の上に四重請求だろ」

アルファアイティーシステムは、旧R社、深田個人、マイケル個人にそれぞれ一千万円、さらに新会社にまで一千万円を請求し、合計四千万円請求してきたのだ。

深田は期日を確認すると、なんと、旧R社の期日と同一日時同一法廷同一裁判官遠田真嗣だ。

「そんな、バカな。新たに裁判を起こすと、東京地裁の50近くある部署にいる数百人の裁判官からランダムに裁判官が選定されるはずなのにそんな事あるか?」

訴状が提出された日は土曜日、37部に配転されたはずの訴状は翌月曜朝には遠田裁判官のいる48部に回されている。

「東京地方裁判所内に絶対に中国工作員がいる」

確信した。

国賠訴訟の内容も部署に訴状が届く前に中国共産党に届いていた。そして、今度は受付素通りで梶原利之弁護士の思い通りになる裁判官のところに訴状が届いている。

深田は、この国の闇に不気味さを覚える。

自分たち、一般の日本人ができないことを何故中国人や在日の一派には可能なのだ。

東京地方裁判所、その闇の深さは絶望の裁判所で語られる以上の深さを予感させた。

TO BE CONTINUED


【第36回戦追記】
36回戦の話は裁判所の手順が少しわかりにくかったと思うので、追記します。

併合上申は、新しい訴訟を古い訴訟に併合するという要求を書いた上申書のことで、新しい訴訟をする時に古い裁判と一緒にやった方が効率がいいので「併合して一緒にやりませんか?」と裁判官にお願いをするシステムです。

これは、両方の裁判官の同意が必要な手続きになります。

このアルファアイティーシステムによる深田新会社への訴訟の旧会社への訴訟との併合上申にはかなり不自然な点がありました。

1.訴状提出日が土曜日であること。

2.最初の担当部署が37部であったこと。

3.なのに、37部で取り扱った裁判官と書記官の名前が存在しないこと。問い合わせても「いない」としか言われなかったということ。

4.訴状提出が土曜日で翌月曜日には37部を素通りして48部に到着して同一期日同一法廷で口頭弁論が開かれることになったということ

5.48部にクレームすると、「併合されていない」と藤井書記官からの回答が来たこと

6.併合されていないなら、何故、37部素通りして48部にこの裁判が移動しているのかというふざけた話が残っているということ

7.梶原利之の上申書には「48部での訴訟における進行についても、新しい訴訟が提起されたら48部に口頭弁論を併合することが予定されている」と裏で遠田真嗣裁判官と話を付けていることを自ら露呈している。

下記、証拠画像です。


【第37回戦】忍び寄る鴻海テリー・ゴウ①
(2014年9月頃)
「リアルタイム3Dチップを作ろうと思う」
マイケルが唐突に言い出した。

「ハァ?」
深田は面食らった。こないだ作ったばかりのVatroni低遅延型動画伝送システムが出来上がったところで、まだ販売プロモーションにもロクに入っていない。

「ちょっと待ってよ。まだ無線動画伝送システム売って、回収しないといけないんです」

「新製品が無いと売れないだろう。というか、もう殆どできた」
マイケルは事もなげに答えるので深田はずっこけた。
実は、この世にリアルタイム3D合成ソリューションは存在しない。3D映画は右目と左目の映像を撮るために二つのカメラで撮影して、奥行き感を表現するのにCG屋がリタッチしているので異常に時間が掛かるし、コストも半端ない。ハリウッドでは3D映画製作の予算に数十億円かけることもザラだ。

「いつの間に作ってたのよ?」

「え?米大手半導体企業がリアルタイム3Dモデリングチップを一緒に作ろうって頼んできたので作っていたけど、フカダが忙しそうだから、言うのを忘れていただけだ」

「で、どこまでできたの?」

「カメラを複数台繋いで、システムに通すと3Dモデリングが出てくる」

「は、実写?」

「そうだ。リアルタイム実写3Dだ」

「そんなことできるの?」

「人間の目と同じだ。視差から奥行きを計算するだけだろ?それを高速でやればいいだけの話じゃないか」
今にも『地球人は知能が低いからなぁ』と言った雰囲気で宇宙人マイケルは淡々と答える。今の世の中、3Dモデリングの計算には何分もかかるのが普通だそれがリアルタイムなんてやばすぎる。

「そんなチップ作っちゃったら、またスパイが押し寄せてくるから気を付けてよ!」
深田はマイケルに抗議した。
マイケルと出会ってから大迷惑だ。
こいつは米軍の音速機用遠隔操作システムを作って以来、中国人民解放軍、国安諜報員、台湾暴力団青幇、その配下のフロント企業、日本からは在日朝鮮系のフロント企業やらが波のように押し寄せてきている。

「だから米大手と作ったんだよ。何かあったら、すぐに俺の代わりに訴訟してくれるだろう。それに、フカダはインテリヤクザが来たって、法廷でヤクザ弁護士が出てきたって怒鳴って追い返すような鬼子じゃないか」
マイケルは応える。

「なんだとぉ!!」
深田は額に青筋が立った。インテリヤクザとの怒鳴り合いの戦いや、柴田睦夫共産党議員お抱え弁護士梶原利之のチンピラぶりに深田がどれだけストレスを感じてきたかと思い返すと怒りでプルプルしてきた。

「怒るな、鬼子」
最近、周囲の中国人が私を鬼子と呼ぶようになったと思ったら、どうやらマイケルが言いふらしているようだ。

ピンポーン。
オフィスのインターホンが鳴る。
「こんにちは!ディスプレイ開発のダイちゃんです」

元パイオニアのディスプレイエンジニアのダイちゃんだ。

「マイケルさんに呼ばれてきました」

「え、何の件ですか?」

「映像が浮かび上がる3Dディスプレイの開発で伺いましたが」
ダイちゃんの言葉に深田は噴き出した。
そんな話聞いたことも無い。

「マイケル!まだ3Dチップも出来上がってないのに、3Dディスプレイ作る気なの?いい加減にしてよ。会社がパンクする!」
深田はキッとマイケルを睨み付ける。これ以上開発費ばっかりかけられたら、開発費を回収するどころの騒ぎじゃない。

「大丈夫だ。デコーダもあるし、あとは光学シミュレーションとマルチ光線ピクセルの開発だけで終わる」

「絶対にそれだけで終わらないし、そんな開発にかけるお金は無い!」
開発は素晴らしい要素技術があっても、部品の組み合わせや信号同期等のつまらないところで意外と時間が掛かる。時間が掛かればそれだけ経費が飛んでいくのだ。

「深田さん。お金なら、機構と一緒に助成金を取ればいいんですよ」
ダイちゃんはニコニコしながら答えた。

「そんなこと、できるの?」

「はい。東京都の技術開発センター(仮名)に行けばいいのです」
ダイちゃんの言葉で、三人はさっそくセンターのあるお台場に向かった。

続く

第38回戦 忍び寄る鴻海テリー・ゴウ②

「そんな事ができるんですか!?」
都立技術開発センター(仮名)の光学エンジニアの横田君は声を上げた。
米半導体大手に頼まれて作り始めたリアルタイム3D合成チップのめどが付いたので、現実の空間と類似の光線を再生して映像が浮き上がって見える光線再生方式のディスプレイの研究を一緒にしようという提案をしたのだ。

「その名もパシウム・ディスプレイだ」
マイケルは嬉しそうに答えた。いつの間にか商標まで考えているらしい。光のパスを再生するのでパシウムか。

「光線再生方式のディスプレイ、僕もいつかは作れると思っていたんです。前の会社は、全然冒険させてくれないから、研究がやりたくて僕はここに移って来たんですよ」
横田君は瞳をキラキラさせた。
夢を捨ててないエンジニアは素敵だ。

横田君はカチャカチャと光学シミュレータを叩き、マイケルの理論が可能か銅貨を確認した。
「できる。理論上はできる」
横田君はパソコンに向かって頷いた。

「理論上できても、そこからが難しいんです」
パイオニアで3Dディスプレイを作ってきたダイちゃんが釘を刺した。
ハードウェア作りはソフトウェア作り以上に難しい。というか、細かいハードルが多い。物理的な世界が関わってくるので、つまらない話だがチップ設計に成功しても電流や抵抗、歩留まりなどでコケることなんてザラだ。

特に光は、電波と同様で一筋縄ではいかない。光は曲がる、散乱する、屈折率は色によって異なる、など現実世界でテストする時とシミュレーション上でテストするのでは天と地ほどの差が発生する。

「焦点はピクセルをいかに作るか」
マイケルは呟く。

「材料に何を選択するか、材料の開発も必要になるでしょう」
ダイちゃんがマイケルに続く。

「今から材料なんて現実的ではない。ありものでラフな実験を行なってからブラッシュアップをするのはいかがでしょうか」
横田君が提案をした。

「でも、こんな巨大プロジェクト、どこから手を付けましょう?」

「まずは、複数の光線を発生させられるピクセルの研究開発から始めよう」

「そうしましょう。では、助成金申請には技術評価が必要なので、僕も資料作成をお手伝いします」
横田君は大はしゃぎだった。
それはそうだ。研究が好きな人なら、できそうでできなかった未知の分野に踏み出してみたいという願いを持っている。挑戦したい。でも、自分ではカバーできない技術がある。だから、エンジニア同志でコラボレーションするのが理想だが、組むエンジニアが自分の理想のソリューションを持っているとは限らない。でも、チップで映像の高速処理ができるなら、可能性は低くは無い。

技術評価の日がやって来た。
審査員に技術説明を行ない、反応はかなり良かった。

待合室に戻ると横田君が駈け込んで来た。

「深田さん、技術点において横田・R社チームがぶっちぎりナンバーワンです!」

「ハイ・ファイブ!!」
深田、横田、マイケル、ダイちゃんは手を上げてバチーンとタッチをした。
ディスプレイを作るのでなく、光線再生型ピクセルの開発にテーマを絞ったのが良かったのだ。

お台場からの帰り道、全員が興奮を隠しきれない様子だった。
リアルタイム3Dを開発してきたマイケルに浮かび上がる3Dディスプレイの研究を続けてきたダイちゃん、皆の思い描いていた夢の研究に一歩近づいたのだ。

数日後、横田君から「深田さん。後でお電話宜しいですか?助成金事業の件なんですけど」とメールがあった。
深田は胸騒ぎがして、すぐに横田君に電話を掛けた。

「どうしたの?」

「実は、小林英里さんが・・・」

「エリちゃん?元副社長の?」

「その、小林英里さんがR社いなくなったので契約は出来ないと言われました」

「どういうことなの?」

「パシウム・ディスプレイの権利を小林英里さんが主張しているから、権利争いに巻き込まれたくないのでうちは関わりたくないそうなんです。だから、本当にごめんなさい」

さっきまで明るかった視界が、急に真っ暗になったような気がした。
エリちゃん。あんなに何年も仲良くやって来たのに、いなくなってもとことん妨害するのか。

パシウム・ディスプレイ。
始まってすらいない製品の、権利の取り合いが始まった。

TO BE COTINUED


第39回戦 忍び寄る鴻海テリー・ゴウ③
(2014年9月頃)

「フカダ…。今日は裁判なの。弁護士を雇うお金も無いから、心細いわ」
台湾から、電話がかかって来た。マイケルの台湾公開企業アトム・テクノロジーの秘書ジュディ、現在は清算人だ。
元株主の黄氏は、納税義務の無い清算会社アトムを訴えた。つまり、なくなった会社が税金を払っていなかったと主張して損害賠償請求を行ない、マイケルの知的財産権は全て株主にあると主張しているのだ。

「清算結了後の納税義務を怠った件でしょ?会社はもう無いのに、負けるわけないよ。頑張って」

「フカダは台湾の事、分かっていない。台湾は青幇が国会も警察も司法も全てコントロールしているのよ」

「でも、さすがに存在しない会社の納税義務を議論するとか、ちょっと難しいんじゃないかな。淡々と事実を応えれば大丈夫だよ」
深田はジュディを諭して電話を切った。少し、落ち着いてくれたらいいけど。
自分も最初は裁判が怖かった。でも、何も悪い事をしていないので事実を淡々と述べるだけでいいということが分かった。

マイケルが2005年にFBI被害者保護プログラムでアメリカへ亡命し、その後の公開会社アトムの清算手続きを行なったのはジュディだった。

「まったく、どいつもこいつも・・・」
中国共産党配下のスパイと組んだ青幇はしつこい。こないだの産業開発センターにも元副社長がパシウム・ディスプレイの権利を求めてきたところだ。

―  パシウム・ディスプレイ

まだ出来上がってもいない、マイケルが構想中のディスプレイを自分のものだなんて、どうにかしている。パシウム・ディスプレイのネーミングの時に、深田とマイケルが口論になったことがあったが、その時に仲裁に入ってくれたのは紛れもないエリちゃんだった。パシウムでは、日本人に発音がしにくいしイメージが湧かないから、情熱と掛け合わせて『パシオン』にしようと深田が提案したところから口論になったのだ。

「萌絵ちゃん、マイケルさんがパシウムと呼ぶには理由があるんですから、そうしてあげたらいいんじゃないですか?」
あの時もエリはそう言って深田の肩をポンと叩いた。

エリちゃん。なんでだ。

また涙が出そうになったが、グッと堪えた。
きっと、すぐにジュディから報告の電話が入るだろう。
感傷に浸っている場合では無い。
何が起こってもいつでも冷静でいなければ、頼りにしてもらえる人間にはなれないのだ。

ルルル。
オフィスの電話が鳴った。

「フカダ、大変よ」
ジュディだ。

「今度は何?」

「黄氏がパシウム・ディスプレイの権利を主張してきた」

「何?マイケルの3Dディスプレイの権利を請求してきたの?」

「違う、300万ドルが払えないなら、ヴァトロニと『パシウム・ディスプレイの権利』を株主に譲渡せよと名指しで主張してきたの」

受話器を持つ手が震えた。
パシウム・ディスプレイなんて商標を知っているのは、10人もいない。産業開発センターでは「光線再生方式のディスプレイ」として提案したので、知っているのは取引先一社と横田君、ダイちゃん、マイケルと私くらいだ。

そして、エリちゃん。

「元株主はディスプレイ開発していないでしょ?関係ないじゃない」

「事情が変わったの、フカダ。そこの社員の話によると、最近、ディスプレイ工場を買った台湾企業が元株主の会社に出資したらしいの」

ディスプレイ工場を買った台湾企業?

いったい、それってどこの会社だ?

TO BE CONTINUED



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